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コラム:エボラ感染経路について知っておくべき事実
2014年10月14日 / 06:58 / 3年前

コラム:エボラ感染経路について知っておくべき事実

 10月12日、米CDCは、ダラスの病院でエボラ出血熱治療に関わっていた看護師が感染しているのを確認したと発表。写真は看護師の自宅玄関を消毒する衛生当局者(2014年 ロイター/Jaime R. Carrero)

米疾病対策センター(CDC)は12日、ダラスの病院でリベリア人男性のエボラ出血熱治療に関わっていた看護師が、エボラ熱に感染しているのを確認したと発表した。米国内でエボラ熱の感染が起きたのは初となる。リベリア人男性は先週死亡した。

看護師は、ガウンや手袋、マスクやフェイスシールドを着用していたという。CDCのフリーデン所長を含む多くの人は、患者の体液との直接的な接触を防ぐための防護服を着ていたにもかかわらず、なぜ看護師がウイルスに感染したのか首をかしげている。

ここにきて、エボラウイルスが空気感染型に変異したと心配する声も再び強まっている。

人間に病気を引き起こすウイルスで、感染の形態が変異したという前例は報告されてない。このことから、エボラ熱が空気感染型に変異したとは考えにくい。ただ、空気感染と飛沫感染の違いを理解しておくことは非常に重要だ。

医師が話す空気感染性疾患とは、極めて微小な病原体が乾燥状態の空気中でも長期間漂うことで、距離の離れたヒトからヒトに感染する病気を意味する。呼吸で吸い込まれた病原体は、肺深くにまで進んでいく。

水痘やはしか、結核は空気感染性疾患だ。一方でインフルエンザや天然痘などは、粘液の飛沫のほか、鼻や口や気道からの分泌物から感染する。

誰かが咳やくしゃみをすると(エボラの場合では嘔吐だが)、空気中に分泌物の飛沫が散らばる。これが飛沫感染を引き起こす。医療の現場では、患者の気道に呼吸管を通すなど一部の処置でも、同じことが起こる可能性がある。

飛沫感染型の病原体は、これらの分泌物に含まれて数メートルの範囲に飛散し、目や口や鼻などを通じて感染する。

こうしたことに重要な違いがあるようには見えないかもしれないが、いかに簡単に病気が拡散するかという点では大きな違いがある。飛沫感染より空気感染の方がはるかに伝染性は強い。

リチャード・プレストン氏のノンフィクション「ホット・ゾーン」では、ワシントン近郊のサル検疫施設でのレストン株エボラ・ウイルスの感染が描かれた。同施設ではサル同士に直接の接触はなかったため、CDCと軍専門家はレストン株の空気感染の可能性を疑わざるを得なかった。しかし、サルの排泄物のほか、おりを洗うための高圧洗浄機の霧や汚染された手袋もウイルスを運んだ可能性がある。

レストン株がヒトには病気を引き起こさないと強調しておくのは重要だ。また、実験室で噴霧状になった場合では、西アフリカで今回感染が拡大したザイール株より、レストン株の方が生存時間は長い。そのザイール株でさえ、噴霧状で感染力を保てるのは90分程度だ。とはいえ、実験室で起きることが常に現実の世界を映すとも限らない。

「ホット・ゾーン」に描かれたレストン株流行のパニック以降、専門家たちは別の流行からもエボラ感染について多くを学んできた。

1995年には、コンゴ民主共和国のキクウィトで300人以上がエボラ熱を発症した。この時は感染者のうち12人の感染経路が分からず、再び空気感染が疑われた。しかし、もしエボラが空気感染するなら、たとえ患者と直接的な接触がなくても少なくとも家族の一部は感染していたはずだ。それは起きなかった。

2000年のエボラ熱流行では、ウガンダのグルで400人以上が感染した。感染者全員が他のエボラ患者と直接接触してはいなかった。寝床やマットレスが感染源の1つとなったのかもしれない。1つの皿から指で食事を分け合うことで感染が広がった可能性もある。どちらに共通するのも、ウイルスに感染した体液に触れる可能性が高いことだ。

実験室では、エボラ・ウイルスが違う種にどう感染し、どういった症状を引き起こすかが研究されてきた。ザイール株は、ヒトとサルの間では、免疫系の細胞からリンパ節や血液、肝臓、脾臓に広がるが、肺では最小限の病気しか引き起こさない。しかし、ブタが同株に感染すると、重度な肺疾患を引き起こす。

ウイルスに感染させたブタをサルの近くに置く実験も行われた。直接的な接触はできない距離だったが、サルにもウイルスは感染した。ザイール株はブタの肺疾患を引き起こすため、呼吸器分泌物はウイルスを多く含んでいるだからだ。ブタが鼻を鳴らしたりするたびに、ウイルスは噴霧状となって散らばる。しかし、感染したサルからはウイルスは先に広がらなかった。

ザイール株がヒトに空気感染するようになるには、呼吸器分泌物に多くのウイルスが混じるほどの肺疾患を引き起こす必要がある。さらに、ウイルスは外気中で乾燥や太陽光に長時間耐えなければならない。遠く離れたヒトへの感染力も必要だろう。

過去の流行や室内実験では、ザイール株のエボラ・ウイルスがこうした特徴を持つ証拠は見つかってない。西アフリカでの流行拡大に伴ってウイルスは変異していくが、空気感染型になるにはいくつものハードルを越えなくてはならない。

エボラ熱が空気感染化する可能性は排除する一方、飛沫感染のリスクに対する注意は怠ってはならない。治療の最前線にいる人たち、特に看護師や医師には、病院内での感染をこれ以上出さないよう必要な訓練と個人用防護装備を提供すべきだろう。

*筆者は、感染症と公衆衛生を専門とする内科医で、医療ジャーナリストでもある。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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