〔焦点〕GM破たんの連鎖リスク、沈静化した金融不安の再燃要素に・消費下押しも
[東京 1日 ロイター] 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nが1日に連邦破産法の適用を申請する。マクロ経済への直接的かつ短期的な打撃は小さいとの見方が広がっているものの、関連企業の連鎖破たんのリスクがなくなったわけでなく、破たんの広がりによっては足元で沈静化している金融システム不安が再燃することへの懸念も出ている。また、不安心理の波及によってもともと弱い個人消費がさらに下押しされるリスクも指摘されている。
<米政府の債権保証制度、短期的リスク回避に貢献>
短期的な打撃を最小限に食い止める働きをしたのが、米政府による部品サプライヤーの連鎖倒産回避のためのGM向け債権保証制度の創設だと、多くの市場関係者がみている。三菱東京UFJ銀行・企画部経済調査室長の内田和人氏は「政府が債権者向けの保証を事前に進めて、再生プログラムの中で中核的な役割を果たすという方向であるため、株価が大きく下落するなどマーケットへのインパクトは限定的になっている」と分析した。
ただ、米政府の債権保証制度は枠が限られ、全ての企業を救済するのは不可能とみられるため、倒産や失業者増など副次的な影響への懸念は根強い。
売掛金など債権の焦げ付きや倒産が相次げば、日本企業にも影響がおよぶ公算は大きい。東京商工リサーチはGM本社およびGMグループ企業と取引している日本企業が114社あるとの調査結果をまとめた。そのうち38社が上場企業で、34社が東証1部上場。この大部分は自動車メーカー、米国現地に工場を設置している自動車部品・プレスメーカー、大手商社など。
また、帝国データバンクは、GMが破たんした場合、GMとの取引関係を有する全133社のうち102社、全体の77%で売掛債権が不良化する潜在的なリスクが存在しているとの調査結果を発表している。
<中小部品メーカーへの波及リスク、大きな懸念材料に>
野村証券・チーフエコノミストの木内登英氏は「GM破たんで国内でも中小部品メーカーの連鎖倒産が発生する可能性がある。米政府のGM向け債権の保証制度は、GMと直接取引のある『1次下請け』が中心で、孫請け以下の小規模なメーカーへの保証はほとんどないのが実情である点も大きな懸念」と指摘。その上で「米政府は財務の弱い現地メーカーの支援を優先するとの見方もあり、日系メーカーの多くは申請した売掛債権の7―8割しか戻ってこない可能性があるとの専門家の指摘もある」と述べている。
他方、ドイツ証券・シニアエコノミストの安達誠司氏は「GMに部品を供給している国内部品メーカーが、資金繰りに行き詰るとか、売掛金が回収できないような場合には、企業金融支援措置が必要になるかもしれないが、日銀の現行の措置で対応可能なのではないか」とみている。
二階俊博経済産業相は29日の閣議後記者会見で、米ゼネラル・モーターズ(GM)が破産法を申請する可能性が高まっていることに関して「国内の下請け企業や部品メーカーに影響が及んだ場合は、何らかの対応を考えていかなければならない」と表明していた。木内氏は「状況しだいでは、日本政府の救済措置が発動される可能性が残されている」とみている。
<難しい短期的な個人消費の回復>
GM破たんのマクロ経済への影響を考える上で、GMのディーラーの削減、工場の閉鎖などを通じて雇用調整がどの程度の深さおよびスピードで広がるかが大きなポイントになるが、現状では不透明感が強い。
バークレイズ・キャピタル証券・チーフ外債ストラテジストの高橋祥夫氏は「GMとクライスラーの自動車販売のシェアは一貫して低下してきており、最近の北米産車組立台数は年率400─500万台と販売台数の年率700万台をすでに大きく下回っている。このため追加的な生産や雇用の削減圧力はそれほど大きくないと考えられる」とみている。
野村証券の木内氏も「仮に部品メーカーなどの連鎖倒産などが生じるとして波及効果を最大考慮しても、米国GDPの押し下げ効果は0.1%に満たない」と推計している。
ただ、米国の家計部門の過剰借入の調整が行われる中で、GMの破たんで米消費者の信頼感がさらに傷つけられ、消費マインドに悪影響が出るリスクも否定できない。三菱東京UFJ銀の内田氏は、自動車販売について「住宅を含めある程度、資産効果が出てこないと消費意欲の向上は難しい。米国を含めた先進国は、買い替え需要しかないため、その部分で刺激が必要な状況に陥っている」とし、「2010─2011年にかけては、株価や住宅が大きく持ち直して消費、需要が喚起されるというところまでは期待できない」と指摘する。
(ロイター日本語ニュース 武田晃子記者;取材協力 児玉成夫記者;編集 田巻 一彦)
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