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市場で浮上する衆院選観測、「郵政解散」に相似 
2014年11月10日 / 10:17 / 3年後

市場で浮上する衆院選観測、「郵政解散」に相似 

 11月10日、マーケットで早期の衆院解散・総選挙観測が浮上してきた。政界で消費再増税への意見が二分する現状は、郵政民営化が争点となった2005年8月の「郵政解散」時に似ているとの見方が広がっているためだ。写真は東証。10月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 10日 ロイター] - マーケットで早期の衆院解散・総選挙観測が浮上してきた。政界で消費再増税への意見が二分する現状は、郵政民営化が争点となった2005年8月の「郵政解散」時に似ているとの見方が広がっているためだ。

当時のように自民大勝なら経済政策を一段と進めやすくなり、株高が進行するとの期待も出ているが、「右傾化」加速のリスクも警戒されている。

<自民圧勝の予測>

日銀の電撃的な追加緩和によって、マーケットでは株高・円安が進行。市場環境的には、消費再増税を決断しやすくなったが、国内景気は依然として減速感を強めており、増税延期への期待も根強い。

安倍晋三首相は、消費再増税を延期する場合、年内に衆院解散・総選挙に踏み切る検討を始めたとの一部報道もあって、市場には解散への思惑が広がっている。首相は7日夜のTV番組で、解散について「実際に考えていない」と述べたが、自身が「解散について首相に聞けば、考えていないというのが決まりだ」と前置きしたように、額面通りに受け取る市場関係者は少ない。

市場で増税延期とセットでの解散・総選挙観測が強まっている背景には、政治環境が2005年の8月8日の「郵政解散」当時と似てきたとみられていることがある。当時の小泉純一郎首相は同日の参院本会議で、郵政民営化関連法案が否決されると、即日、衆院解散の意向を表明。自民党は衆院選で地滑り的な勝利を収め、選挙後に郵政民営化法案は可決・成立した。

郵政民営化と同じように意見が真っ二つに分かれる消費再増税を先送りする場合、政界の反対派(増税派)を押し切るために選挙を使うのではないかとの見方が出ている。来年度予算の概算要求など編成作業は、増税前提で着々と進んできた。増税延期のハードルは高いが、選挙で民意が示されれば、延期も決定しやすい。

りそな銀行チーフ・エコノミストの黒瀬浩一氏は「過去の相関関係でみれば、内閣支持率が40%程度であれば3分の2の議席は確保できる。まして下がってきたとはいえ、安倍内閣の支持率は50%以上であり、野党が弱体化していることを考え合わせると自民圧勝となりそうだ。そうなれば増税延期も通りやすいだろう」と指摘する。<構造改革の推進に期待>

増税延期と解散・総選挙の場合、マーケットの反応はどうなるか──。郵政解散時は自民党圧勝を好感し、日本株は急上昇。日経平均株価.N225は1万1778円(2005年8月8日)から、1万7563円(06年4月7日)まで5784円上昇した。その間、株高をけん引したのが外国人投資家だ。構造改革推進への期待を背景に、05年8月から06年4月に約8兆7000億円を買い越した。

今回、増税延期は、景気にはプラスだが、増税とセットで打ち出されるとみられていた大型景気対策への期待が後退するため、その分ではマイナスだ。

だが、圧倒的な議席数を獲得すれば、構造改革などで「痛み」が伴う分野でも、反対勢力を押し切ることができるようになるかもしれないとの期待感も強まる。「海外勢も今度こそ成長戦略が進むと期待してくれそうだ」(大手証券トレーダー)という。

外為市場での反応は読みにくいが、「株高が進めば円安要因になる」(国内証券)との見方もある。郵政解散時、05年8月に112円前半だったドル/円JPY=EBSは12月に120円前半まで上昇した後、113円台に下落と乱高下した。今回は日本の貿易赤字や日米金利差など円安材料が豊富だ。

一方、「これまで安倍内閣は矢継ぎ早に政策を打ち出してきたが、自民党が圧勝すれば、それほど焦らなくても済む。円安は緩やかになりそうだ」(岡三オンライン証券・投資戦略部部長の武部力也氏)との予想も出ている。

リスク要因は金利上昇だが、最近の金利低下傾向からみて、財政再建策さえきちんと示されれば、金利上昇リスクは限定的との見方は多い。「増税延期観測が出ても、金利はむしろ低下している。日銀の大量国債購入で需給は引き締まっている。多少、金利が上昇すれば、運用難の国内機関投資家が買いに出るだろう」(国内証券・債券担当者)とみられている。

<もう1つのリスク>

ただ、総選挙の結果、自民単独で3分の2以上という圧勝となった場合、もう1つのリスクが浮上するとの見方もある。安倍内閣の「右傾化」加速だ。経済が落ち込めば憲法改正なども難しくなるため、経済や株価を腰折れさせることはないとの楽観的な見方が多いが、市場では「対外的な緊張感が増す右傾化は、安倍内閣の大きなリスク」(邦銀)との警戒感は根強い。

郵政解散をきっかけにした株高は、サブプライム問題が表面化する2007年まで続いた。日経平均は1万8300円台まで上昇したが、その後急落し、08年10月には7000円を割り込み、郵政解散時の水準を大きく下回った。結局、日本経済の構造改革、もしくは成長戦略は道半ばで、持続的成長という目的はいまだ達成できていない。

「消費再増税の議論の前に社会保障費の改革があるべきだが、一向に進んでいない。再増税延期は目の前の景気にはプラスだが、問題を先送りするだけになってしまうおそれもある。予算のバラマキも懸念要因だ。自民党が圧勝して短期的にはマーケットも好感するかもしれないが、その後が問題だろう」とSMBC日興証券・日本担当シニアエコノミストの宮前耕也氏は話している。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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