Reuters logo
コラム:揺れる欧州の不運、盟友国に「気まぐれトランプ氏」
2017年3月23日 / 05:18 / 7ヶ月後

コラム:揺れる欧州の不運、盟友国に「気まぐれトランプ氏」

[20日 ロイター] - トランプ大統領とメルケル首相の初顔合わせとなった米独首脳会談は、悪天候のため予定より3日遅れて17日に開催された。政治的、倫理的、そして人格的にも極端に対照的な両首脳の会談は、天候同様に険悪なものになり得た。

 3月20日、トランプ大統領(写真右)とメルケル首相の初顔合わせとなった米独首脳会談は、悪天候のため予定より3日遅れて17日に開催された。政治的、倫理的、そして人格的にも極端に対照的な両首脳の会談は、天候同様に険悪なものになり得た。写真は17日、ワシントンでの会談後、共同記者会見に臨む米独首脳(2017年 ロイター/Joshua_roberts)

だが、冷淡な空気の漂う共同記者会見の様子からすると、感情的な爆発は抑えられたようだ。ともに世界で最も大きな政治的権力を持つ男性と女性の間で行われた会合の詳細が、調査報道によって再現されることを願いたいものだ。

共同記者会見の席上でトランプ大統領は、両首脳がオバマ前政権による盗聴行為の犠牲者仲間だという演出をぎこちなく試みたが(メルケル首相の携帯電話は米国家安全保障局により盗聴されていた)、メルケル氏は戸惑った表情を浮かべただけだった。そこには、仲間意識は微塵も感じられなかった。

トランプ大統領は場当たり的な人物だ。彼が抱く今日の愛は、明日の裏切りだ。大統領就任後、初の海外首脳として迎えたメイ英国首相に対して「特別な関係」を連発したトランプ大統領だったが、その後、大統領候補だった自身の電話を盗聴する際にオバマ氏が英政府通信本部(GCHQ、米国の国家安全保障局に相当する)の助けを借りたとの言いがかりをつけた。

トランプ大統領は、GCHQの関与についてはフォックスニュースに出演したゲストの発言を引用しただけだと述べている。右派として知られる同局は、その後この関与についての告発から距離を置いている。

だが、トランプ大統領が他の危機へと取り組んでいく一方で、英国の情報機関関係者にとってこの件は重大な意味を持っている。米国の治安当局との緊密な協力は彼らにとって必要不可欠だが、規模に劣るパートナーであるだけに、軽視されることには神経を尖らせている。トランプ大統領の主張に対する抗議のなかで、GCHQは(通常では使わない)「馬鹿げている」「ナンセンス」という2つの言葉を使った。彼らの憤りの深刻さを物語っている。

今回の対立は米英両国の亀裂を示すものとされているが、事情はもっと複雑であり、トランプ大統領時代が続くうちに、その複雑さはさらに深まっていく可能性が高い。米国の情報機関は、英国の持つネットワークを本当に重視している。そのなかには、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドといった英語圏諸国の組織との情報共有が含まれており、米英を含めたいわゆる「5つの目」を構成している。

本人以外は誰も信じていないことの裏付けを取るよう汚れ仕事を押しつけてくるトランプ大統領に、憲法上、仕えなければならない米情報コミュニティのいら立ちが、最近の報道からも伝わってくる。

トランプ大統領は彼自身の基準に従って、あるいは親密なアドバイザーの基準に従って行動している。それは制度や関係が、驚くほど大統領の気分に左右されるということであり、「米国第一」の旗印に合うようなインフラや政策の提供に向けて突進するということである。

トランプ支持者は欧州のナショナリストたちを仲間だと思っている。少なくとも、彼ら同様、各国の愛国精神の追求に熱心だと思っており、それはロシアのプーチン大統領とも共通する視点だ。

だが先週のオランダ下院選挙におけるヘルト・ウィルダース氏率いる極右政党「自由党」の敗北は、たとえ移民に反対しており、イスラム主義者による攻撃を恐れているとしても、大半の欧州市民が超えようとはしない一線を示しているのかもしれない。モロッコ出身の移民について懸念しているかもしれないが、それでもウィルダース党首のように彼らを「人間のクズ」と呼ぼうなどとは思わないものなのだ。

今回の勝利は、オランダという小さな国が過去数十年のあいだに実現した最も重要な選挙結果となる。これによって、欧州全域に限らず、主流派に属する各国の政治家は、ほっと安堵のため息をついた。

先日のオーストリア大統領選で敗北したポピュリスト的なナショナリズムは、軽蔑していたオランダ中道政党を倒すこともできなかった。何といっても、ロッテルダムはロンドンと同様、ムスリムの市長を擁しているのだ。

トランプ大統領は欧州で人気を博するまでには至っていない。

 3月20日、トランプ大統領とメルケル首相(写真左)の初顔合わせとなった米独首脳会談は、悪天候のため予定より3日遅れて17日に開催された。政治的、倫理的、そして人格的にも極端に対照的な両首脳の会談は、天候同様に険悪なものになり得た。写真は17日、ワシントンでの首脳会談後、共同記者会見に臨む米独首脳(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

オランダのニュース番組「Sunday with Lubach」での愉快なエピソードのなかで、「神が創造した最高の脱税システム」をオランダの魅力の1つとしてトランプ氏に紹介するなど、同氏は常に風刺されている。右派ナショナリスト政党はトランプ氏を好み、何百万人もの支持者を抱え、世論調査でリードすることも多いが、それでも彼らは多数派ではない。

現在、最も権力の座に近いと思われる欧州のナショナリストは、自分の地域や国をEUから、あるいは少なくとも統一通貨ユーロから離脱させたいと考えている人々ではない。それは、ある地域(彼らに言わせれば「国」なのだが)を本国から分離独立させようとしている政党だ。

その最たるものがスコットランド国民党である。彼らは「超リベラル」「超欧州主義」と見られたがっており、あらゆる種類の移民を歓迎している。英スコットランド自治政府のスタージョン首相によれば、移民は「スコットランドで暮らすことを希望するという、われわれに名誉を与える存在」なのである。

スペインのカタルーニャ地方のナショナリストも、同じようなアプローチをとっている。彼らにとってナショナリズムとは、旧来の「国家」の悪い部分をすべて捨て去る方法なのだ。

依然としてEUで有力な勢力は、基本的な立ち位置として、リベラルな国際主義と全般的に平和主義的な視点を掲げている。彼らは、加盟国のいっそう緊密な統合が唯一の道だと考えている。それは欧州委員会のユンケル委員長が堅持する立場だ。だが、ユンケル委員長などのEU幹部は、これまでのところ、その面ではあまり成果を挙げていない。

EUは崩壊していないし、近い将来そうなる可能性も低い。ほとんどの国では福祉や医療制度に負担がかかっているが、それでも十分機能している。世界的な基準に比べれば、所得も全般的に高い。社会の偉大な麻薬である娯楽は今や多様化しており、過去のどの時期と比べても、より刺激的で、自由に入手可能だ。暴力的な抗議行動はめったにない。

とはいえ、こうした状況が変化する可能性はある。

いくつかの大国、特にイタリアとスペインでは、特に若年層を中心とする失業率が、ここ数カ月わずかに下がったとはいえ、依然として非常に高い。若者の実に3分の1以上が仕事を見つけられず、反抗勢力の潜在的な予備軍になっている。ギリシャでは若者の失業率が約45%に上り、一時は60%にも達していた。

今週末、EUの基礎となったローマ条約の締結60周年を祝うため、欧州27カ国の首脳が集まる。英国のメイ首相は欠席する予定だ。出席する意味がないと考えている。首脳たちはEUの未来を思い描こうとしているが、英国はその未来には含まれていないのだから。

ローマで27カ国の首脳が祝福する伝統は、素晴らしいものだ。かつてはいがみ合っていた諸国間の協力、旧共産圏諸国のEUへの包摂、貧困地域への支援、そして大学や非政府組織、企業、政党、各国政府のあいだで形成された数千もの新たな協力関係。さらには欧州各国・諸国民のあいだの差異と類似性についての理解の深まりなどが挙げられる。

だがその伝統は、EUを袋小路に追い込んでいる遺物でもある。極右は敗北に苦しんでいるが、EU全域に及ぶ彼らの数百万もの支持者は消滅しないだろう。

国民国家から権力を奪うのではなく、それを返していくような方向で、ナショナリストのバブルをはじけさせるような、思い切った変化が必要だ。容易なことではない。このような状況下において、EUがどうなろうと気にしない人物が「一番の友好国」の指導者とは、何という最悪の巡り合わせだろうか。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below