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コラム:「ドラギ・マジック」復活でも見逃せない懸念
2016年3月10日 / 23:09 / 2年前

コラム:「ドラギ・マジック」復活でも見逃せない懸念

 3月10日、ドラギECB総裁の「マジック」が復活した。だが問題は、これによってもなお物価を押し上げられない一方、過剰なリスクテークを助長してしまう恐れが出てきたことだ。写真は同総裁の手。フランクフルトで撮影(2016年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

[ロンドン 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の「マジック」が復活した。昨年12月の政策措置は投資家の期待に届かなかったかもしれないが、今回は思い切った追加緩和のパッケージを打ち出した。問題は、これによってもなお物価を押し上げられない一方、過剰なリスクテークを助長してしまう恐れが出てきたことだ。

ECBが毎月の債券買い入れの規模を800億ユーロに増額し、買い入れ対象に銀行以外の事業会社の投資適格級ユーロ建て債券を加えると発表すると、株式や債券の価格が上昇し、社債インデックスはタイト化する場面があった。6月からは期間4年の貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO2)も実施され、一部の銀行には今回マイナス0.4%まで下げられた中銀預金金利が適用される可能性がある。

ECBにとって社債の買い入れは、他の中央銀行よりずっと保守的だった先の金融危機時の姿勢からきっぱりと決別することを意味する。だがこれ以外にもいくつかの「裏ワザ」が施されている。

1つ目は、銀行債はなお買い入れ対象になっていないものの、ドラギ総裁は間接的に銀行の借り入れコストを下げる援護射撃を繰り出していることだ。つまりECBの買い入れで社債利回りが低下すれば、投資家は相対的に利回りが高くなる銀行債や銀行の劣後債に向かう。

2つ目として、長期資金供給オペにマイナス金利を適用すれば、事実上はECBがお金を借りる側の銀行に手数料を支払うことになる点が挙げられる。それによってマイナス金利拡大に伴う利ざや縮小で銀行が受ける打撃が軽減されるだろう。

株式市場でユーロストックス銀行株指数が全般をアウトパフォームしたり、iトラックスシニア金融債指数がタイト化したのもうなずける。

だがこうした明るい面があっても、もっと大きな暗雲から目をそらすことはできない。ユーロ圏の物価上昇率が過去の金融緩和に大きな反応を示さなかった点を考えれば、今回の措置が物価を上向かせる力があるかどうかは分からない。それだけでなくドラギ総裁は投資家に対して、社債を買う際には市場や個別銘柄を取り巻く基礎的な条件を無視しても良いという新たなお墨付きを与えてしまった。

ECBの緩和局面が最終的に幕を閉じた時点で、自らが後押ししている過剰なリスクテークがより大きな負の遺産となってしまいかねない。

●背景となるニュース

*ECBは10日の理事会で、毎月の債券買い入れ額を600億ユーロから800億ユーロに増やし、買い入れ対象に銀行以外の事業会社の投資適格級ユーロ建て債を含めると発表した。

*ECBは中銀預金金利を10ベーシスポイント(bp)引き下げてマイナス0.4%としたほか、主要政策金利のリファイナンス金利を0.05%からゼロに下げ、新たに期間4年のTLTRO2を実施することも明らかにした。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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