G7はインパクトなし、金融機関の早期損失開示を評価の声も=市場関係者
[東京 9日 ロイター] 7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅融資)問題の影響で、金融機関の損失懸念が払しょくされない中で、損失の早期開示に言及し、市場関係者はその点を評価している。しかし、世界的な金融市場の混乱や経済の先行き懸念に対し、当初期待されていた参加各国による具体的な協調行動が明記されず、失望感も一部に浮上している。ただ、金融市場に対して、今回のG7が大きなインパクトを与えるものではないとの点では、ほぼ一致している。
<みずほ証券・チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>
G7声明は、国際協調姿勢や問題意識の共有化を確認するにとどまり、想定されていた内容だ。サプライズはない。
声明で金融機関のディスクロージャーや資本増強に触れている。しかしポールソン米財務長官が事前に公的資金投入について慎重な発言をしていたように、具体的に踏み込んだ内容は見られなかった。中国の人民元に対する表現が強まっているが、欧州の不満に配慮したのだろう。
金融市場への影響は基本的にニュートラル。ただ、株式市場でG7に期待していた参加者がいるとすれば、失望売りを誘う可能性がある。株売りなら債券買いの構図だ。
<三菱東京UFJ銀行・チーフアナリスト 高島修氏>
G7声明は、協調できる部分は協調し、各国で対応するべきことは各国で行う必要があると要約できる。金融政策や財政政策など政策面で日米欧の立ち位置が異なるので、パッケージとしてまとめるのは難しかったのだろう。金融機関の財務に関連し、透明性やリスク管理を向上させる「バーゼルII」も挙げられ、財務面で問題が生じた金融機関について、損失計上や資本増強などを進める姿勢が明確になったと評価する。欧州の金融機関の決算発表が本格化するため、タイミングも良かった。
前回(昨年10月開催)のG7と比べると、サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅融資)問題を深刻に受け止めたとの印象を持つ。これによって為替相場への影響を読み取るのは難しい。ドルを売りにくいが、ドル買いという感じでもない。欧州の株価が手掛かりとして注目されると思われる。金融機関の損失処理に関して資本増強などの対応は株式市場に好感されるだろう。
<UBS銀行・ディレクター 牟田誠一朗氏>
今回G7は、減速を強める世界経済に対し各国が一致して対策を打ち出せるか、また信用市場の混乱をどのように回避できるかということがポイントだった。前者は、サブプライム問題に関しては国によっても異なるため、まとまらなかったのだろう。協調して対策を打ち出せなかったことはネガティブな材料だ。
G7各国は景気下振れリスクを共有しているが、取り組みについては濃淡がある。米国は景気刺激策や金融緩和に踏み切っており、打てる手は打った。一方で、欧州や日本ではまだ財政政策や金融政策でテコ入れをしておらず、今後減速していく可能性もある。
G7声明では、短期的な景気の減速が強調されていることから、株式市場にはマイナスの影響があると思う。リスク回避の観点から、円やスイスフラン、場合によってはドルが買われる展開を予想している。ドル/円に関しては、106―108円のレンジではないか。足元で大きく変動したが、それが収まる感じはしない。ユーロ圏でサブプライム問題などへの対策が打ち出されていないことなどから、ユーロは売られやすいと見ている。
<新光証券・エクイティストラテジスト 瀬川剛氏>
G7共同声明には目新しい内容は盛り込まれず、サプライズはない。株式市場がすぐに前向きな反応を示すのは難しいだろう。ただ、金融機関に損失確定と開示を求め、資本増強を促していることから、金融機関に対する今後の各国の具体的な取り組みが、事後的に株式市場を動かすことはありうる。
表立っては金融機関に対する米国の公的資金注入の可能性を示唆するような内容はなかったが、水面下では公的資金の活用を含めて踏み込んだ議論があっただろう。金融機関の財務状況次第では、公的資金という選択肢もまだ残っているとみている。「個別あるいは協調して適切な行動を取る」という表現には具体性が欠け、つまりは何も言っていないようにもみえるが、国際会議では、表に出てくるものは抽象的な内容にならざるを得ない面がある。環境の厳しさを認めたG7各国の今後の取り組み姿勢を確認したという意味はあるのではないか。G7の対応が手詰まりに陥っているというわけではないと考えている。
<コスモ証券・エクイティ部副部長 清水三津雄氏>
最近、形式的な会合色が強まりつつあるG7で、かつてのように何か具体策が出てくるとは市場は期待していなかったため、特に失望ということはないだろう。
サブプライム問題や原油価格の高騰に対して問題意識を共有したことは一定の評価を与えていい。声明で個別あるいは協調して適切な行動を取ることを明記しており、今後、問題が深刻化すれば各国とも対応策を打ってくると期待していいだろう。
今回のG7が為替や株式市場に与える影響は限定的で、市場の目は経済指標に移っていくとみている。
<東短リサーチ・チーフエコノミスト 加藤出氏>
額賀福志郎財務相が対策は各国の事情にあったものを打ち出すことが重要と指摘していたように、G7声明で、各国の協調政策について、踏み込んだ内容が出なかった。サブプライム問題による傷の深さが、各国で違うことが影響しているのだろう。
しかし、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁が7日に行われた理事会後の会見で、今後の利下げを示唆。ECBが4月もしくは5月にも利下げに踏み切る可能性が出てきた。各国が決して違う方向を見ているわけではない。世界の金融・財政当局のトップが問題意識を共有して議論することに意義があったのだろう。マーケットでG7に対して強い失望感が出ることもないだろう。
世界経済におけるG7のウエートが徐々に低下している。結局、欧米金融機関の資本増強やクレジット市場への新マネー流入は、新興国やオイル産油国頼み。そのためにも金融機関のディスクローズを進めて、そうしたマネーが流入しやすい環境を整備することが必要なのだろう。10年前のG7では、日本のリセッション・金融システム懸念が世界経済のリスクとされた。日本経済が世界をリードするほど強くないのは事実だが、10年を経て日本と欧米の立場が逆転したのは象徴的だ。
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