インタビュー:Jパワーへの株主提案、プロキシ・ファイトも考慮に=TCIアジア代表
[東京 19日 ロイター] ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)のアジア代表、ジョン・ホー氏は、ロイターとのインタビューで、電源開発(Jパワー)(9513.T: 株価, ニュース, レポート)に対し、配当の引き上げや持ち合い株の売却を含む株主提案を提出したことについて、6月の株主総会に向けて、委任状争奪戦(プロキシ・ファイト)に持ち込む展開も考慮に入れていることを明らかにした。
TCIは、株主提案が会社側に拒否されれば、中垣喜彦社長の再任に反対票を投じる方針を表明している。ホー氏は、Jパワーにコーポレートガバナンス(企業統治)が欠如していることを訴えて、他の株主の賛同を求めていく考えを示した。
TCIはJパワー株を9.9%保有する筆頭株主。保有比率を20%まで高める計画は、政府が中止勧告した。ホー氏は「こんなに早く結論が出るとは思いもしなかった。困惑している」としたが、ロンドンのTCI本社とともに勧告の内容を精査しており、次の行動は、日本の法律上の選択肢を確認して判断していく考えを示した。
今後の対応として、行政不服審査法に基づいて財務相と経済産業相に異議を申し立てたり、行政訴訟に踏み切る選択もある。ただ、ホー氏は「われわれの行動は常に早いが、まだ決まっていない。中止勧告にどういう意味があるのか判断している過程だ」と述べるにとどめた。一方で、Jパワー以外の銘柄への投資については「資金があるといっても、すぐに他の株に振り向けるようなものではない」と述べて否定した。
インタビューの詳細は以下のとおり。
――Jパワーの買い増し計画に政府が中止を勧告したが、どう受け止めるか。
「あまりに早く結論が出たので驚いている。外為審が開かれたのはたった2回で、私の出席は1回で発言は60分。政府側はたっぷり時間をかけて委員に説明をしていたのだろう。11日の1回目の外為審に出席し、大間原子力発電所の懸念を解消するため、週明け14日に議決権信託と原発の切り離しの新提案をした。これから建設的な話し合いが出来るかと思ったが、翌15日にすぐに審議会の結論が出され、16日に中止勧告されてしまった。全体のプロセスとして非常に困惑している」
――政府は、投資計画の中止勧告の理由として、原発の運営への悪影響と送電線の維持・補修費用の削減に「おそれ」を示した。
「審査の過程では、原発と送電線について、われわれがどのような方法で脅かすのか、具体的な懸念の実例を出してくれるなら、その疑問を解消すると説明してきたが、政府からシナリオや具体例は一切出されなかった。投資ファンドの立場からすると、原発や送電線を脅かしても得なことはない。それをするとビジネスの安定性を損なって株価が下がる。政府は、それをやらないことを証明しろというが、そもそもそのような動機はない。もし投資ファンドがいけないと言うなら、日本の投資家でも危害を加える可能性があるということだろうか」
――JパワーにROE(株主資本利益率)10%・ROA(総資産利益率)4%を要求している。政府は、リターンの資金ねん出で、原発の投資削減や送電線の維持・補修費が削られることをおそれた。
「原発の投資削減など一言も言っていない。増配させるために送電線の維持・補修費が損なわれるという議論があったが、そもそも配当は利益の中からねん出されるので、維持・補修費とは別もの。電気事業法で規制されている設備の維持・補修費のコストを差し引いたものが利益だ。利益の権利は株主が持っているが、維持・補修費には介入できないし、そもそもTCIが維持費を削減させる理由なんかない。それをしたら会社の価値が落ちて損をするではないか。議論があまりに飛躍している」
――TCIが「時として投資先企業に積極的な行動をとる」として、過去の投資行動も拒否の理由にあげられた。
「あくまで一株主でしかないので、われわれのアイデアを強制することは出来ない。強制するためには他の株主の賛同を得ないと実現しない。どこの国で投資しても同じだが、その法律の規制の中で、われわれが与えられた権利を行使して適正に活動してきている。政府側の説明では、われわれがどういうことをしたのが悪かったのか、われわれが今していることのどこが悪いのか、はっきりと理解できなかった」
――中止勧告は受け入れることはできないか。25日までに受け入れなければ、中止命令となるが、今後の対応は。
「勧告がどういうことを意味しているのか、まだ分析している過程。説明を丁寧に読んで、どういう法的基盤で次の行動ができるのかを十分に精査して判断する」
――行政不服審査法で異議を申し立てたり、行政訴訟を起こす方法もあるが。
「勧告を受け入れれば終わりだが、受け入れない場合にはどういうプロセスがあるのか良く分からないので勉強しなければ。しかし1週間前にこんなに早く結論が出るとは思わず、このような展開になっているとは想像もしていなかった。これからどうなるのかは分からないのが正直なところだ」
「ロンドンの本社も一緒に今回の勧告を分析している。われわれの動きは速いほうだが、そこまで(すぐに次の展開を出すほど)速くない」
――Jパワーの追加投資に予定していた資金で、別の日本株を買う考えはあるか。
「この資金があるからといって、すぐに他の株に置き換えるわけではない。そう簡単に、予算が余ったから他の株に使うという考えではない」
――Jパワーへの株主提案で、会社側の年間配当予想の60円に対し、120円の議案を提出するが、合理的か。
「会社側予想の60円で配当資金は100億円。120円にすると200億円で100億円の上乗せだ。経営陣は毎年2000億円の投資計画を出しているが、これに比べるとささいな金額。お金がないなら海外などに投資しなければいい。そもそも投資案件のリターンは不明瞭だ。そして、持ち合い株式に680億円もかけているなら配当に回せばいい」
――株主提案を会社が拒否したら、株主総会で社長の再選に反対するが、議決権行使はいつまでに判断するか。
「いつまでとは決めていないが、これまでの提案はすべて拒否されてひとつも受け入れられていないのは事実。その理由もあまり納得のいくものではなかった。国営企業ではない、民営化された上場企業のリーダーは、会社によいことをしなければ責任を問われる。他の役員にも(社長として)いい人材はいる。最終的に責任をとるのかどうか、今度の株主総会までに、中垣喜彦社長の決断に委ねたい」
――配当提案は120円と80円の2通りある。過半数の賛成を得るためには2通りの案は得策ではないとみられるが。
「経営陣は1つの配当案しか持ってこない。われわれが2つ出して全部で3つの案。それぞれの株主が一番適正だと思うものを選べばいい。ひとつひとつの提案をみて何が正しいかを判断して投票するべき。株主が、低い配当でもいいとか、業績が悪くてもいいと思っている社長とか、持ち合いをしてもいいという経営方針を選ぶのは、自分たちへの悪影響になると思う」
――社長再選に反対するなら、過半数獲得の見通しはあるか。
「社長が責任を果たさなければ、われわれの考えに基づいて議決権を行使するだけ。会社のROEとROAが下がっていて、そこに言い訳の余地はない。持ち合い株式も増えて収益は下がっているので責任を問われるべき。もし他の株主が同じように考えてくれるなら、同じように反対票を入れるだろう。あとは他の株主に任せたい」
「重要な点は、われわれには強制する力はないということ。政府はそのようにみているようだが。あくまで一株主としての提案だ。ただ、他の株主が賛同するなら、何か大きなことが成し遂げられるかもしれないということだ」
――昨年の株主総会では、3万6000人の株主に手紙を送って増配提案への投票を呼びかけたが、今年の対応は。
「今年の基本的な考え方は経営陣が責任を問われるべきということ。コーポレートガバナンスが欠如していることは悪いことで、これを他の株主に話し続けていく。理解してもらうためには何でもやるつもりでいる」
――議決権の委任状の勧誘をして、プロキシ・ファイトに持ち込む考えは。
「もちろんまだ決めていないが、考慮には入れている」
――今年の株主総会で、株主提案がことごとく否決されたらどうするか。
「日本では変化の兆しはある。この提案に根拠があってなんら間違いはないとはっきりしているので、他の株主のサポートは十分に期待している」
*このインタビューは18日夕に行いました。
(ロイター日本語ニュース 村井 令二記者;編集 石田仁志)
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