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コラム:ナショナリストに共通する「ごちゃまぜ経済政策」
2017年5月6日 / 00:36 / 4ヶ月前

コラム:ナショナリストに共通する「ごちゃまぜ経済政策」

 4月26日、現代経済は、主要な政治的イデオロギーすべての信用を失墜させてきた。この不都合な真実を見出しつつあるのが、新たに台頭しているナショナリストたちだ。写真はトランプ米大統領。18日、ウィスコンシン州で撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

[ロンドン 26日 ロイター Breakingviews] - 現代経済は、主要な政治的イデオロギーすべての信用を失墜させてきた。この不都合な真実を見出しつつあるのが、新たに台頭しているナショナリストたちだ。

経済政策の欠陥が最も顕著なのは中道左派政党だ。「大きな福祉国家」を構築し、労働者階級をマイホームを持つ中産階級へと変化させていくという彼らの伝統的な目標は、おおむね実現してしまった。そのため、掲げるべき経済政策を失った状態に陥っている。

かつての支持者たちは、今やほとんどが十分な保護を受けて裕福になり、中道左派政党から離れてしまった。その証拠が、フランス大統領選の第1回投票におけるフランス社会党の惨憺(さんたん)たる成績だ。これに先立って、米国、オランダ、スペイン、イタリアでも中道左派が似たような屈辱を味わっており、英国にもその兆候が迫っている。

極左派も経済という点では進むべき方向を見失っている。民主的に選ばれた国家指導者には、国家による資産収用と政府による完全管理というキューバやベネズエラ式の実験を模倣したいという願望はない。

だからこそ、かつては過激だったギリシャの急進左派連合(シリザ)も、2015年から政権運営に当たるなかで、債権者や貿易相手国に譲歩することが自国経済を救うための一番マシな方法であると判断するに至ったのである。イタリアで反主流を掲げる「五つ星運動」も、ひとたび権力を握れば、ほぼ確実に過激さをトーンダウンさせるだろう。

熱烈なナショナリズム政党も、やはり同じような当惑に直面している。

もっとも、彼らのイデオロギーが経済中心であったことは一度もなかった。というより、彼らの経済政策は支離滅裂だった。たとえば過去、ベニート・ムッソリーニが率いたイタリアのファシスト党は、自由市場の賛同からコーポラティズム(協調組合主義、基本的には労働者と投資家のあいだの権力共有)の推進へとさまよい、最終的には経済の大半を完全に国家統制下に置くに至った。

今日のナショナリストの政党も、少なくともこれと同じ程度に一貫性を欠いている。フランス大統領選で新中道派のエマニュエル・マクロン氏と争う極右政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン氏は、外国企業に対する差別的な措置と、欧州統一通貨からの離脱を提案している。これが優れたアイデアであると考えるエコノミストは皆無に近い。

逆に、英閣僚も含め、ブレグジット(英国の欧州連合離脱)を熱心に支持する人々は、独自の貿易協定を交渉する自由を得ることは英国の利益になると主張することが多い。だが、貿易専門家のほとんどは、英国がこれまで以上に繁栄できるか疑わしいと見ている。

トランプ米大統領はブレグジットを応援しているが、彼自身は経済ナショナリズムを奉じる保護主義の立場だ。少なくとも、選挙運動においてはそのように主張していた。大

統領就任後は、以前からの貿易紛争をいくつか受け継いではいるものの、選挙中の最も過激な公約の多くを撤回してしまった。その理由として最も有力なのは、彼の側近たちが、現行の貿易協定を悪くないものだと考えているからだろう。

政府の適正な規模と役割という点についても、トランプ大統領はやはり混乱しているように見える。劇的な減税を計画しつつ政府出資による医療保険制度から撤退するというのは、衰退する産業を支援したいという彼の願望とは両立しにくい。

トランプ大統領の経済政策に一貫性が見られないのは、ひとえに彼の思考が混乱しているからだとばかりは言い切れない。

政府の適正な規模という点では、世界各国のナショナリストたちの見解は、リバタリアンから超干渉主義まで、あるいは財政保守主義から極端なケインズ主義まで、さらには大企業中心主義から中小企業復興重視に至るまで、まことに多岐にわたっている。

経済という主題において、ナショナリストに共通する点が1つある。「自国最優先」ということだ。ナショナリズム政党の指導者たちは、直感的に、グローバリゼーションの動きと他国のライバルによって経済主権が縮小していると感じている。国内産業は弱体化し、流入する外国人労働者が多すぎて、あまりにも多くの本来の市民が、力を失い貧困化している。

しかし、その直感は間違っている。極左政党が悟ったように、現実には、今日の経済はあまりにもうまく機能しており、革命的な変革を正当化するなど、到底不可能なほどだ。貿易障壁の引き下げと、統合されたグローバルなサプライチェーンは、ナショナリストが提示するどんな代替案よりも、はるかに効果的なのだ。

もちろん、現在のシステムも完璧とは程遠い。貧困国のなかには、保護主義を強化する方がプラスになる国もあるだろう。知的財産権が不当に大きな利益を生んでいる場合も多い。金融資本が制限なく国境を越えて移動することにより、大混乱が生じることもある。

しかし全体としてみれば、グローバルなつながりは、貧困国にも富裕国にも同じように富の増大をもたらしている。グローバル経済はより効率的に財とサービスを生み出し、雇用とスキルをマッチさせ、輸送技術や通信技術の進歩による成果を活用している。

社会的な影響を考慮に入れても、結論は変わらない。現在のシステムは昔ながらの仕事を破壊し、貧困層にとって不公平であり、コミュニティに打撃を与え、倫理的な価値観を損なうかもしれない。だが、もっとナショナリスト的な代替案を持ってきたところで、不利な境遇にある人々の状況が多少なりとも改善されるとは限らない。

経済的に自国を最優先するための最善の方法は、グローバルな協力や調整を拡大する流れを持続させることだ。ナショナリストたちはこの事実に満足できないかもしれない。しかし、値段は高いのに洗練さに欠ける製品に「国内産」の表示をつけたとしても、生活水準を下げてしまっては選挙には勝てない。

経済については、ナショナリスト政党はイデオロギーと現実のどちらかを選ばなければならない。孤立主義を掲げてもいいが、権力とは無縁のままで終わるか、それともあっというまに権力を失ってしまう。

あるいは、偽善的な態度を取ることもできる。激烈な語り口で「経済主権」という名の偶像を祭り上げておいて、その一方で、国際的な基準を受け入れ、グローバルな商取引を支持するのだ。

後者の選択が増えることを期待したいものだ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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