UPDATE1:消費税上げの必要性を提言、幅や時期は明記せず=政府税調答申
[東京 20日 ロイター] 政府税制調査会(首相の諮問機関)は20日、増大する社会保障の安定財源として消費税率引き上げの必要性を求める答申を取りまとめた。答申では安定財源として消費税が「中核を担うにふさわしい」と位置づけ、消費税の社会保障財源化について「選択肢のひとつとして幅広く検討を行うべきだ」と提言した。答申で消費税に言及するのは3年ぶり。
消費税の具体的な上げ幅や引き上げの時期は明記されていないが、社会保障費に関して「消費税率を引き上げていくことによって賄うとの姿勢を明らかにすること(「消費税の社会保障財源化」)」を検討課題の選択肢として明記。終了後会見した香西泰会長は、「消費税引き上げ」を明示した答申ではないが、「少なくとも(消費税上げの)可能性を示している」と説明した。
答申の表題は「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」──。例年この時期の答申は来年度税制改正を展望したものとなるが、今回は、年度改正にとどまらず、中長期的な抜本改革を意識した内容となった。提言内容の実施時期については、政府が適切に判断するよう求め、踏み込むことを避けた。
背景には、ねじれ国会や早期の衆院解散・総選挙も観測される流動的な政治状況があるもよう。答申は、今後あるべき税制の構築に向けて、この答申を「道しるべ」に建設的な議論の展開を求めている。
<税制改革の視点>
答申では、国・地方の債務残高が773兆円、対GDP比148%に達する足元の財政状況について「社会保障制度の持続可能性を疑わせ、国民各層に将来への大きな不安と動揺をもたらす原因となっている」と警告。少子高齢化とグローバル化の進展の中で、税制改革の喫緊の課題として社会保障の安定財源確保を挙げ、格差問題や成長力強化の課題への税制面からの対応も求めている。
<消費税の社会保障財源化>
具体的には消費税については、1)経済動向や人口構成の変化に左右されにくい、2)国民が広く公平に負担を分かち合い世代間の不公正の是正に資する、3)勤労世代に負担が集中しない──などの観点から、「社会保障財源の中核を担うにふさわしい」と指摘。
こうした消費税の適性を示した後、答申は社会保障費に関して「消費税率を引き上げていくことによって賄うとの姿勢を明らかにすること(「消費税の社会保障財源化」)について、選択肢のひとつとして幅広く検討を行うべきだ」と提言している。
一方、低所得者ほど所得に対する税の割合が高くなる消費税の「逆進性」の問題に対して、答申は「十分念頭に置く必要がある」としながらも、「一時点の所得水準」という1つの尺度で担税力を評価することは適当でなくなっていると指摘。「消費は一時点の所得よりも生涯を通じた経済力をより反映している」として、必ずしも逆進性があるとは言えないとの考え方を示した。軽減税率については、「極力単一税率が望ましい」とした。
<証券優遇税制は廃止へ>
上場株式等の配当や譲渡益の軽減税率については、時限的な市場対策として導入されたものだとし、2008年末以降の期限到来とともに廃止すべきとの考えを明記した。そのうえで「リスク資産への投資促進を図るため、金融所得間の損益通算の範囲を本格的に拡大していくべきだ」と提言、その具体的な範囲や仕組みについて早急に検討を求めた。
<法人課税、当面は研究開発税制の活用に重点>
国際競争力強化と経済活性化の観点からは、答申は、先進国に比べ高い法人実効税率について「さらなる引き下げが求められている」としながらも「厳しい財政事情の下、課税ベースの拡大を含めた対応が必要」として、見送りの方針を明示。「当面は、研究開発税制をはじめとする政策税制の効果的な活用に重点を置く必要がある」との考えを示した。
<所得税では諸控除見直しを提言>
個人所得課税では、格差是正などの観点から税率構造の見直しや、男女共同参画やライフスタイルの多様化を踏まえた配偶者控除・扶養控除など控除の見直しを求めた。
さらに年金以外に高額な給与を得ている場合、公的年金等控除について世代間・世代内の公平性の観点から適正化を図ることや、高所得者ほど税負担軽減額が大きい所得控除を改組し税額控除を導入する考え方を今後の検討課題として提起。所得税の再配分機能の見直しを求めた。
<道路特定財源や地方税収偏在問題、方向性出ず>
中長期的な提言中心の今回の答申では、来年度の税制改正に向け、地方自治体間の税収偏在問題や来年3月以降に暫定税率の期限が切れる道路特定財源の扱いなど、政治的な調整が求められる課題について明確な方向性を示すことを避けた。
地方間の税源偏在問題では「是正が必要」にとどめ、道路特定財源問題は「2008年度以降も、厳しい財政事情のもと、環境面への影響にも配慮し、暫定税率による上乗せ分も含め、現行の税率水準を維持する」こととされているとの事実を明記するにとどめた。
また、消費税増税が念頭にあるとみられる2009年度までの基礎年金国庫負担割合引き上げに伴う財源手当についても「法律ですでに定められており、速やかな対応を図る必要がある」とするにとどめた。
消費税増税の必要性や控除見直しなど増税色の強い答申内容だが、香西会長は「社会保障制度を持続させることがあやふやな情勢を前提に、このままでよいのか」との問題提起だと強調。「増税路線を走っているわけではない」と述べ、増税ありきの見方にクギをさした。
答申は、福田康夫首相が帰国後に正式提出。08年度改正の具体的な内容は、自民党税制調査会など与党税調が詰め12月中旬に与党税制改正大綱としてとりまとめる。ただ、衆参ねじれ国会の中で、消費税や道路特定財源、証券優遇税制の扱いでは、自民、公明、民主の主張に隔たりは大きく、来年度税制改正の行方は混沌としている。
(ロイター日本語ニュース 吉川 裕子)
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