COLUMN-〔インサイト〕総裁選・代表選・総選挙で問われる成長と停滞の岐路=Mスタンレー フェルドマン氏

2008年 09月 5日 13:29 JST
 
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 <短期的な混乱、複合的に悪化するリスク>

 福田康夫首相の辞任は、短期的には日本の政治と経済に混乱要因だが、長期的にはプラス要因である。短期的な混乱はもちろん避けられない。 政界は極めて不安定であり、選挙モードになった自民党はパニックに近い状況である。すでに「上げ潮派」、「増税派」、「積極財政派」という3勢力が戦っている。自民党総裁選にそれぞれの派が候補者を出すであろう。

 ただ、どの政策グループからだれが出るかは極めて不透明で、派閥関係、個人の好き嫌いといった要素も絡んでいる。自民党総裁が決まっても、しこりが残る。安倍晋三政権、福田康夫政権を殺した矛盾、すなわち自民党の政治ビジネスモデルと日本経済が必要とする政策の矛盾が残る。政策は、この前の経済対策のように、寄せ集めにならざるを得ない。

 本来ならば、野党第一党の民主党が笑っているはずだが、民主党にも全く同じ矛盾があり、全く同じような派閥関係、個人の好き嫌いといった要素も絡んでいる。民主党も政策が哲学なき寄せ集めになるであろう。

 政治と政策の混乱は、経済にも企業収益にも影を落とす。まず、企業マインドも消費者マインドも冷え込む。自民党総裁選、民主党代表選、総選挙が終わっても政策方向がはっきりしない可能性が高いので、将来に向かって投資をすることが怖くなる。従来通りの政治と政策では、消費者に不安が深まる一方で、財布のひもが緩くならない。

 加えて、商いが薄い中、経済や企業収益の不透明性が株式市場のボラティリティを上昇させる。複合効果も発生し、企業、消費者マインドがさらに悪化するであろう。

 <2大政党がともに抱える政策の対立、再編は不可避>

 2大政党が行き詰まっている結果、経済が悪化し、日本の安全保障が脅威にさらされているため、政界再編は避けられないだろう。2大政党とも分裂するしかない。再編は結局、経済哲学で決まるだろう。自民党にも民主党にも、「小さな政府」派や「大きな政府」派がいるので、両党ともに「小さな政府派」、「大きな政府派」が結集するであろう。その後の政策と経済はどうなるだろうか。

 簡単な枠組みで考えよう。GDP(国内総生産)は、労働力と労働生産性で決まる。(方程式で言うとY=[Y/L]*L。YはGDP、Lは労働力) どの政策シナリオでも、人口動向は変わらない。団塊世代の引退加速によって、労働力は毎年約0.7%低下する。となると、労働生産性がプラス0.7%以上でないとマイナス成長になる。

 大きな政府(歳出も増税も)政策は、労働力と資本の再配分を阻み、生産性の伸びを低くする。1990年代の経験を繰り返し、労働生産性(労働者1人当たりGDP)の伸びがプラス0.9%に戻ってもおかしくない。

 ただ、当時に比べて交易条件が悪化している(例えば原油高)。交易条件の悪化によって生産性の伸びがさらに0.5%悪くなってもおかしくない。最悪の計算では、中期の実質経済成長率はマイナス0.3%になりうる。

 反面、小さな政府政策では、農業、道路、法人税、社会保障制度などの分野について、改革と規制緩和を行う可能性があり、生産性の伸びを高めうる。1980年代の労働生産性の伸びは約3%であった。交易条件が改善すれば、GDPは悪影響を受けない。最良の計算では、中期の実質経済成長率はプラス2.0%を超える可能性もある。

 今回の自民党総裁選、民主党代表選、総選挙の本当の意味はここにある。年末までの政治と政策の絡み合いによって、「成長日本」か「停滞日本」かが決まる。日本の政策決定は、新陳代謝が早くなった。現時点では予断を許さないが、5年半の小泉政権を継続させた日本国民は「成長日本」を選ぶであろう。夜明け前は一番暗い。

 ロバート フェルドマン モルガンスタンレー証券 経済調査部長

 (5日 東京)

 

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