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焦点:企業の内部留保が過去最高、給与に回らず春闘も期待薄
2017年3月9日 / 03:11 / 7ヶ月前

焦点:企業の内部留保が過去最高、給与に回らず春闘も期待薄

 3月9日、企業の利益剰余金の蓄積である内部留保が、2016年末に過去最高の375兆円に達した。10年前の水準から135兆円増加したが、企業は人手不足にもかかわらず、利益を人件費に回すことはなく、16年末の労働分配率は43%台と過去最低水準だ。写真は都内で昨年2月撮影(2017年 ロイター/Thomas Peter)

[東京 9日 ロイター] - 企業の利益剰余金の蓄積である内部留保が、2016年末に過去最高の375兆円に達した。10年前の水準から135兆円増加したが、企業は人手不足にもかかわらず、利益を人件費に回すことはなく、16年末の労働分配率は43%台と過去最低水準だ。

今年の春闘も賃上げに消極的な企業が多く、人手不足に伴う給与増はパート社員に限定されそうで、政府・日銀が期待する所得増を起点にした景気拡大は雲行きが怪しくなっている。

<高収益と積み上がる内部留保、労働分配率は低水準>

今月1日に発表された財務省の法人企業統計によると、昨年10─12月期の経常利益は過去最高。利益剰余金の年末残高も375兆円と過去最高水準を更新した。残高は10年前の06年末から135兆円増加している。

こうした状況を踏まえると、企業がベースアップを実施できる環境は、少なくとも財務面では十分整っていると言える。

しかし、人件費への分配は盛り上がりに欠けている。売上高に占める人件費の比率は、7─9月期の13.3%から13.1%に低下。過去10年間の四半期平均12.8%と比べてもわずかな上昇にとどまっている。

SMBC日興証券によると、大企業の付加価値に占める労働分配率は10─12月期に43.7%。過去30年間で最低だった07年1─3月期の43.4%と並ぶ低い水準だ。

企業の慎重姿勢は、今年の春闘でも色濃く出ている。経団連は、今年の春闘で「年収ベースの賃上げ」を掲げ、ベアに消極的なスタンスを鮮明にした。ベアを実施しようとする企業の割合も23.7%にとどまり、16年の30.1%、15年の35.7%と比べ、明らかに低下している(労務行政研究所の調査)。

今春闘の労使交渉でトヨタ自動車(7203.T)と日産自動車(7201.T)は、今年もベアを実施する方針を固めたと報道されているが、そもそもトヨタの組合側の要求が昨年と同額の「3000円」にとどまっており、賃上げ幅が昨年を上回ることは難しい。

日本総研チーフエコノミスト・山田久氏は、今年の春闘について、トランプ政権誕生に伴う先行き不透明感や、働き方改革による非正規労働者の処遇改善、長時間労働是正による労働投入量減少が重しとなり「正社員の賃上げは、抑制方向の要因が多い」と指摘する。 

他方、被雇用者側からみれば、今年は働き方改革がかえって所得減につながるケースが生じる可能性もある。

第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は「長時間労働を是正すれば、総労働時間が減って、家計所得も落ちる」と予想する。毎月勤労統計によると、大企業では給与総額の1割程度を残業代が占めており、残業代の減少を別の対応で補うなどの企業の配慮がなければ、所得や消費にマイナスの影響が出る可能性もある。

政府内では、30─40代の正社員の収入が伸び悩んでいることに注目し「長時間労働是正が、かえって働き手にマイナスになりかねない」との声がある。企業には事実上の賃下げにならないよう、残業代減少分を賃金や子育て手当てに回すよう求めている。

だが、今年の春闘で長時間労働是正に伴う所得減への対応は労組の要求にも含まれていない。「残業代で生活費を補っているケースもあるが、労組として残業分を賃金に反映させるという要求は、給与水準の底上げの考え方になじまない」(JAM:ものづくり産業労組)という意見も根強い。

残業を前提にした賃金総額の考え方に対し、労組の抵抗感は予想以上に強そうだ。

<格差は縮小、中堅フルタイム社員にしわ寄せ>

他方、人手不足を反映して賃上上昇が続いているのが、中小企業労働者とパートタイマーだ。

中小企業では人手不足感が強い分、人件費は上昇。法人企業統計でみると、資本金1億円未満の中小企業は、16年10─12月期に3年前より雇用者数が3%減少したが、人件費は2.5%増加。大企業では同期間に人員、人件費ともに1%未満の増加率にとどまっており、中小企業の方が1人当たり人件費増加率が高い。

パートの時給も前年比1%以下だった3年前と比べると、16年中に前年比2%前後の伸びが続き、正社員の賃上げ率(定期昇給とベア合計)とほぼ並ぶまでに上昇した。

一方で給与水準が相対的に高いフルタイム正社員の賃上げは「春闘を経由する必要がある。その春闘で労働組合は多くを要求せず、経営者側も慎重。今年は多くを望めない」(SMBC日興証券・チーフマーケットエコノミスト・丸山義正氏)という状況だ。

政府高官の1人は「所得が将来にわたり恒常的に増加すると認識しないと、個人消費は伸びない」と指摘する。その意味でも春闘では基本給増加がきちんと確保でき、初めて安倍政権の目指す好循環につなげることが可能になると述べている。

*見出しを修正しました。

中川泉 編集:田巻一彦

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