節約背景の内食化や原料安、食品株に追い風・人気化は為替動向カギ
[東京 20日 ロイター] 消費者の節約志向を反映した内食化や原料価格低下などが、食品株の追い風となっている。2010年3月期の企業業績見通しで厳しい計画の発表が相次ぐ中、食品会社は営業増益を予想する企業が目立つ。
ただ、相場のメーンシナリオが年度後半の回復織り込みとなっている状況下で、ディフェンシブの色彩が強い食品株は物色面での分が悪い。人気化するのは円高進行で景気回復に不透明感が生じる場面との指摘も出るなど、為替動向がカギになりそうだ。
新光総合研究所がまとめた09年3月期本決算集計によると、東証1部に上場している食品業44社の10年3月期経常利益見通しは前年比6.9%減となった。減益予想ながら、製造業全体が12.8%減である点をを考慮すれば、健闘していると言える。
中でも大手に好調となっており、主力企業の営業利益予想は、味の素(2802.T: 株価, ニュース, レポート)が前年比2.9%増の420億円、ニチレイ(2871.T: 株価, ニュース, レポート)が同9.6%増の166億円、日本ハム(2282.T: 株価, ニュース, レポート)が同12.1%増の240億円、日清オイリオグループ(2602.T: 株価, ニュース, レポート)が同48.7%増の123億円、明治ホールディングス(2269.T: 株価, ニュース, レポート)が合併前単純合算費比0.7%増の250億円と増益が目立つ。減益見通しの企業でも、日清食品ホールディングス(2897.T: 株価, ニュース, レポート)が前年比2.3%減の230億円、日清製粉グループ本社(2002.T: 株価, ニュース, レポート)が同6.7%減の203億円と小幅にとどまっている。
これまで景気悪化に対する抵抗力が強いディフェンシブ銘柄として注目されたグループだが、公表された実態はそうした評価を裏付ける内容となった。
増益企業が好調の要因として第1に挙げていたのが、食生活における内食傾向。景気悪化を背景に消費者が、節約を意識して外食を控えるようになったことから、調理用食品が伸びている。企業関係者の間では「家庭用製品は利益率が高いため、商品構成の改善によって営業増益が確保できる」(雪印乳業2262.Tの久保清之専務)などの声が出ていた。
ギョーザ問題以降、落ち込んだ冷凍食品市場についても「家庭用の主用途は、弁当やおやつが多く、業務用に関しては家庭の中食需要があることなどから(収益に)影響はない」(ニチレイ(2871.T: 株価, ニュース, レポート)の中村執行役員)という。
さらに原料価格が昨年に比べて下落した点も見逃せない。これまで多くの食品会社は、原料価格の上昇を製品価格の値上げで対応してきたが、値上げが原料高に追いつかずコスト増を吸収できないケースが目立っていた。それがここにきてその構図が逆転しており「市況が高い時点で購入した原料在庫が一巡し、ようやく原料安メリットが享受できるようになった」(準大手証券食品担当アナリスト)との見方が出ている。足元の商品市況には反転の気配が感じされるものの、それは円高によって相殺される状況だ。
チョコレートを生産する明治ホールディングス(2269.T: 株価, ニュース, レポート)では、原料となるココア豆が上昇に転じるものの、ポンド安/円高で原料高に伴うマイナスをカバーできるという。
もっとも、原料価格の下落は、流通大手が低価格戦略にシフトしている中で、商品を納入する食品メーカーへの値下げ圧力につながる懸念が生じるなど、マイマスの側面もある。これについて、味の素(2802.T: 株価, ニュース, レポート)の紅松喬取締役は「良い機会ととらえて、今までになかったような使い勝手の良い商品を出していきたい」と述べた。
4月から輸入小麦の政府売り渡し価格が平均で14.8%引き下げられ、インスタントラーメンの値下げ圧力が高まっているが、日清食品ホールディングス(2897.T: 株価, ニュース, レポート)では「ブランドロイヤリティのある商品群についての値下げは考えておらず、(値下げの要望には)低価格帯の商品で対応する」(同社の中川晋専務)としている。
10月にも政府価格の改定が想定される点について「小麦市況は3月まで下落していたが、4月以降は上昇に転じており、10月の価格はどうなるか現時点では見通しがつかないため、10月分について収益計画に織り込んでいない」(日清製粉グループ本社(2002.T: 株価, ニュース, レポート)の山崎増郎取締役)といった声もあった。
新型インフルエンザが食品会社に及ぼす影響ては、当初、発生源とされる豚を原料とした食材にマイナス──といった見方があったが、直近では外出自粛に伴う食品備蓄の需要増加に関心が集まっている。これに関して「保存食品であるため食糧備蓄としての要請はきているが、具体的な話は決まっていない」(日清食品の中川専務)というコメントもあった。
他方、食品株の株価パフォーマンスをみると、実態面とは異なり芳しいものではない。TOPIXが年初からこれまで約3%の上昇となっているのに対し、業種別株価指数で食品業は約12%の下落となっている。市場関係者によると「現在の相場は先行きの景気回復期待を材料にしている。いかに業績見通しが堅調だとしても、ディフェンシブ色の強い食品株は、景気の急回復により高い利益変化率が見込める景気敏感株に比べて見劣りするため、人気になりにくい」(大手生保系投信運用担当者)という。
SMBCフレンド証券・シニアストラテジストの松野利彦氏は、食品株の出番について「年度後半の業績回復期待で輸出関連株を買っているが、それらは円高になるとトーンダウンする可能性もある。円高メリットが期待される食品など内需株が人気化するか否かは、為替相場の動向次第だろう」と語っていた。
(ロイター日本語ニュース 水野 文也記者 取材協力:久保 信博記者 編集 田巻 一彦)
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