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コラム:腐敗はびこるフランス政界、大統領選で生まれ変わるか
2017年3月10日 / 02:32 / 6ヶ月前

コラム:腐敗はびこるフランス政界、大統領選で生まれ変わるか

 3月6日、政治腐敗はフランスでは珍しくない。そして、政治というゲームの勝者、あるいはそれに近い立場にある政治家であれば、法的な処罰を受けないことも日常茶飯事だ。だが、2017年の仏大統領選挙は政界が変わる契機となるかもしれない。写真は大統領選に名乗りを上げているフランソワ・フィヨン元首相(中央)、極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首(右)、元経済相のエマニュエル・マクロン氏の人形を製作する男性。ニースで2月撮影(2017年 ロイター/Eric Gaillard)

[6日 ロイター] - 政治腐敗はフランスでは珍しくない。そして、政治というゲームの勝者、あるいはそれに近い立場にある政治家であれば、法的な処罰を受けないことも日常茶飯事だ。

だが、2017年の仏大統領選挙は、長年にわたり税金を個人や政党のために流用するという、半ば貴族主義的ともいえる国民軽視に対して、画期的な反乱を引き起こす契機となるかもしれない。

法律が専門だったフランソワ・フィヨン氏は、20代後半から政治家に転じた。現在63歳のフィヨン氏は中道右派勢力のなかで着実に出世を果たし、2007年にはサルコジ大統領のもとで首相に就任した。

彼は5年間の任期を無事に勤め上げ、次期大統領の有力候補と見られていた。政治経験が豊富なキリスト教徒で、ウェールズ出身の妻ペネロプ夫人とのあいだに5人の子どもをもうけており、フランスを景気低迷から救い出すことへの熱意を表明していた。

だが、厄介なメディアが何もかも駄目にしてしまった。スキャンダルの暴露を得意とする週刊紙カナール・アンシェネは先月、フィヨン氏が妻を多年にわたり議員秘書として雇用していたが、勤務実態はほとんどなかった模様だと報じた。同紙は続いて、フィヨン氏の子ども2人も巻き込み、家族に支払われたとみられる給与金額は総額100万ユーロ(1億2000万円)近くに膨らんだ。

フィヨン氏は、メディアと政敵が自分の選挙運動を窮地に陥れようとしていると非難し、無実を主張しているが、妻を秘書として雇用していたことについては謝罪した。フィヨン氏は選挙運動を継続している。

仏大統領選の主な候補者たち

仏大統領選の主な候補者たち

だが彼はダメージを負った。皮肉なことに、なによりも妻と自分自身による傷だ。ペネロプ夫人は2007年に英テレグラフ紙のインタビューに応じ、子どもたちが自分のことを「単なる母親」だとしか思っていないと述べている。フィヨン氏が首相に登りつめたことについても、「私の新しい役割は何かと人々から聞かれるが、そんなものはない」と語っている。

フィヨン氏自身も大統領候補の指名を争うなかで、サルコジ氏に当てつけた表明として、「個人的に非難されるべき点がなかったわけではないのに、権威について語っても意味がない」と述べている。彼自身の発言によって、彼はフランスを導くことができなくなるかもしれない。

ただ中道右派は、どれだけダメージを受けたとしても、フィヨン氏以外に候補はいないと考えているようだ。

6日に開催された党幹部の会合は、満場一致でフィヨン氏を支持し、行き詰まりつつあった選挙運動の再開を誓った。ペネロプ夫人は先週末のインタビューで、勤務実態があったと認めており、さらに詳しい検証がこれを裏付けるかもしれない。4月23日の初回投票までは7週間近く残っており、そのあいだにこの問題が沈静化する可能性もある。とはいえ現時点では、一見したところ不誠実とは思えない政治家ににも弱みはあるという、仏システムにおける新たな1例のように思われる。

1969年のシャルル・ド・ゴール大統領の辞任以来、現代フランスの大統領史は政治腐敗に付きまとわれてきた。ここ20─30年は、 特にそれが著しくなっているように思われる。あるいは少なくとも、腐敗が表面化しやすくなっているようだ。

また、大統領の汚職は大きな注目を集める。フランス大統領の権力は非常に強く、政治的・外交的で注目や便宜を求める場合は、誰もがエリゼ宮(仏大統領府)へのコネを探す。何か便宜を図るならお互いさまだ。日常的な政治上の取引もあるが、それ以外はもっと欲得ずくだ。

1974年から1981年まで大統領を務めたバレリー・ジスカールデスタン氏の場合、当時の中央アフリカ共和国大統領から高額のダイヤモンドを贈られていたことを、やはりカナール・アンシェネがすっぱ抜いた。ただ同氏は、これらの宝石はすでに売却し、代金は国内の慈善団体に贈ったと述べている。

1995年から2007年まで大統領を務めたジャック・シラク氏は、パリ市長時代に自党の資金調達のために公金を横領したとして、2011年に執行猶予付き禁錮2年の有罪判決を受けている。シラク氏は「記憶障害」を理由に出廷しなかったが、声明のなかで、有罪判決に断固として抗議すると述べつつ、新たな公判に耐える「必要な体力」がないため、控訴しないと表明した。

フィヨン氏が首相として仕えたサルコジ大統領も、任期を通じてスキャンダルに囲まれていた。その1つが、1994年のパキスタン向けの潜水艦売却の際に、彼の側近と盟友がリベートを得ていたという疑惑だ(サルコジ氏はこうした主張を否定している)。

サルコジ氏自身にもっと近いものとしては、フランスで最も富裕な女性である仏大手化粧品会社「ロレアル」創業者の娘、リリアンヌ・ベタンクール氏(彼女自身も大規模な脱税を告発されている)から違法な資金を受けていたという疑惑がある。この複雑な問題を暴露したのは、執念深いニュースメディア、調査報道サイトのメディアパールだ。

そして昨年、大統領選挙への再度の出馬を準備していたサルコジ氏は、「選挙資金の法定上限を超過した候補者の選挙運動のための違法な資金調達の疑い」で捜査を受けた。サルコジ氏は選挙資金枠の超過については知らなかったと否定している。

サルコジ氏の後任となった社会党の現職オランド大統領は、こうした相次ぐ政治腐敗疑惑とは縁を切ったように見える。彼のスキャンダルは女性関係だが、政界有力者のプライバシーは不問にするという報道界のしきたりに反して、トップ紙面で大きく書きたてられている。

だが、オランド政権の閣僚のなかには金銭面で禁欲的ではなかった者もいる。大統領就任後まもなく、ジェローム・カユザック予算相は、メディアパールによる報道を否定したものの、スイスの銀行口座を利用して60万ユーロ(当時の為替レートで77万5000ドル)を保有していたことを告白した。また、違法ではなくダメージも少なかったが軽率な例としては、オランド大統領の友人で選挙陣営の金庫番だったジャンジャック・オージエ氏が、ケイマン諸島に籍を置くオフショア事業に投資していたことが暴露されている。

こうした状況は改善されるのだろうか。

まず、初回投票に関する世論調査で現在首位に立っている極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首は、欧州議会の予算から30万ユーロ以上を自党職員の給与として不正に使っていたとして欧州連合(EU)の不正監視当局による告発を受けている。同氏は返納するつもりはないとしており、世論調査ではこの問題による人気の低下はないようだ。彼女の支持者も、本人同様にEUを嫌っているからだろう。

フィヨン氏に代ってルペン党首の有力な対抗馬として浮上したのが、元社会党で経済相を経験した39歳のエマニュエル・マクロン氏だ。マクロン氏は中道の新党「アン・マルシュ(進め)」を創設。ロスチャイルド系の投資銀行に勤務していた経歴は人気の点ではマイナスだが、メディアからの評価は高く、金銭的なスキャンダルの気配はない。

ルペン党首を支持しているのは、政治腐敗に憤る、多くの場合、労働者階級の有権者だ。マクロン氏の主要な支持層は、国際派で高学歴の中流層で、もはや肩をすくめて「そういうものだ」で済ますつもりのない、マクロン氏と同年代か、さらに若い人々だ。カナール・アンシェネやメディアパールに限らず、フランスのジャーナリズムは、政治腐敗スキャンダルをこれまで以上に活発に報道している。

今のところ、5月に行なわれる2回目の決選投票ではマクロン氏勝利の公算が高くなっている。スキャンダルで足を引っ張られそうになく、汚点のない新党を持ち、これ以上冷笑主義に徹するつもりのない国に支えられることで、マクロン氏はフランスの政治文化を変えようと試みるかもしれない。

だが、それは時間のかかる仕事だ。日常茶飯事になってしまった政治腐敗は、しつこく生き延びるものなのだ。

*筆者はロイターのコラムニストです。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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