〔アングル〕グルジア紛争勃発後のロシアルーブル安は限定的、イラン問題にらみ米ロ対立は鎮静化の見方
吉池 威記者
[東京 22日 ロイター] グルジア紛争をめぐり米欧とロシアの緊張が高まる一方で、ロシアルーブルは対ドルで下げ渋っている。足元では米ロ対立観測が原油価格の上昇要因となったが、イランの核問題で両国の思惑もからみ、最終的に米ロ間の緊張は緩和する方向とみられているためだ。ロシア経済は、グルジア紛争などにより短期的に調整局面に入るとの見方もあるが、調整自体は浅いと予想されている。
米原油先物は、グルジア紛争をめぐる米ロ関係の緊張やドル安を背景に、前日海外市場で1バレル=5ドル超上昇した。原油は7月中旬に1バレル=147ドルを上回って過去最高値をつけたが、その後下落基調をたどり、今月に入って113ドルを割り込んでいた。外為市場では「原油や商品がさらに上昇するようであれば、ユーロに買い戻しが入りやすく、ユーロは再度1.5ドルを目指す展開も予想される」(外為ブローカー)との声が出ている。
ロシア国内政治を専門にしている東京財団リサーチ・フェローの畔蒜泰助氏は、グルジア紛争の背景となっている米欧とロシアの関係について、欧州連合(EU)主要国は天然ガスの供給に関連しロシアと利害関係があるため、関係を悪化させることはできないと分析。そのうえで、欧州が米ロ対立の一定の抑止力になりうるとの期待を示す。一方、米国にとって、グルジア紛争はグルジアが仕掛けたとしても、立場上ロシアの軍事侵攻を非難せざるをえないと指摘。
ロシアは6日、イラン核問題をめぐる同国への新たな国連制裁を進めるかどうかについて、国連安全保障理事会5カ国とドイツの間で合意が成立していないとの考えを示した。関係6カ国の外務省高官は、7月19日に提案したイランのウラン濃縮停止に対する見返り案にイランが明確な回答を示さなかったことを受け、6日に国連制裁について電話協議した。畔蒜氏は、国連の制裁が機能しない場合、ロシアとの関係が重要になってくるとしたうえで「米ロの舌戦は強まるかもしれないが、徐々にイラン問題で協力関係を強めていく」との見方を示す。
グルジア紛争のロシア経済への影響に関しては見方が分かれる。英資産運用会社ガートモアは、グルジア紛争のほか商品価格の下落や政府の企業経営介入などで投資先としての魅力が低下したため、ロシア市場への投資を縮小しているという。グローバル・エマージング市場担当責任者、クリス・パーマー氏はロイターに「ロシアについては、以前ほど積極的には投資していない。ポジションの一部を解消した。ロシア国内の流動性の状況も注視している」と述べた。
一方で、英資産運用会社シュローダー・インベストメント・マネージメントのエマージング株担当責任者、アラン・コンウェイ氏は、ロシア株.MCXが5月以降30%下落したことで割安感が出ていると指摘、ロシア株のオーバーウエートを継続していることを明らかにした。また、グルジア紛争については、ロシア株を売る理由にはならないとし、イスラエル・パレスチナ紛争はイスラエル株にほとんど影響を及ぼしていないと述べた。コンウェイ氏は「戦争は外交関係に大きな影響を及ぼすが、ロシア株への影響は非常に限定的だ」という。
資源大手メチェル(MTL.N: 株価, 企業情報, レポート)や英石油大手BP(BP.L: 株価, 企業情報, レポート)のロシア合弁会社TNK─BPをめぐる問題など、政府の企業経営介入に対する懸念も出ており、巨額の追徴課税で解体されたことを思い起こす投資家も少なくないという。日本貿易振興機構(JETRO)の斎藤寛氏はそうした観点から、ロシアからの一時的な資本流出の可能性を指摘している。
丸紅経済研究所シニアエコノミストの榎本裕洋氏は、ロシア株は今年5月の高値圏から大きく落ち込んでいるものの「中国もそうだが、株価の下落が消費者センチメントに与える影響は限定的」とみている。また、ロシア経済の短期的なリスクはインフレであり、景気が少し停滞する方がロシア経済にとって望ましいとの見方だ。さらに、「ロシアの大企業は海外で資金調達するケースが多いため、ロシア向け投資の減少が問題になると思えない」とし「本当に懸念すべきは、長期経済成長に寄与する対内直接投資だ。ロシアの成長を左右するのは短期資金ではなく長期の直接投資」と解説する。
東京市場では、グルジア紛争のロシア経済への影響に否定的な見解が目立つ。日本でロシアルーブル建て売出債の販売を手がける楽天証券は、グルジア紛争で目下、販売を見合わせている。しかし、「9月初旬まで様子を見て、影響が限定的と見極められれば販売を再開したい」(担当者)との方針だ。ロシアルーブルは対ドルでは24ルーブル前半で弱含む一方、対ユーロでは36ルーブル付近で強含んでいる。ある邦銀関係者は、ユーロ/ドルの値動きがルーブルに波及していると分析する。つまり「7月中旬に原油価格が反落したのを受け、ユーロ売り/ドル買いの地合いになったことを反映しているのであり、グルジア問題は関係ない」と言い切る。
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(ロイター日本語ニュース 吉池 威記者 編集 橋本浩)
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