COLUMN-〔インサイト〕存在感増す金ETF、08年に日本でも上場か=Mストラテジィ・亀井氏

2007年 12月 14日 13:33 JST
 
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 米欧金融市場での信用収縮に収まる気配がみられない環境の下で、「信用リスク」の高まりがドル建て金価格の800ドル台という高値圏での推移をサポートしている。金市場では12月に入って再び金ETF(上場投信)を経由した資金流入が見られ始めた。株式市場などに流れていた資金が「質への逃避」ということで米国債に流れ、その際に一部が金市場にシフトしているとみられる。米連邦準備理事会(FRB)による一連の緩和政策により、将来的にさらにドル安が進むといった見通しが強まったことも、ドル安ヘッジという要素が加味され金価格押し上げの支援要因になっている。

 

 <残高1000トンが視野に入った金ETF>

 

 11月7日に本コラムに寄稿した際には、新規参入組のファンドの動向に焦点を当てたが、2007年9月以降の金価格急騰のきっかけを作ったのが欧米の年金基金とみられる金ETFへの資金投入だった。

 各国証券取引所に上場されている主な金ETFは、Sreettracks Gold Shares(NY証券取引所、シンガポール取引所) 、Gold Bullion Securities(ロンドン証券取引所、オーストラリア証券取引所、ユーロネクスト・パリ、ドイツ取引所)、 New Gold Debentures(ヨハネスブルク証券取引所) 、Comex Gold Trust(アメリカン証券取引所)の4銘柄となっている。

 その残高は2007年12月12日時点で802.64トンと過去最高となっている。これだけの量の金地金が過去4年足らずの間に、市場から物理的に吸い上げられ運用資産に組み入れられた。欧米の年金といえば米国最大の年金基金カルパース(カリフォルニア州公務員退職年金基金)が注目されるが、先駆的運用で知られるこの年金は、07年に商品市場での資金運用を本格化させ08年はその比率を上げると見られている。金市場でもその動向が金ETFに関連して常に注目されてきた。

 

 年金は一般に1月と7月に運用資産の組み換えを行うところが多いとされ、前年度中に決めた組み入れ比率に従って、年度初めの年始早々にもETFを介した買いが見られるのではないか、との期待が金市場では生まれがちだ。

 実際、2006年1月から2月にかけて金価格の急騰が見られたが、この時は1カ月で80.98トン分のETF資産が増加。年度替わりの年金による資産組み替えに伴う新規買いとみられた。したがってそうした期待を希望的観測と一蹴できないのも事実である。ちなみに2007年の場合は2月に39.49トンという実績が残っている。

 

 このような経過から2008年の金市場を考える上でやはり金ETFの動向からは目が離せない。このところ年間200トンのペース残高を増やしており、2008年も同様のペースが続くと見られ、金ETF資産残高1000トンが視野に入って来ているのが現状だ。

 冒頭で「質への逃避」としたが、サブプライム問題はいわばグローバル化とIT化で拡大に拍車がかかったデリバティブ金融のバブルが弾けたという要素が色濃く、信用のひっ迫状態が落ち着くには相応の時間がかかることになる。機関投資家の間では「信用リスク」フリーの商品として金の裏付けのあるETFへの需要は続くと見られるからだ。

 <金ETF投資家層の拡大>

 

 ここにきてETFの投資家のすそ野が広がってきているようだ。日本国内でも金鉱株ファンドの運用で知られるブラック・ロック(2007年メリルリンチ・インベストメント・マネジャーズと経営統合)が、NY証取上場の金ETF(Sreettracks Gold Shares)を7─9月期に大量取得したことが判明している。今後は「金ETFの購入=年金基金の買い」という構図は必ずしも当てはまらないケースも出てくるだろう。

 考えてみればこれも当然の成り行きで、金価格の上昇で世界的に個人を含め投資家の金投資への関心が高まっており、金鉱株ファンドへの資金流入も増えている。

 ところが株式市場における金鉱株の時価総額は小さく、投資対象となる主要鉱山株といっても限られるのが実情だ。したがって金ETFがその受け皿になると考えられる。足元でNY証取上場の金ETFは、単独で600トンの残高を抱え、流動性が確保されており投資家の信認も厚い。一般の投資信託でもある金鉱株ファンドにとっては、投資家の解約請求に応えるための資金プールとしての金ETFの利用もあるとみられる。そうしたことも残高増加の背景にありそうだ。

 加えて2007年年初めから金ETFへの欧米富裕層の資金流入も指摘されており、投資銀行による金ETF買いも目立っているとされる。おそらくPB(プライベート・バンキング)部門の運用も含まれているのだろう。それに伴い金ETF残高の急増急減による市場内での思惑も生まれそうだ。これからは資産規模拡大で金ETF自体が、新たな市場の価格変動材料として存在感を増すと見られる。いずれ市場で注目されている「政府系ファンド(SWF)」の介入などという思惑も生まれるのではないか。

 <金EFTの国内上場で注目される機関投資家の動向>

 

 国内でも07年11月7日に開かれた金融庁の金融審議会(首相の諮問機関)において、貴金属などコモディティを組み入れた商品も「投信およびそれに類ずるもの」として認めるための法整備を進めることで合意したとされる。

 年内に金融庁がまとめる予定の「金融・資本市場競争力強化プラン」には、「取引所の取扱商品の多様化」ということで、証券取引所での排出権取引の扱いを認めることや、資本提携などにより証券取引所と商品取引所の相互乗り入れを可能にすることに加え、商品(コモディティー)や商品先物を運用対象としたETFの充実という項目が盛り込まれる予定という。

 おそらく08年上半期の早いうちに、国内でも金現物を裏付けとする金ETFが東京証券取引所にお目見えすることになりそうだ。その際のポイントは、国内の年金基金など機関投資家がどう動くのかという点になる。

 もちろん「上場します」「待ってました」とは行かないだろう。取引の状況(流動性)を見極めながら、資金投入を検討することになるのではないか。状況によっては、この上場が国際価格の刺激剤になる可能性がありそうだ。上場自体が相応の金現物需要の拡大を意味するためだ。

 個人投資家レベルでは、既存の地金を通した投資需要との食い合いを懸念する声もあるが、金ETFの場合、金現物の引き出しの最低単位が数億円規模になると見られることから、現物を手にしたい投資家は従来どおり金地金や金貨の購入に向かうと見られる。このため国内での金現物を裏付けとするETFの登場は、投資家のすそ野を広げるという効果のほうが高いと見られる。

 亀井幸一郎 マーケット ストラテジィ インスティチュート代表 金属・貴金属アナリスト

(14日 東京)

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