インタビュー:藤井財務相の為替政策、ドル・ユーロ・円に問題生じれば介入あり得る=内海元財務官
[東京 20日 ロイター] 元財務官の内海孚・日本格付研究所社長は20日、ロイターとのインタビューに応じ、ドル安がさらに進行すれば日米欧で色々な問題が生じると述べた。その上で、藤井裕久財務相の為替政策に関連し、市場が混乱し、ドル、ユーロ、円にとって問題が生じた場合には介入があり得るとの見方を示した。
インタビューの概要は以下の通り。
──ドルの下落基調は続くのか。
「今のドルの動きは、ドルの金利が日本よりも低くなったということがある。投機筋がかなりドルを売り持ちポジションにし、しかもドルを借りて、より利回りの良いコモディティや通貨に移すというキャリートレードをしている。これがそれほど長く続くとは思っていない」
──9月末に円相場が1ドル=100円に近づくとの見通しを示していたが、その後の見通しに変更は。
「95円からプラス・マイナス5円というレンジで申し上げた。その辺に収れんしてくる時期は、あの当時は年末位と思っていた。少し振れるかもしれないが、これからは95円に近づいてくるのではないか」
──藤井財務相は、為替介入に否定的なスタンスをとっているとの見方が出ている。
「藤井大臣の発言は、不介入方針というように当初受け止められた。その後の発言を確認すればわかるが、彼は決してそういうことを言っているのではない。恐らくかつて、日本経済が非常に難しい時に1ドル=105円を絶対割らないようにということで、なりふり構わない介入があった。そのようなやり方はしないということだろうと思う」
──介入は場合によってはあり得るのか。
「そう思う」
──介入が必要であるという状況は、どのような時か。
「今のドルの動向がさらに(ドル安方向に)進むようなことになれば、ユーロ圏も日本もアメリカ自身についても色々問題が生じる。そうなるとやはり、みんなでどのようにしようかという問題にも到着する」
「ドル円相場がどの位になったから、それが引き金になる、というような性格のものではない。為替市場の状況が非常に混乱し、その結果ドル、ユーロ、円にとっても、これは何とかしなければいけないという状況になるということだろう。この辺のレベルならとか、そういうような判断ではない」
──今のドル円相場は、日本の輸出企業にどのような影響をもたらしていると思うか。
「今の相場が即、日本経済に非常にネガティブな影響を与えるという形では受け取っていない。ただ、例えばドル/円が95円位から90円、90円を割るというような時に、やはり心理的には日本経済全体に対して非常に懸念を持たせるというような感じが出てくる。今のところで安定している限りは、それですぐどうということはないが、ビジネスコンフィデンスには非常に影響するので、今後の動きは注意しておかないとならない」
──ドルは基軸通貨というポジションを保っていけるのか。同時に、ドル以外の通貨で基軸通貨の役割を果たせる通貨は。
「アメリカの消費者は借金に頼って消費を膨らませて、これが世界経済の駆動力になったわけだが、今は借金の返済と貯蓄に忙しいため、アメリカ経済はなかなか元気が出ない。これによってアメリカの貯蓄投資バランスが改善し、アメリカの対外ポジションが強くなっていくことが当然想定される。その意味でグローバルインバランスの問題は、アメリカサイドから言うと、今の傾向が続く限りは比較的解消していく」
「一方で、例えば中国などの経常黒字の国が、どのような形でグローバルインバランスの是正に力を注ぎ、結果を見せるのかがこれからの問題。そう考えると、中長期的にはドルについては心配していない。ドルはやはり、基軸通貨としての重要な地位を今後とも維持することは間違いなく、一方、これに競争できる通貨としてユーロがだんだん育ち、今後資産の保有、色々な商品の建値、あるいは決済通貨としてユーロがドルに比肩するような存在になり、二極通貨体制に移ってくるということではないかと思う」
──人民元の現状と今後は。
「人民元は、経済が難しくなってから1年以上、変動が限定的となっている。この結果、ユーロがどんどん強くなり、弱くなっているドルと一緒に人民元も弱くなっていることが問題だ。人民元が弱いので、アジアの他の通貨もドルに対して強くならないよう、ドル買い介入をし始めた。国際的には、混乱要因が単に人民元だけではなく、他のアジアの通貨との関係でも出てきているというところがこれからの問題だ」
──こうした環境の中で、日本企業のアジアとの関係は。
「アジアとの関係で言うと、比較的競り合っている分野もあるが、かなり分業関係になっている面もある。人民元だけでなくアジアの通貨も弱くなると、日本への影響も当然感じられてくるだろう」
──アジア地域の共通通貨の実現の見通しは。
「今世紀中に実現するとは考えていない。文化や宗教で共通した土壌を持つ欧州でも、共通通貨の発足までは、欧州経済共同体が設立されてから40年以上かかっている。英国などの国が加入していないことを踏まえると、まだ完璧ではない。独自の中央銀行を持つ共通通貨の実現を想定するのは、アジアでは難しい。各国の間で対話が今後徐々に行われていくのを見守りたい」
(ロイターニュース 岡村慧、武田晃子)
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