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物価に強気なFRB「日銀に似てきた」の声、市場は資産圧縮を警戒
2017年6月15日 / 09:35 / 4ヶ月前

物価に強気なFRB「日銀に似てきた」の声、市場は資産圧縮を警戒

 6月15日、今回の米FOMCは予想外にタカ派的で、年内の資産圧縮開始を示唆。市場予想とかい離した強気な物価見通しを示したことに対し、「日銀に似てきた」との声も出ている。会見するイエレンFRB議長、14日撮影(2017年 ロイター/Joshua Roberts)

[東京 15日 ロイター] - 今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、予想外にタカ派的だった。最近の物価指標が弱いのは一時的現象だとして、年内の資産圧縮開始を示唆。市場予想とかい離した強気な物価見通しを示したことに対し、「日銀に似てきた」との声も出ている。

資産圧縮は緩やかなペースで実施される予定だが、今の流動性相場にどう影響を与えるか予断を許さない。

<CPI見通し、民間とかい離>  

「物価予想に願望が入っている。日銀に似てきたな」──。FOMC後、ある外資系証券のエコノミストは同僚とそうつぶやきあった。

FOMC声明では、米経済は引き続き力強さを増し、雇用の伸びも底堅いとし、足元のインフレ軟化は一時的とされた。イエレン議長も14日の会見で、携帯電話料金や処方せん薬の値下げといった特殊要因を指摘。バランスシート資産圧縮を年内に開始する方針が示された。

しかし、米国の消費者物価指数(CPI)は過去3カ月で前月比マイナスが2回。食品とエネルギーを除いたコアCPIも、5月は前年同月比1.7%上昇と2015年5月以来の低い伸びにとどまった。5月の米小売売上高も弱く、「インフレ鈍化は特殊要因だけではない可能性がある」と、シティグループ証券・チーフエコノミストの村嶋帰一氏は話す。

市場が予想する3年後のFF金利は1.6%半ば。これに対し、FOMCメンバーの予想は、2019年末で2.875%となっている。

T&Dアセットマネジメント・チーフエコノミスト、神谷尚志氏は「このギャップは将来のインフレ率見通しの差にある。再任されないことへの警戒なのか、慎重なはずのイエレン議長が、出口への道筋を早く付けようと、しゃにむに正常化に突っ走っている感じだ」との見方を示す。

<米株の調整に警戒>

2016年12月末の米連邦準備理事会(FRB)のバランスシートは、4兆4515億ドル。経済状態の違いから、金融危機前の07年末の規模である約8938億ドルではなく、2兆ドル規模に戻す可能性が大きいとみられている。

今回示された「圧縮プラン」は、当初100億ドルで開始。3カ月毎に100億ドル引き上げ、1年後に500億ドルにし、その後はペースを維持する。資産を2兆ドルに戻すには4年程度かかる計算だ。

FRBが資産の買い入れ額減少を開始した時と、当初はほぼ同じペースであり、市場では「テーパリング時も金利は上がらなかった。このペースをみて、金利上昇のイメージは持てない」(邦銀)との声が多い。実際、14日の10年米国債利回りUS10YT=RRは2.1%前半と13日よりも低下している。

ただ、史上最高値圏にある米株などは、過熱感も強い。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)が13日公表した月間ファンドマネジャー調査によると、株式は過大評価されているとの回答が過去最高となった。

クレディ・スイス証券・プライベート・バンキング本部CIOジャパン、松本聡一郎氏は「量的緩和策を背景にした過剰流動性によって、米株やドル建てハイイールド債など一部の資産が割高になっている」とし、調整に警戒すべきだと指摘する。

<上がらぬ米長期金利>

日銀は、市場予想とかい離した強気な物価予想を崩さないが、FRBと違い「出口戦略」の公表には慎重だ。きょうから開かれている金融政策決定会合でも、政策維持が市場の大勢見通しとなっている。

「黒田東彦総裁の会見では、出口戦略を示すのは時期尚早との一点張りから、市場との対話路線にかじを切ってくるとみられるが、具体的な政策公表はまだまだ先だろう」とニッセイ基礎研究所・チーフエコノミストの矢嶋康次氏はみる。

正常化(金融引き締め)を急ぐFRBと、現状維持の日銀。政策ギャップからドル高/円安が進んでもよさそうなものだが、現実はむしろドル安/円高。10年米長期金利は2.1%台前半と前日よりも低下し、円高警戒が強まる中で、日経平均.N225も終値で約2週間ぶりの安値に沈んでしまった。

米株が調整すれば、日本株も下落をまぬがれないのが、これまでの経験則。リスク許容度が下がった海外投資家のウエート調整の売りが日本株にも出やすい。「日本株は欧米株と比べて割高感が乏しく出遅れており、ショートポジションは組めないが、積極的に買う理由もない」(外資系証券)という。

米株が暴落するような展開になれば、FRBは資産縮小ペースを減速させたり、短期金利を引き下げたりする方法もある。しかし、一度火が付いた資産価格を魔法のようにコントロールできるかはまだわからない。

今の金融市場は、株式と債券が同時に上がる流動性相場だ。その背景には日米欧の量的緩和政策がある。「量的緩和クラブ」からの完全脱退を目指すFRBがもたらす影響を市場もまだ読み切れないでいる。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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