預金・債券に資金とどめ様子見、一部に損切りの動き=三井住友銀
[東京 22日 ロイター] 三井住友銀行プライベート・アドバイザリー部の太田康広部長によると、国内の富裕層は、流動性が高くリスクが低い預金や債券に資金を避難させたまま様子見姿勢を続けている。
ただ、足元の株価回復で一部の富裕層からは「含み損を抱えた資産を損切りし、新しい商品に乗り換える動きも若干出てきた」という。21日に行ったロイターとのインタビューで語った。
同氏によると、金融危機が深刻化する前に人気を集めたヘッジファンドなどのオルタナティブ投資商品については、運用成績の不振や換金性の問題などで富裕層の投資意欲は減退している。今は複雑で流動性の低い商品は回避され、社債や仕組み債など「リスクがあってもそのしくみがわかりやすい商品のニーズが高まっている」という。
三井住友銀行は4月に組織を再編し、富裕層個人向けに金融資産運用サービスを提供していたプライベート・バンキング(PB)事業部と、法人向けに事業承継サポートを行っていた承継ビジネス事業部を統合し、プライベート・アドバイザリー部を新設した。富裕層の6─7割を占める企業オーナーに対し個人の金融資産と経営する企業の事業承継に関する総合的なアドバイスを提供するのが狙いで、承継ビジネス事業部を統括していた太田氏が4月に現職に就任した。顧客の資産規模の目安は同行の預かり資産2億円以上または保有金融資産5億円以上で対象顧客は約1万人。
インタビューの詳細は以下のとおり。
──富裕層の投資姿勢はリーマンショック後にどう変化したか。
「100年に1度の危機と呼ばれる状況なのでまだ様子見を続けている。リーマンショック直後は、流動性が高くリスクが低い資産に資金を一旦避難させようとの動きが広がったが、今も現預金、国債、高格付け社債などわかりやすい資産を保有したまま様子を見ている。ただ、4月頃から株式相場が回復したため、一部の余裕のある富裕層の間で、含み損を抱えた資産を損切りし、新しい商品に乗り換える動きも若干出てきた。全体として乗り換えや新規購入が増えているわけではない。株価の回復が継続するかどうかも不透明で、当面は慎重姿勢が続きそうだ」
──富裕層が投資を再開するメドは。
「日本だけでなく欧米の景気が安定的な回復基調に入ったことを経済指標が示すのを待っているようだ。運用商品の中では、今はわかりやすいものが求められている。社債のようにリスクがあってもそのしくみがわかりやすい商品だ。日経平均株価指数やドル/円などの為替レートに連動する仕組み債もわかりやすい商品との位置付けで、特に日経平均連動型の仕組み債のニーズは足元で高まりつつある。ただし、ピーク時に比べればまだ半分以下。4月は豪ドル債など高金利債券への需要も少し出てきたが、1年前に比べればまだ低水準だ。富裕層の中心は60─70代だが、40─50代の創業者のなかでは今が投資の好機とみて動いている人もはごくわずかだがいる」
──リーマンショック前に人気があったヘッジファンド投資の現状は。
「昨秋以降の金融市場の混乱で、期待していた運用収益が得られなかったほか換金性の問題が広がったため、投資意欲は減退した。新たに投資していくような状況ではない」
──金融危機を通して三井住友銀行の富裕層向け戦略に変更は。
「富裕層が今求めているのは中立性と客観性がある情報だ。金融機関の通常の情報提供は商品を販売するためのものが多いが、プライベート・アドバイザリー部は中長期的な顧客との関係構築を目指しており、昨秋以降は顧客のポートフォリオの状況や経済環境などの情報を客観的に中立な立場から提供することに努めた」
「プライベート・アドバイザリー部の総勢は約100人で、このうち顧客に接する営業担当者が50人強。過去2年間に全体で約40人、うち営業担当者は約20人増えた。そのなかの約10人は証券会社など外部からの中途採用で、リスク性資産の知識や経験が豊富な人材が加わった。概ね必要な陣容が確保できたため今年度は増員の計画はない」
──今年度の富裕層向け戦略の柱は。
「4月の組織再編で、企業オーナーに対して個人の資産運用と企業の事業承継や自社株譲渡など両面でアドバイスができる体制が整った。非上場企業の自社株を保有するオーナーが多いが、株式の評価価値が下がっているため、相続税や贈与税の観点から後継者に自社株を譲渡しやすい環境になっている。4月に新たな事業承継税制が導入されたこともあり、自社株譲渡のニーズは高まりそうだ。自社株譲渡でオーナーの現金資産が増えた場合はその運用についてもアドバイスできる。いずれのアドバイスも無料で行うが、長期的には銀行との取引拡大に結びつくとみている」
(ロイター日本語ニュース 大林優香記者;編集 村山 圭一郎)
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