〔株式スコープ〕再浮上うかがう海運株、鉄鉱石交渉決着なら駆け込み的な船舶需要
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関連銘柄 | 9日終値 | 昨年来高値 | PER | PBR |
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日本郵船(9101.T: 株価, ニュース, レポート) | 862円(+19) | 1276円 (7/26)| 9.2倍 | 1.5倍 |
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商船三井(9104.T: 株価, ニュース, レポート) |1378円(+46) | 2040円(10/15)| 8.5倍 | 2.5倍 |
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川崎汽船(9107.T: 株価, ニュース, レポート) |1052円(+38) | 1760円(10/12)| 7.4倍 | 1.6倍 |
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*カッコ内は前日比。昨年来高値は上場来の高値。PER(株価収益率)、PBR
(株価純資産倍率)は08年3月期予想ベース。
伊賀 大記記者
[東京 10日 ロイター] 前年後半以降、大きく売られてきた海運株が再浮上のタ
イミングをうかがっている。株価と連動性の高いバルチック指数が春先にかけて反発する
との見方が強まっているためだ。来年度の鉄鉱石の価格交渉が大詰めを迎えており、決着
すればこれまで手控えられていた船舶需要が年度末にかけて駆け込み的に高まる可能性が
あるという。一方、中国など新興国市場の経済拡大を背景に急上昇した船賃は依然「異常
水準」にあり、正常化による低下は続くため長期的な株価上昇は疑問だとの声も出てい
る。
<鉄鉱石価格交渉の戦術で用船料が低下>
8日の東証業種別指数で値上がりトップとなり久々の急反発をみせた海運株。9日の市
場でも朝方は軟調だったが後場にかけて切り返した。8日の市場では、ばら積み船運賃の
総合指数であるバルチック海運指数.BADIが7日の市場で11日ぶりに反発したことが
買い材料となったほか、ドイツ証券が7日付リポートで日本郵船、商船三井、川崎汽船の
海運大手3社を「バイ」で新規カバーしたことも話題となった。
ドイツ証券アナリストの安藤誠悟氏がポイントとするのは来年度の鉄鉱石の価格交渉が
大詰めを迎えていることだ。価格交渉時の戦術として鉄鉱石の買い手である中国の鉄鋼メ
ーカーは鉄鉱石の輸入を控えることで需要の低さを演出し、価格を低めに抑えようとする
という。このため輸送需要が低下し用船料も下落する。
一方、鉄鉱石の供給側の一角であるブラジルも、ライバルであるオーストラリアが中国
までの海運距離で約3分の1と有利に立つため、船賃を下げたいというモチベーションが
働く。船賃を下げればそれだけ鉄鉱石の価格を上げる余地が生まれるためだ。オーストラ
リアに船賃を下げたい理由はないが、中国・ブラジルの2国に対しオーストラリア1国と
いうパワーバランスの結果、価格交渉がヤマ場を迎えている現在、用船料が下がっている
という。
新興国経済の拡大による鉄鋼需要の増加を背景に、来年度の鉄鉱石価格が大幅に上昇す
るのは必至とみられている。交渉がまとまれば、値段が引き上げられる4月までに、これ
まで控えていた分と、安い価格のうちに鉄鉱石を仕入れてしまおうという駆け込み的な需
要から用船料は反発するというのが安藤氏の見方だ。バルチック指数と海運株の連動性は
高く、指数反発とともに株価も上昇するとみて、商船三井の目標株価(今後12カ月)は
2170円、川崎汽船は1550円と、現在の株価から5─6割の上昇を見込んでいる。
<海運会社の足元の業績はしっかり>
もともと大手海運会社の足元の業績はしっかりしている。日本郵船の08年3月期連結
経常利益は前年比67%増予想。川崎汽船は10月30日に業績予想を上方修正し、連結
経常利益予想を前年比2倍の1280億円に引き上げた。さらにバリュエーション面でも
PERは一ケタであり、全市場平均が15─16倍程度とみられるなか割安感は強い。し
かしながら昨年後半以降、株価は大きくたたかれ、ピークから3割程度下落した。
株価下落のひとつの要因は外部環境の悪化だった。円高と原油高が進み利益圧迫要因に
なると嫌気された。川崎汽船の場合、1円の円高で12億円、燃料価格の1ドル上昇で
2.6億円マイナス(連結経常利益ベース)になる。他の海運会社も円高と燃料価格の上
昇は打撃だ。
さらに新興国経済の成長とともに設備投資需要が大きく増加するとのグローバルインフ
ラストラクチャー拡大シナリオをもとに日本の海運株や建設機械株を買っていた海外投資
家の一部が投資姿勢を反転させたことも、株価の下落につながった。リーマンブラザーズ
証券・チーフストラテジストの宮島秀直氏によると「2004年に始まったグローバルイ
ンフラブームのサイクルは6年。そのピークは4年目の今年に来るとみて一部のヘッジフ
ァンドが先回り的に売っている」という。海外勢が日本株売りを進めるなかで、年初から
みれば利益の出ている海運株から外していったという面もあるとみられている。
こうした悪材料も株価下落の過程で織り込まれつつある。用船料が上がらずとも現在の
高水準を維持できれば、円高や原油高の悪影響を吸収して08年3月期は大幅な増益とな
ると予想するアナリストは多い。用船料に関しても、ドイツ証券だけでなく「休みが多く
なる年末年始は輸送需要が低くなるが、船舶需給がタイトな状況には変わりない。旧正月
明け以降には反転する可能性が大きい」(野村証券金融経済研究所シニアアナリストの成
田康浩氏)と、春先にはいったん回復するとみる専門家が多い。
<長期的には用船料の正常化が進み、利益圧迫の可能性>
ただ、長期的な株価回復には疑問の声もある。2年で3倍以上に上昇したバルチック指
数は依然として「異常値」(国内証券アナリスト)とみられているためだ。バルチック指
数の上昇を材料として海運株も買われただけに指数の調整長期化は株価への圧迫要因にな
るという。
バルチック指数は11月13日に付けた最高値1万1039ポイントから約2割低い
8730ポイント(8日終値)まで低下したが、06年初から比べれば3.5倍、07年
初からでも2倍の水準にある。
なかでもケープサイズと呼ばれる積載重量15万─17万トン級の大型船は、現在1日
あたりの用船料が15万ドル前後となっているが、一時は20万ドルまで上昇していた。
以前は7700ドル程度で推移しており、現在の20分の1程度。損益分岐点は3万ドル
程度と言われている。
クレディスイス証券アナリストの板崎王亮氏はケープサイズの用船料は08年度に10
万ドル、09年度は6万ドルに低下すると予測している。
用船契約は年間契約など長期のものもありスポット価格の変動だけで、海運会社の業績
が影響されるわけではない。ただ北米航路などの採算が厳しいなか、鉄鉱石や穀物を運ぶ
ドライバルク船がドル箱なのも事実だ。板崎氏は現在の株価について下げすぎの感が強い
として現水準から大きく下回ることはないだろうとの見方を示しながらも、長期的な業績
に関しては「賃料正常化の過程で減益を想定せざるを得ない可能性がある」と厳しい見方
を示している。
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