焦点:ベル24入札は混戦、1000─1200億円提示も
[東京 28日 ロイター] 米シティグループ(C.N: 株価, 企業情報, レポート)傘下の投資ファンドが売却作業を進めているコールセンター会社、ベルシステム24の1次入札に、少なくとも4社の投資ファンドが応札する見通しであることがわかった。
久々の1000億円超のディールとなりそうで、参戦するファンド数はさらに増える可能性がある。ただ、焦点となる価格については、ベル24の将来の収益見通しの不透明さを背景に、応札予定の複数のファンド筋は「1000億─1200億円程度がいいところ」と当初の想定より低い水準を想定。高値で売却したいシティの思惑が外れる可能性が出てきた。
9月1日締め切りの1次入札に応札すると見られているのは、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)[KKR.UL]、CVC[CVC.UL]、ベイン・キャピタル、ペルミラ[PERM.UL]、など。このうちKKRは伊藤忠商事(8001.T: 株価, ニュース, レポート)と共同で応札する予定だ。
ファンドが個別に応札するか、複数でコンソーシアムを組むか、投資形態はぎりぎりの段階まで予断を許さない。ブラックストーン(BX.N: 株価, 企業情報, レポート)やTPG[TPG.UL]、アドバンテッジ・パートナーズなども関心を示しているとされる。シティがベルの売却方針を打ち出して以来、複数のファンドはベルと同業のコールセンター会社と共同で応札するか検討したが、現時点では共同の応札はない見通しとなっている。
<ベルの収益、ソフトバンクに大きく依存>
事業会社が買収に消極的になり、結果としてファンドの買収合戦になりそうな理由は主に2つある。その1つがベルの収益体質だ。
ベルの100%子会社、BBコール(東京都新宿区)は、ソフトバンク(9984.T: 株価, ニュース, レポート)グループからコールセンター業務を受託している。有価証券報告書によると、BBコールの売上高は2009年2月期に324億円と、ベルの連結売上高(1157億円)億円の28%を占める重要な収入源。当期利益は37億円とベル全体(87億円)の42%で、グループの虎の子だ。
ところが、BBコールとソフトバンクの契約は、2015年2月末で切れる。更新されるか否かは現時点で未定。買い手候補のファンドがベルの企業価値を見極めるには、両社間の契約の行方がカギを握る。ある関係筋は「契約は更新されても今までのように(ベルにとって)いい条件にならない可能性が高い」と話し、更新されてもベルの収入が減る可能性に言及した。
アナリストはベルの企業価値について「1000億円の値が付いてもおかしくないが、BBコールのウエイトが極めて高いため(ソフトバンクとの)契約が継続することが前提になる」と推計。契約の打ち切りや更新の条件によってはそれ以下でも不思議ではないという。「シティが希望するとされる売却価格1500億円程度は高望みし過ぎ」(ファンド関係者)との指摘もある。
<投資後のエグジット、困難との見方>
ベルを買収しても「成長させてエグジット(投資回収)するのは容易ではない」(ファンド関係者)とみられるのも、懸念材料だ。ソフトバンクとの契約更新の内容次第で収入が減る可能性があるほか、景気低迷により企業によるアウトソーシング費用が削減され、業界全体の成長は鈍化している。
さらに外資系アナリストによると、コールセンター事業は「少ない社員で多くのパートタイマーを管理する構造になっているため、規模のメリットを追及しなくても利益を追求しやすい構造になっている」。コールセンター同士で合併・買収をしても、必ずしも競争力強化にならないという。買い手はベルのエグジット戦略を描きにくく「投資しようにも高値は提示しにくい」(金融筋)という。
<PEファンド、日本での実績作りに躍起>
多くのファンドは、久々にファンドが関与できる大型案件とあって関心を寄せるが、その背景には、日本で投資実績を積まねばならないという焦りも垣間見れる。昨年来の金融危機のあおりを受け、ファンドは大型投資のためのローンを銀行から受けられず、特に数年前に日本市場に進出してきた外資系のファンドは投資実績を積めない状態が続いているためだ。
たとえばKKRは、2006年に日本へ本格的に進出したが、07年のオリエントコーポレーション(8585.T: 株価, ニュース, レポート)の優先株引き受け(200億円)以外、目立った投資実績がない。CVCも06年にファミリーレストランのすかいらーくの非上場化の際に投資したほか、靴修理会社ミニット・アジア・パシフィックへの投資などにとどまっている。
1000億円規模のファンドによる買収案件は年初来、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のみ。それ以前の大型案件は08年5月のカーライルによる液晶ガラス基板メーカー、NHテクノグラスの株式取得にさかのぼるが、金額は約580億円にとどまった。今回、久々のビッグディールを落札したいファンドは、将来のエグジット(投資回収)期に高リターンを確保しつつ、いかに競り落すか、難しい勝負を迫られている。
(ロイターニュース 江本 恵美、取材協力:布施 太郎、藤田 淳子、ジョージ・チェン、佐藤 和香子、編集:田巻 一彦)
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