COLUMN-〔インサイト〕レンジ相場の商品市場、一部に現物動意みえ明るい兆し=三菱商事フューチャーズ証 菅田氏
ここ1カ月の金融・商品マーケットの概況は、底値も見えてきたが上値も限定されているといったところであろう。
まず、底値が見えてきたと判断する要因としては、7─10月にかけたダウントレンドも一服し、おおむね横ばいに推移しているといった値動きの形状。数年来のアップトレンド、その後の大幅急落を経て、ようやく落ち着きどころが見えてきた。マーケットの弱い材料に対する反応が鈍くなってきている点も注目される。
世界各国の国内総生産(GDP)、住宅指標や雇用、自動車販売および生産など、いずれも強気になれる指標は皆無だが、これら指標等の発表時にマーケットは意外なほど底堅く推移した。
また、12月12日に米上院におけるビッグスリー救済法案の廃案決定が伝えられ、東京株式市場は急落。リスク回避の動きも相まって円高の進行とともに円建ての商品市場も軒並み下落したが、当の米国市場では政府による救済への期待から廃案を織り込むと底値から急速に値を戻した点からも、金融・商品マーケット全般の底堅さが見てとれる。
その背景には、各国中央銀行による利下げおよび市場への断続的な資金供給、金融機関への直接的な公的資金の注入などの政策がマーケットに浸透するとともに、「最悪期は織り込んでいる」との判断が働いたことが挙げられよう。感覚的なものと言ってしまえばそれまでだが、今後のマーケットの回復を占う上で、市場心理は極めて重要な判断材料の1つだ。
一方で上値も追い切れない状態にあるのは、マーケットが依然としてあえて積極的にリスクを取りにいく環境になっていないことが最大の要因と言える。もちろん例年、欧米のクリスマス休暇シーズンや年末に向けて市場参加者が減少し、売買もポジション整理主体となり、その結果、相場も動意の乏しい展開となる傾向にあることも上昇力を鈍らせている原因の1つだ。
しかし、全般的な流れの中において、サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題の悪化から経済情勢が大幅に悪化した本年7─9月期の経済指標や企業決算等の発表が続いていることが挙げられる。これは先に述べた「最悪期は織り込んでいるとの判断から下値が限定されている」と一見矛盾するが、「弱い指標を受けても下値が限定されている」─「買い」といった単純な図式ではなく、実際はさまざまな要因が存在する。「弱い指標を受けても下値が限定されている」─「X」─「買い」というように、Xに存在するさまざまな要因をクリアして(もしくは、それらの要因の大半が「買い」につながって)、ようやく本格的な買い意欲の向上につながる。
この「X」には、経済情勢およびその基となる各種経済統計の好転、資金流動性の回復、個別のファンダメンタルズの良化、テクニカル、それら要因を総合的に判断した結果としての投資マインド回復など、枚挙にいとまが無いが、商品市場の面からは先般の金融・商品市場の下落および低迷局面における供給サイドの変化に注目したい。
<減産と景気後退・需要減が綱引き>
まず、メジャーなところでは石油輸出国機構(OPEC)の動向である。OPECは10月24日、ウィーンで臨時総会を開き、金融危機の影響によるエネルギー需要の減退を受けた相場の下落を止めるべく、日量150万バレルの減産で合意。その後11月29日のカイロにおける臨時総会で追加減産は見送られたものの、12月17日のオランにおける臨時総会では日量220万バレルの減産で合意した。
また、世界大手天然ゴム生産国であるタイ、インドネシア、マレーシアで構成される国際ゴム公社(IRCo)は12月13日、キロ当り1.35ドル未満の価格でのゴム売却を禁止し、2009年の天然ゴム輸出量を08年の6分の1削減(約91万トン)することを決定した。これも相場下落の抑制に基づく。
これらアクティブな相場下落抑制策の一方で、金融不安による景気後退により否が応でも生産削減を行わざるを得ないパッシブなパターンもある。代表的なものとしては、世界最大手のプラチナ生産国である南アフリカでの操業停止や人員削減、拡張計画の凍結等を余儀なくされている鉱山会社が出てきている。
ただ、生産削減の動きが進んだからといって、必ずしも相場に強い影響を与えるわけではない。特に昨今の商品市場の下落は、金融不安による景気後退を受けた需要減退観測が重くのし掛かっていたことによるところが極めて強く、ここ最近の市況においても その状況に大きな変化は見られない。
いくら供給を削減しても、それを上回る需要が見込めない限り、相場上昇も見込み難い。OPEC総会において大幅減産が合意されたにもかかわらず、その後2004年以来の1バレル=30ドル台前半の安値に値を沈めたWTI原油相場の動向(期近ベース)が、その典型的なパターンだ。当然のことながら景気回復、市況の安定が見えてこない限り、需要の増加観測は高まらない。
また、商品市場はベースの経済情勢および景気見通し、資金動向等を見ながらの展開となっている側面が強く、変動要因の中に占める個別のファンダメンタルズのウエートは個人的には依然として低いと考えている。
<マーケットはなぎ、リスク取る市場環境にはなお時間>
前述したように、実体経済の弱さを示す指標が相次いでいることが現在のマーケット全般の上値を抑えているとの現状分析に基づいて、年初も最悪期を織り込む展開となった10─12月期の経済指標および企業決算に引き続き上値を圧迫される可能性がある。
数年来の上昇幅をわずか半年足らずで帳消しにしてしまった過去に例を見ない下落相場に対して、出直りに転じる以前の問題として、荒波が静まり、なぎの状態に戻るには、相応の日柄を要するであろうことも出直りには時期尚早と判断する要因の1つだ。
マーケットは ようやくなぎの状態に入り始めたといったところ。このなぎの状態の中で前述した「X」における諸要因に改善が見られるか、そして個別のファンダメンタルズに対する感応度が高まっていくか。供給面からの底打ち要因は整いつつあり、ゴールドをはじめとしたメタル市場、コーンや大豆、粗糖やコーヒー等のソフト市場、ゴム市場など、底値が見えつつある市場も散見されるが、あえて積極的にリスクを取る市場環境となるにはいまだ時間を要しそうだ。
なお、円建ての商品相場はドル安/円高の影響もあり、大幅に値を崩しているが、このような状況下で一般の方々にとって身近かなゴールドやプラチナコインおよびスモールバーを中心に引き合いが強い。現物に動きが出てきた点や、ある種の投資行動に動意が出てきていることは明るい兆しと言えよう。
三菱商事フューチャーズ証券 商品営業本部 調査チーム課長 菅田 修司
(24日 東京)
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