〔運用難の年金〕基金はリバランス続け、割安資産への投資探るべき=マーサー・古宇田氏
[東京 25日 ロイター] マーサージャパン(東京都新宿区)で機関投資家向けに運用コンサルタントを行う古宇田義規取締役は、金融危機を背景とする株安などで運用が悪化している年金基金に対し、中長期でリターンを獲得するため、既存のリバランスルールに従って株式比率を維持するようアドバイスしていることを明らかにした。
また、約50の国内年金を顧客に持つマーサーの古宇田氏は、世界金融市場の混乱で割安な資産が増えているため、「海外の長期投資家と同じように日本の投資家も割安な資産への選別的投資を積極的に探る時期」との考えを示した。19日のロイターとのインタビューで語った。
インタビューの詳細は以下のとおり。
──運用環境の急激な悪化に対し、年金基金はどう対処しているか。
「母体企業との関係があるため基金によって状況は違う。ガバナンス構造が最も厳格である公的年金は10、11月からリバランスで株を買っている。東京証券取引所の売買動向で信託銀行が買い越した分は大半が公的年金の買いとみられる。一方、私的年金は様子見しているところもあり、対応はまちまちだ」
「弊社の顧客には、基本的にルール通りリバランスを行うよう話している。リバランスはいわゆるナンピン買いと益取りをシステマチックに行うもので、事前に決めた配分を維持することがリスク管理につながる。今回の金融危機のインパクトは大きいが、1929年以降の大恐慌と違い、各国政府が協調して経済対策に動いており、資本市場の循環は続くとみている」
「年金は構造上、意思決定してから行動を起こすまでの時間が長いため、あらかじめ決めたルールに則って中長期でリターンを平均的に取っていくことが重要。リバランスをしていかないと相場が戻った時に遅れてしまう」
──今年度に2年連続のマイナス運用になった場合、基金は基本ポートフォリオを見直すか。
「数は多くないが、リスク低減のため株式比率を引き下げるケースはあるだろう。今年度を終えた時点で、基金の運用悪化により母体企業から追加の掛け金が必要になれば、リスクを落とすという議論が出てくる可能性があるためだ」
「ただ、年度を閉めてからリスクを下げても後追いになるだけ。むしろ、今は割安な資産を運用に使えないか積極的に考える時期だ。外国の長期投資家は相場が下がった時、次に何を買おうかと投資機会を探る。日本の投資家も同じように考えたほうがいい」
──魅力的な投資対象は。
「住宅ローン担保証券(MBS)は米連邦準備理事会(FRB)の買い取りプログラムで値もちがよくなっているし、投資適格の社債についても、米国の企業がコマーシャルペーパー(CP)を発行できなくなり長期の社債を発行するなかで、シングルAの社債でもスプレッドが大きくなっている。今はまだハイイールド債の先行きは不透明だが、キャッシュフローが健全でデフォルトリスクがないもので通常より大きなスプレッドが乗っているものに選別的に投資したらいい」
──00─02年度にマイナス運用になった時のように年金制度が見直される可能性は。
「3年連続でマイナス運用になった当時は代行返上の流れがあり、返上した分ポートフォリオのリスクを落として予定利率を下げることができた。予定利率を下げると母体企業の掛け金負担が増えるため、今回も企業があえてその選択を行うかは疑問。また、当時は予定利率が市場金利を大幅に上回っていたが、現状は予定利率が2─2.5%まで低下しているという違いもある」
──今後はLDI(債務主導型運用)の導入が進み、債券投資比率が上がるとの見方もある。
「LDIは広がるかもしれない。厳密なLDIではないにしても、将来の負債とキャッシュフローを分析し、債券運用の一部を長期の国内債に組み替える動きは広がりそうだ」
──ヘッジファンドの成績が不振だが、年金のオルタナティブ投資はどう変わるか。
「ヘッジファンドは期待していたようなリターンが出なかったことや中身がわかりにくいことを理由に解約する動きが一部に出てくるかもしれない。オルタナティブ全体でみれば、これまで相対的に投資割合が高かったヘッジファンドが減り、プライベートエクイティなど他の資産に振り向けられると思う」
──運用報酬が高いアクティブ運用を減らし、パッシブ運用を増やす可能性は。
「目先はあるかもしれない。ただ、ファンダメンタルズから銘柄を選んで投資する伝統的なアクティブ運用のマネージャーは成績不振だったが、チャート分析を基にトレーディング中心のアクティブ運用を行うマネージャーの成績は悪くなかった。機動力のある基金ならば、この種のファンドで解約がしやすいものに投資することも一つの選択肢だ」
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(ロイター日本語ニュース 大林優香記者;編集 石田仁志)
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