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コラム:5月の電気・ガス値上げ、政府・日銀の物価見通し占う試金石に
2017年3月31日 / 10:48 / 6ヶ月前

コラム:5月の電気・ガス値上げ、政府・日銀の物価見通し占う試金石に

 3月31日、今年の日本の物価は上がるのか──。この「テーマ」の結果を左右する1つの要素として、5月の電気、ガス料金の値上げがある。写真は都内で昨年9月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 31日 ロイター] - 今年の日本の物価は上がるのか──。この「テーマ」の結果を左右する1つの要素として、5月の電気、ガス料金の値上げがある。素直に考えれば、消費者物価指数(CPI)を押し上げるが、市場の弱気派からは「光熱費」の上昇が他の項目の消費を抑え、CPI上昇の力を弱めるとの予想が出ている。年後半の物価上昇加速を予想する政府・日銀にとっても、その予測力の「真価」が問われる時期が近付いている。

<尻上がりの物価上昇予測する政府・日銀>

31日に発表された2月全国のコアCPI(除く生鮮)は、1月の前年比プラス0.1%から同0.2%へとプラス幅が拡大した。

政府・日銀は、今年後半にかけて前年の原油安効果や円高の物価押し下げ効果が剥落、景気が緩やかに回復する中で、物価も「尻上がり」に上昇幅を高めると予想する。

実際、4月の生産予測値は前月比プラス8.3%と大きく伸びているが、これは世界的な景気回復の動きを反映し、輸出を中心に生産を押し上げる構図ができつつある証拠ともいえる。

この基調が継続すれば、実際の成長率と潜在成長率のプラスのギャップが大きくなり、今年後半にコアCPI上昇率が1%に向けて大きくなる可能性が高まる。

<民間に根強い物価腰折れの懸念>

ただ、一部のエコノミストやストラテジストの中には、主に2つの理由で上昇基調が途中で「頓挫」すると予想する。

1つ目の理由は、ヤマトHD(9064.T)の値上げなどの影響が波及し、最終消費財が値上がりした後、需要が落ち込んで値下げに追い込まれるメーカーが続出するとの指摘だ。

今年の春闘では、4年連続のベースアップが実現したものの、総収入ベースの賃上げ率が今のところ昨年を下回っていることも、購買力の制約要因として意識されている。

2つ目に指摘されているのは、5月の電気、ガス料金の値上げ。電気料金は標準家庭で月額100円超の値上げになる。

素直に考えればCPIの押し上げ要因になるが、一部の市場参加者からは、生鮮野菜が値上がりした際に他の分野の消費が抑制されたように、「光熱費」の出費増が意識され、その他の消費項目が伸び悩むとの予想だ。

<値上げ時に台頭する生活防衛的な消費>

このような一部商品・サービスの値上げを他の分野の消費節約で「帳尻合わせ」する思考方法は、物価上昇と給与の上昇がセットで実現した経験のない世代が増えるにつれ、影響力を増している可能性がある。

振り返ってみれば、日経平均が急落し、当時の宮沢喜一首相が長野県軽井沢の別荘から東京に急きょ戻り、経済対策の取りまとめの号令をかけた1992年夏が、バブル崩壊の始まりだった。

それをきっかけに物価と給与がともに上昇し、年収ベースが年々上昇するというパターンは戻ってきていない。

その結果、一部の物価が上がれば、別の支出を減らすという「生活防衛的」な消費パターンがすっかり定着してしまった。

<日銀はインフレ期待の上昇を「期待」>

日銀の黒田東彦総裁は今月24日のロイターニュースメーカーの講演の中で、日本の場合、インフレ期待がなかなか上がらない傾向があると指摘。その一方で、足元の物価水準に影響されやすい面もあるとし、現行の金融緩和策を継続することで、物価が上がり出せば、インフレ期待も上がり、そのことが経済の前向きの循環メカニズム発動につながるとの見解を表明した。

インフレ期待の上昇という日銀流の表現は、言い換えれば、一部の商品・サービスが上がり出した時に、生活防衛的に他の支出を抑制せず、物価の上昇が企業の売上増に結び付き、さらに翌年の給与増につながる姿を期待しているといえる。

政府も日銀と同様の見方を維持しており、世界経済の基調的な拡大という「追い風」もあり、今年後半に向けた国内景気の堅調な拡大に自信を持っている。このため直ちに大型の追加景気対策を検討するという状況ではなく、しばらく景気の強さを見ていく方針のようだ。

ただ、一部の民間弱気派の見通しに近いトレンドになれば、年末に向けて自ずと景気の足取りも失速傾向を強めているに違いない。

政府・日銀の思惑通りに年後半の物価上昇が目立つ展開なのか、それとも再失速に陥るのか。その答えは明日から始まる4─6月期が終わるころに一定の結果が出ている可能性が高い。

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