COLUMN-〔インサイト〕参加者のすそ野広がるコモディティ市場=アストマックス 江守氏
<日本でもコモディティ投資が拡大基調へ>
コモディティ価格の上昇で、様々な方面からの関心が高まっている。投資家の関心も徐々にコモディティ投資に向かっているが、まだまだ日本では一般的ではない。先進的な機関投資家の方々の中には、すでにポートフォリオにコモディティを組み込んでいる向きもあるが、全体としては、日本は明らかに欧米の動きからは周回遅れの状況にある。
この差がどのように埋められていくのかが、筆者の関心でもある。仕事柄、最近では日本の大手金融機関や地方銀行に出向くことも少なくないが、彼らのコモディティ市場への理解度は数年前からは明らかに大きな変化が見られる。知識レベルも格段に向上しており、いつコモディティ投資を開始しても問題ない状況にある。
もちろんすでに投資を開始している向きにとっては、さらにその理解度を深め、投資資金の配分をより効率的に行うことに関心が向かっており、今年度については昨年度のパフォーマンスのよさから、コモディティへの投資金額が拡大する可能性が高いものと思われる。
これらの状況から、今年度は筆者が想定している以上にコモディティ投資の金額が拡大することになりそうである。海外ではコモディティ関連の上場投資信託(ETF)の残高が拡大する中、日本でも東証がコモディティETFに関心を示すなど、コモディティを投資対象として認知する動きが加速している。これまで日本の投資家は、株式や債券などのペーパー資産である金融商品を中心に投資してきたが、今後はコモディティという実物資産に投資する機会を得ることになろう。この変化は、日本におけるコモディティ市場において、歴史的な変化であり、大いに歓迎すべきであろう。
<原材料価格の上昇、コモディティ投資で事業会社もヘッジ可能>
日本のコモディティ市場の拡大が遅れているのは、担い手不足が直接的な原因である。海外市場では、大手投資銀行などがコモディティ専門部隊を抱え、実需家から投資家まで幅広い層のコモディティ市場関係者にビジネスを展開し、裾野は極めて広い。彼らはすでに日本でもビジネスを展開しており、一部の機関投資家も彼らが販売する投資商品を購入している。
それでも日本では市場の最先端で取引を経験した市場関係者の絶対数が少なく、さらに金融市場としての認知度が低いこともあり、金融機関の参入もやや遅れ気味である。もちろん現在では大手金融機関も相応の人員を配し、コモディティビジネスの拡大を進めているが、全体としてはまだ拡大途上である。やはり金融機関の多くがコモディティ市場に何らかのかかわりを持ち、その絶対数が拡大しないことには、日本での本格的なコモディティ市場の拡大は望めない。
幸い海外での成功例があるため、日本でもいずれはコモディティ市場のすそ野が広がり、参加者の絶対数も増加に向かうものと思われる。もともと資源を海外からの輸入に頼らなければならない日本にとって、コモディティ投資は絶対的に行わなければならない立場にある。前回のコラムでも指摘したインフレリスクを回避するための投資対象としての位置付けだけでなく、コモディティ価格上昇のリスクヘッジとしても使えるわけであり、今後はこのような利用方法が事業会社にも拡大していくことが想定される。素材価格の上昇による企業業績の悪化リスクの回避に成功すれば、これらの企業は市場で評価されることになろう。
<コモディティ価格上昇をいかに利用するか>
コモディティ価格が高止まりする中で、この数カ月の市場の関心は農産物市場に向かっていたと言えよう。日本でも農産物価格の上昇を利用した投資商品が販売されるなど、農産物セクターへの関心はコーンや大豆、小麦などの穀物価格の上昇をどのように取り込むかにあったと言える。しかし、穀物価格が高くなり過ぎたことに対し、米国などの主要産地の農家からは、投機家が穀物価格を押し上げているとの指摘が出始めるなど、本来のヘッジ市場としてのコモディティ先物市場の機能が失われ、農産物市場が投機の対象になっていることに対する批判が噴出している。
また、貧困国では食料価格の高騰から、一日一食の生活を強いられるなど、穀物投機に対して厳しい声が聞かれるようになっている。「生活に必要な食料を投機の対象にして良いのか」と言う声に対し、筆者も同じ感想を持っている。
一方で、穀物生産の拡大ペースが人口の増加のペースに追いつかず、結果的に需給ひっ迫を招き、これが価格上昇の最大の理由となっていることも事実である。コーンや大豆などの食料をバイオ燃料の原料として使用することに対する批判も根強い。食料をバイオ燃料の原料に使用することで、石油の供給不足を補うという考え方はわからないでもないが、全体論としては優先すべき順番が明らかに間違っているといえる。
コーンが多く収穫できる米国がコーンをエタノール生産という国策事業の一環として行っている以上、これらの問題は一部の国が批判しても、そう簡単には解決しないだろう。このような状況で、結果的に穀物価格が上昇し、この動きを捉えて投資家が穀物投資に走ることを批判するのは、ある意味では仕方のない部分がある。
市場経済の中で、コモディティ市場がオープンになっている以上、これらの動きをいかに早く捉え、さらに行動に移せるかが投資結果につながることを考慮すれば、今後もコモディティ投資は拡大することはあっても、縮小に向かう可能性は極めて低いといえる。歴史的な展開にあるコモディティ市場にいかに早く参加し、どのように利用するかを考えることが求められる時代である。これは投資家・事業会社、さらには一般個人でも立場は同じであることを再認識しておく必要があると筆者は考える。
(30日 東京)
江守 哲 アストマックス 運用部 ファンドマネージャー
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