〔特集:東京市場強化〕金融産業を国家戦略に、運用のプロ育成を=斉藤・東証社長

2007年 11月 26日 16:51 JST
 
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 村井 令二記者

 [東京 26日 ロイター] 東京の金融・資本市場の国際競争力強化が急がれている。ロンドンとニューヨークの市場間競争が激化し、シンガポールや香港も金融センターの地位向上を図る一方で、東京市場の地盤沈下は著しく、政府や市場関係者に危機感が浸透してきた。金融庁は年内に「金融・資本市場競争力強化プラン」を策定するが、世界の投資マネーをひきつけ、1500兆円の個人金融資産を有効活用し、東京市場を活性化させるにはどうすればよいのか。有識者や関係者にインタビューした。

 東京証券取引所の斉藤惇社長は、ロイターとのインタビューで、東証の上場企業の株式時価総額が縮小してニューヨークに大きく引き離されたうえ、上海と香港を合わせた時価総額に追い抜かれている現状を指摘したうえで「金融産業を国家戦略として樹立するよう提案したい」と語った。

 2008年中に開設するプロの投資家向け新興市場については、海外の投資家を呼び込んで流動性を確保していく考えで「運用のプロを育てて行くことが必要だ」と強調した。

 インタビューの詳細は以下のとおり。

 ――東京市場の地位が低下している。

 「東証の上場企業の時価総額は1989年のバブルのピーク時に610兆円あったが500兆円弱に減っている。この間、中国は70倍の規模に増えて、上海と香港を合わせると東証を追い越した。またニューヨーク市場は日本が610兆円のとき400兆円くらいだったが、今や1500兆円を超えて1100兆円以上増えた」

 「米国では増えた時価総額のほとんどが個人に渡って個人消費がGDPを押し上げた。この間に日本はなんらかの形で失敗したため国民に分配できる国民所得が株式で創生されず、むしろ減少した。なぜこうしたことになったのか真剣に考えなければならない」

 ――どのように東京市場の時価総額を拡大させて国際競争力を強化するか。

 「企業価値が付かず成長性が買われなかった。日本の市場効率性が悪いと言え、コーポレートガバナンスが求められる。また、日本のGDPは製造輸出産業を中心に構成されてきたが、金融産業の比率を膨らますことが必要だ。アメリカではGDPの8%が金融業、イギリスは10%を超えている。日本で金融産業を本格的に国家戦略として樹立するよう提案したい」

 ――取引所の上場商品を多様化することは東京市場の活性化につながるか。

 「日本の投資にはいろいろな障壁があるがETF(上場投資信託)もそうだ。ニューヨークに150本あるETFが日本には10数本しかない。それで犠牲になるのは投資家だ。株が下がっても金や原油は暴騰しているからETFがあればリスクがヘッジできる。諸外国はこうしたことで個人の資産を守っているが、なぜ日本人がそれをできないのか。それが省庁間の権益の戦いだったりするなら情けない」

 ――東証の商品戦略はどうするか。規制緩和されれば金のETFから採用していくか。

 「制度の動きをみながらやっていくが、金はひとつの候補。大阪証券取引所の金ETFは債券リンクなので現物拠出ができないが、われわれのは現物と交換ができるようにする。世界中のETFはその仕組みだ。またオイルのETFがあれば原油が高騰しても喜ばれるだろう」

 ――証券取引所が商品先物を扱うことについては。

 「商品でも先物だったら金融商品になる。お互い(証券取引所も商品取引所も)やったらいいと思う」

 ――2008年中に設立するプロの投資家向け新興市場はどのような姿になるか。

 「ジャスダック、マザーズ、ヘラクレスとはかなり違う市場になる。上場企業は、英文開示や国際会計基準でもいい。四半期開示や日本版SOXも要らないようにしたい。ただ、違反行為には厳しくペナルティーを課す」

 ――流動性をどのようにつけて、どのくらいの規模の市場にするか。

 「取引量を増やすため日本だけでなく海外の機関投資家を歓迎する。まさしく彼らはプロの投資家。最初のうちは疑心暗鬼もあって流動性をつけるのは大変だろう。こうしたものは最初の1年くらいは批判しかないが何年か一生懸命やっていけばいい」

 ――プロ向け市場は日本の運用力を向上させるか。

 「320兆円の年金を年5%で運用すれば15兆―20兆円増えるではないか。年金の原資がなくなるから消費税を上げるという話になっていて1%上げると2.5兆円の財源になると言うが、いい運用をしただけで消費税5%分くらいの効果があるはずだ。運用のプロを育てていくことが必要だ」

 ――コーポレートガバナンスでは、企業の第三者割当増資のあり方に疑問を呈している。

 「株主を無視したひどいこともある。エクイティバリューのない企業が上場して第三者割当をして、その割当先も分からない。株主総会の手続きもなくファミリーの取締役会で決めたりする。ひどいダイリューションで端数株主が現金化するしかないこともある。そうした第三者割当増資がまかり通るのはおかしい。それは自主規制機関で検討してもらいたいので、(東証自主規制法人の)林正和理事長に問題提起している」

 ――証券優遇税制は延長すべきとの立場にあるが、税制が国際競争力強化に果たす役割は何か。

 「ファンドを運営するとき、日本よりシンガポールの方がはるかに得だという制度を作っていたら、パソコンや携帯で世界中に連絡取れる時代にみんなが出て行ってしまう。気づいたらGDP(国内総生産)が落ちて株が下がって周りをみたら外国人が誰もいなかった、隣の韓国や中国がにぎやかにやっている。それでいいのだと言われれば仕方ないが、私はそんな国ではたまらない」

 *このインタビューは22日に行いました。

 (ロイター日本語ニュース 村井 令二記者)

 
 

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