〔長期金利上昇:識者はこうみる〕財政不安で投資心理に影、金利シナリオ見直しも
[東京 9日 ロイター] 9日の債券市場で長期金利の指標銘柄である10年303回債流通利回りが前週末より3ベーシスポイント高い1.475%となり、6月17日以来、約5カ月ぶりの高水準を付けた。鳩山政権下での国債増発を巡り、2009年度2次補正や2010年度予算編成に絡む不透明感が投資心理に影を落としている。
市場には「財政拡張に傾斜している政府に対する警告」(みずほ証券の上野泰也・チーフマーケットエコノミスト)との見方もある。日米で供給イベントが迫り増発への警戒感が増幅する中、これまでの金利シナリオを見直す動きも出てきそうだ。
市場関係者の見方は以下の通り。
◎日米で供給イベントを警戒:みずほインベスターズ証券の落合昂二シニアマーケットエコノミスト
日米供給イベントに対する警戒感が、長期金利押し上げに作用している。債券相場を巡ってはグローバルにスティープ化が進んでいる。この傾向はユーロ圏でも観測されるが、英・米国ではとくにスティープ化が著しい。イールドカーブのスティープ化は、政策金利の引き下げ(低金利維持への期待含む)と積極財政のポリシーミックスによってもたらされる。その度合いはスプレッドが示すように未踏の領域に踏み込みつつある。
こうしたリフレ政策が最終的に行き着くところはインフレだが、足元のデフレ懸念とは裏腹にBEIは上昇傾向を強め、金や原油は高値更新が続いている。長期金利はまだ金利上昇余地がありそうだ。
◎年内は金利が上昇しやすい:カリヨン証券の加藤進チーフエコノミスト
需給懸念が根強い。日銀が2011年度までデフレが継続するという見通しを示しており、中短期ゾーンでは買いのリスクはさほど大きくない。それに対し、10年ゾーンはコアな投資家を見出せずにいる。12月はインデックスの長期化や大量償還による債券需要が期待できるほか、日本株の出遅れ感やデフレ見通しという強材料が存在する。それでも債券買いに結びついていないのは、財政赤字に対する非常にネガティブな見方が支配的になっているからだ。
2010年度の予算や国債発行計画という「山」を年末までに迎える。年内は、やや金利が上昇しやすい状況が続くとみている。
◎長期金利、きょうがピーク:シティグループ証券の佐野一彦チーフストラテジスト
センチメント改善につながっていない。10年ゾーンに関しては現状では買いを控えている向きが多いようだ。相場観としては現状の金利水準がピークとみている。
財務省が10日入札する40年利付国債(3000億円、2049年3月20日償還)は生命保険会社の需要を背景に好調に終えそうだ。一方、12日入札の5年利付国債(2兆4000億円、14年9月20日償還)は、個人向け国債低迷や15年変動利付国債、10年物価連動国債の年度内発行見送りの影響で増発となる。しかし、5年利回りが0.7%台で推移する状況なら吸収できる。5年債入札は、銀行勢の需要を背景に好調な結果になるとみている。
◎国内外でくすぶる下値不安:日興コーディアル証券の末澤豪謙チーフストラテジスト
1次補正執行停止分の2.9兆円を全額2次補正に充当する案が浮上しており、国債発行額が減るような思惑につながりにくい。日米で供給イベントが重なり、国内外で下値を探るような展開になっている。
米財務省が実施する四半期定例入札は、発行総額が過去最大の810億ドル400億ドル、10年債250億ドル、30年債160億ドル。一方、国内では、個人向け国債の販売低迷や15年変動利付国債、10年物価連動国債の年度内発行見送りで増額対応を余儀なくされた5年債入札を12日に控えている。当面は国内外で需給懸念が払しょくされることはなさそうだ。
◎テクニカルな抵抗線上抜け:バークレイズキャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジスト
5日の10年利付国債入札直後の6日には地域金融機関からとみられる押し目買いも観測されたが、相場反転の勢いに乏しい。日米で供給イベントが予定されており、需給不安が払しょくできない状況となっている。
これまでも長期金利は需給や海外金利を手掛かりに調整する場面があった。今年6月の1.56%や8月の1.46%がそれにあたる。足もとでテクニカルな抵抗線を抜けてきており、目先の1.5%台前半も視野に入ってきた。ただ、ファンダメンタルズや物価トレンドによれば、長期金利1.5%は長い目でみればサポートされそう。長期金利が短期的に上抜けしても長期的な金利上昇トレンド入りには懐疑的だ。
(ロイター・ニュース 山口 貴也記者、田中 志保記者、編集:石田仁志)
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