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コラム:円安・株高はゲームチェンジャーの威力、外交に波及想定すべき
2016年11月22日 / 07:36 / 10ヶ月前

コラム:円安・株高はゲームチェンジャーの威力、外交に波及想定すべき

 11月22日、「ゲームチェンジャー」トランプ次期米大統領の登場で、金融・資本市場が大きく変動している。写真はアリゾナ州で8月撮影(2016年 ロイター/Carlo Allegri)

[東京 22日 ロイター] - 「ゲームチェンジャー」トランプ次期米大統領の登場で、金融・資本市場が大きく変動している。多くの市場関係者は意識していないが、もし、ゲームチェンジが外交・安全保障関連に波及した場合、市場の変動は一段と大きくなるのではないか。米国へのマネー流入加速が継続するなら、今までは想定すらしていなかった「行き過ぎた円安」を日本政府が懸念するケースが将来的にないとも限らない。ウルトラ財政出動の効果を「一過性」と軽視すると、実態とのギャップが一段と拡大することになると予想する。

<トランプ勝利後に10円の円安>

ドル/円JPY=EBSは21日のNY市場で一時、111.36円まで上昇した。約2週間で10円のドル高/円安が進み、日経平均.N225は1万8000円台を回復している。東京市場から見れば、円安・株高をもたらした「トランプ効果」は、マジックのように見えるだろう。

トランプ氏が勝利宣言した9日夕(東京時間)の直後から始まったいわゆる「トランプ相場」。東京市場では、懐疑的な見方をする市場参加者が比較的多く、少なくない著名なエコノミスト、ストラテジストが早晩、円高に戻る可能性が高いと予測した。

しかし、11日の私のコラム「トランプ氏のウルトラ財政出動、ドル高止まらぬリスク内包」[nL4N1DC2CA] で指摘したように、ドル上昇の勢いは止まっていない。対円だけでなく、対主要通貨に対しても全面高。ドル指数.DXYは100を突破し、13年ぶりの高水準となっている。

<新興国市場の不安増幅でも、米へのマネー流入継続へ>

最大の要因は、トランプ氏の経済政策。ほぼ完全雇用状態の米国で、年間に1兆ドル単位の財政出動を展開し、米経済を刺激し、米国内の雇用を増加させようとすれば、名目国内総生産(GDP)は押し上げられ、期待インフレ率と物価が上昇。世界中からマネーが米国に流入し、米株価も上昇する──というシナリオだ。

今のところ、米長期金利US10YT=RRが2.3%台まで上がっても、ダウ.DJIは上昇を続け、米長期金利の上昇を嫌気していない。

他方、新興国からマネーが流出し、通貨安と株安がもたらされる。トランプ氏勝利の前なら、新興国の市場不安定化が「リスクオフ」要因とみなされ、それが日本や欧州だけでなく、米国市場にも波及し、米株下落要因になった。

ところが、今は新興国市場に同様の兆しが見えても、マネーは「一方向」に米国へと向かい、米市場が動揺する兆しは見えない。

このマネーフローは、トランプ次期大統領が「ドル高は、米国の利益でない」と宣言するまで継続すると予想する。

トランプ氏の経済政策・トランポノミクスの全容は依然として明らかでないが、大幅な財政出動が基本であるなら、弱点は米国内での金利上昇と物価上昇になるとみられる。

しかし、インフラ投資や法人、個人への減税を大盤振る舞いするなら、短期的には金利上昇の打撃を相殺し、さらにプラス効果を上乗せすることが可能だ。

また、ドル高なら物価上昇圧力を抑止する効果も併せ持ち、物価高による中低所得者の不満増大も、短期的には目立たない可能性がある。

<プーチン大統領発言の裏を読む>

こうした経済面での「ゲームチェンジ」が、仮に外交・防衛でも発揮された場合、その影響はかなり甚大かつ広範に及ぶ可能性がある。

例えば、米ロ関係と日ロ関係。ロシアのプーチン大統領は19日のリマでの会見で、日ロ首脳会談において北方領土内での日ロの「共同経済活動」を日本側に提案したことを明らかにした。日本にとってこの提案は、ロシアの領有権を認めることが前提となり、高いハードルの内容。それをあえて公表したのはなぜか──。

外交評論家の間では、トランプ氏との直接交渉で米ロ間の緊張関係が緩和し、G7(主要7カ国)の対ロ制裁が緩む方向のメドが立ち始めたので、領土で対日譲歩するというカードを引っ込めたのではないか、とのシナリオが取りざたされている。

米議会との関係もあり、トランプ氏のロシア接近説は「荒唐無稽な発想」と切り捨てる学識経験者も数多くいる。だが、米ロ関係がどのように進展していくのか、日本政府関係者ばかりでなく、市場関係者も注目するべきだろう。

<かつての悪夢・米中接近>

また、日本の外交関係者にとっては、「苦い思い出」が米中関係にはある。1971年7月にニクソン米大統領の訪中が発表された。台湾との国交維持を最優先にしていた当時の佐藤栄作内閣は、はしごを外されたかたちになり、日中国交回復は、次の田中角栄内閣まで持ち越された。

米中の動向も、日本にとって神経質になりがちな問題であることは間違いないだろう。

日米が連携し、中国の膨張を抑え込むという基本戦略が維持できるのか、という点も非常に大きなポイントになりそうだ。

もし、日本政府の思惑通りに米ロ中の関係が進まない場合、教科書通りに考えれば、円売り材料になる可能性がある。

<行き過ぎた円安、懸念する日は来るのか>

さて、円安がどこまで進むのかについて、市場では大幅な円安進展を見ている参加者は少数のようだ。しかし、トランポノミクスによるパワーは、市場の「ゲームチェンジ」をもたらし始めており、米次期政権の財政政策が明らかになれば、財政出動と米利上げの相乗効果で120円台に乗せることも可能性ゼロとは言えなくなってきた。

その時は、ガソリン価格の上昇に代表されるように輸入品の値上げが目立つようになり、輸入原材料を多く含む食品の値上げが増加する可能性がある。

さらに輸入原材料のコスト上昇を価格転嫁しにくい中小企業から「悲鳴」が出ることも予想される。

そうなると、政府は円安進展を「黙視」できなくなるのではないか。いつ、その時が来るのかははっきりしないが、足元のドル110円、米長期金利2.3%で相場が折り返すという「ぬるい」インパクトを想定していると、トランプ効果の大きな反作用に衝撃を受けることにもなりかねない、と今のうちに指摘しておきたい。

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