国債先物が大幅下落、くすぶる財政悪化懸念
[東京 4日 ロイター] 4日の東京市場では、円債市場での国債先物の大幅下落が目を引いている。一部海外勢の売りなどテクニカルな要因のウエートが大きいという見方が出ている一方で、財政再建路線を棚上げしつつある麻生太郎内閣の下での財政悪化懸念もくすぶり出した。
米欧の長期金利が低下傾向を鮮明にする中で、日本の長期金利に別の動きが出てくるのか、政治情勢も大きく影響しそうだ。
<意識される加速度的財政の拡張>
午前の円債市場で、国債先物中心限月12月限は前日比63銭安の138円94銭と大きく続落した。財政拡大への懸念が、高値警戒感やテクニカル要因から売られやすかった地合いを後押し。海外勢の利益確定の売りや限月交代に絡んだ売りが重なって下げが加速した。中心限月12月限は一時、同68銭安の138円89銭まで下げ幅を広げた。現物市場ではフラット化を修正する動きが継続。長期金利は前日比3bp高い1.410%と11月25日以来の水準に上昇した。
トヨタアセットマネジメント・チーフファンドマネージャーの深代潤氏は「財政の拡大傾向が現実味を帯びていることへの警戒感が強まり始めている」と指摘する。「政府がどこまで具体的な景気対策を考えているのか、どの程度の規模まで財政が膨らむのかはまだ不透明だが、当初は回避する方向だった赤字国債の発行は避けられない状況のようだ。金融危機以降の経済指標から見ても景気はどんどん悪化しており、景気の側面からも財政拡大への圧力がかかる。債券市場では、加速度的に財政が拡大していくリスクを意識せざるを得なくなっている」と述べる。
実際、政府は3日に決めた09年度予算編成の基本方針の中で、概算要求基準(シーリング)について前年度までの「堅持」から「維持」に表現を後退させ、さらに与党内では、シーリングとは別枠で公共事業や社会保障などの予算を増額するべきだ、との声が高まっている。
だが、別枠予算を編成する場合、その財源に明確なメドがたっているわけではなく、政府・与党内では建設国債の発行が取りざたされている。市場では、一部で報道された3年間で10兆円の別枠予算を編成すれば「小泉純一郎内閣から継続してきた財政再建路線が、明確に転換されたとみなされるだろう」(外資系証券の関係者)との声が漏れる。
<米長期金利利回り、55年以降では最低水準に>
ただ、市場関係者の中には「証券各社から国債発行計画の予想が出てきている。予想の範囲であれば大きく売られることもない。景気悪化やデフレ懸念、信用リスクの拡大などで金利が上がる環境でない。歳出拡大圧力に対する警戒感が出ているが、今ひとつピンとこない」(DIAMアセットマネジメント・エグゼクティブファンドマネジャー、山崎信人氏)との指摘も出ている。
米債市場では、今月1日にバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が長期国債の買い入れの可能性に言及して以来、長期国債利回り低下(価格上昇)が顕著になり、3日には10年米国債利回りが1955年以降では最低水準となる2.6602%で取引を終えた。こうした動きの中で、日本国債だけが売られ続けることは「通常ならないはず」(邦銀関係者)だが、先の外資系証券の関係者は「麻生首相が小泉政権以来の財政再建路線を放棄するのかどうか、海外勢は注目している。仮に歯止めなき路線への変更が明らかになれば、日本国債だけが売られることもありえる」とみている。
予算編成作業をめぐっては、政権に批判的な記事が多い朝日新聞だけでなく、4日付の読売新聞朝刊も3面で「迷走政権、司令塔不在」と指摘した。与党内にも予算編成作業が順調に進むのか、危ぶむ声が出てきており、公共事業や社会保障関連の歳出をめぐる取り扱いの行方に関心が集まっている。
<GLOBEX見合いで午後に軟調な株価>
一方、株式市場では、午後になって日経平均が前日比マイナスに沈んだ。GLOBEX(シカゴの24時間金融先物取引システム)のS&P500など米株先物が弱含みんだことなどをきっかけに、前場買いを入れていた短期筋が売りに転じているという。
市場では「米株上昇だけが買い材料だっただけに米株先物が弱含むと一転売りが優勢になった。15日発表の12月日銀短観が相当ひどい内容になりそうだとの見方が強まっており、国内株は上値が重い状況が続いている」(国内証券投資情報部)との声が出ている。
午前の取引でも、米株高を受けて買いが先行したものの、世界経済後退への強い懸念が上値を抑えたとの見方が相次いだ。3日に米国で発表された経済統計が軒並み景気の悪化を示す内容だったことに加え、国内でも財務省が朝方発表した7─9月期法人企業統計で、設備投資額が全産業で前年比13.0%減と事前予想を下回り、一段の景気悪化懸念につながった。「米ビッグスリー問題をはじめ、依然として環境面で不透明感が強い。売り注文が減る局面ではあっても、全般は見送りムードだ」(大和証券SMBCグローバル・プロダクト企画部次長の西村由美氏)という。
また、「海外勢からの散発的な売りに上値を抑えられている。低価格志向の小売業などの生活防衛関連株や電力、紙パルプなどの円高メリット関連が買われているが、指数を押し上げる力はなく方向感が出ない」(コスモ証券エクイティ部次長の中島肇氏)との声も出ていた。
株式市場は各国で相次いで打ち出された金融安定化策や景気対策と、悪化する実体経済の綱引きが続いている。ガソリン価格の大幅下落を背景に、米クリスマス商戦の大幅な落ち込みは回避できるとの見方もあるが、楽観論は少数派だ。
住信アセットマネジメント執行役員・株式運用部長の三澤淳一氏は「国内株は外部要因次第の様相を一段と強めているが、米国を中心にファンダメンタルズに底打ちにはほど遠い状態。金融についてはなんとか先行きの見通しがたってきたとみているが、実体経済については消費の回復など時期のメドがたたない」と指摘する。三澤氏は「各国政府は景気対策としての財政出動の姿勢を鮮明に示しており、株価の下支え要因となるだろう。当面は、実体経済の悪化織り込みと政策への期待感との間でのせめぎ合いが続く。ただ、今週については、11月の米雇用統計の見極めで、下値圏でのもみあいとなり、方向感が出づらい」と話している。
(ロイター日本語ニュース 田巻 一彦;編集 吉瀬邦彦 )
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