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コラム:低金利は通貨安招かず、「ユーロ過剰」説の誤り
2017年7月7日 / 04:48 / 2ヶ月前

コラム:低金利は通貨安招かず、「ユーロ過剰」説の誤り

 7月6日、市場の常識では、金利が上昇するとその国の為替相場は上がり、金利が下がると為替も下がる。しかし最近のユーロ高や、円とスイスフランの歴史的な動きを見る限り、事はそう単純ではない。ポーランドで6月撮影(2017年 ロイター/Kacper Pempel)

[ロンドン 6日 ロイター] - 市場の常識では、金利が上昇するとその国の為替相場は上がり、金利が下がると為替も下がる。しかし最近のユーロ高や、円とスイスフランの歴史的な動きを見る限り、事はそう単純ではない。

ユーロが誕生した1999年以来で見ると、世界の主要10通貨(G10)のうち最強はスイスフランだったが、この間のスイスの平均金利は下から2番目だ。

この17年間の平均金利が最低だったのは日本だが、そのことは円相場をさほど圧迫していない。円は「キャリートレード」の調達通貨としてすっかりお馴染みになったにもかかわらず、相場はこの間、10通貨のうち3通貨をアウトパフォームし、ドルとユーロには負けているがその差は非常に小さい。

ユーロはというと、先週に対ドルで1年ぶりの高値を付けた。欧州中央銀行(ECB)の超金融緩和策とマイナス金利政策にもかかわらず、ユーロは底堅さを示し、一大勢力だったユーロ弱気派が降参した。その筆頭がドイツ銀行だ。

ドイツ銀は2014年10月、ECBが利回りを押し下げ、巨額の経常黒字が海外に流れ出し、ユーロを急落させるシナリオを「ユーログラット(ユーロ過剰)」と名付けた。「金融市場史でまれに見る大規模な資金流出」が起こるはずだった。

しばらくはその通りになり、その5カ月前まで1ユーロ=1.40ドル前後だったユーロは翌年3月には1.05ドルまで下落。1ユーロ=1ドルを割り込んでさらに下げるのは時間の問題に見えた。

ところが、そうは問屋がおろさなかった。ユーロの実効レートは下げ止まり、15年初めには売りポジションも飽和状態となった。ユーロは先週1.15ドルに達し、ドイツ銀行は1ユーロ=1ドル割れの予想を撤回した。

ドイツ銀のジョージ・サラベロス氏は「ユーログラット」について、為替相場についてというよりは、近年のユーロ圏の国際収支を描写したものだと説明。ユーロがある時点で下げ止まったのは、米金利の大幅な上昇や減税といったドル高要因が実現しなかったことによる部分が大きい、と解説した。

<長期的な為替の決定要因>

しかし、低インフレ、低金利、多額の黒字など、近年のユーロ圏に特徴的な環境は往々にして、為替相場の下落ではなく上昇をもたらす。

構造的に低インフレや国際収支の黒字、高い国内貯蓄を抱える国々は高金利を必要としない。長い目で見れば、為替レートを決定するのはインフレと資本フローであり、短期的な金利差ではない。

ユーロ誕生以来、G10通貨のうちで最強はスイスフラン、最弱はポンドだ。この間、スイスのインフレ率は平均0.49%、金利は平均0.90%なのに対し、英国は1.98%と2.81%だった。

スイスフランの広義名目実効レートは過去17年半で49%上昇。スイスの経常収支は1980年以降ずっと黒字で、構造的にフランを支えている。国内総生産(GDP)に対する黒字比率は99年以来、平均10%前後だ。

証券投資の収支が相当規模で流出超過とならない限り、フランに対するこのような根強い需要は凌駕できない。

日本の経常収支も1980年からずっと黒字で、対GDP比率は平均2%前後。この間、日本の金利は平均0.17%、インフレ率の平均はぴったりゼロとなっている。

円の広義名目実効レートは99年以来、5%の上昇にとどまっているが、スウェーデンやノルウェーの通貨よりは強い。両国の平均金利はそれぞれ1.96%と3.15%だ。

日本とスイスの政策当局は長年、先進国きっての緩和的な金融政策を通じ、通貨を押し下げようと励んできた。しかし長期的なファンダメンタルズの力を見ると、そんなに簡単なものではなさそうだ。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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