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コラム:南極圏の氷、「4年ぶり拡大停止」の意味
2016年1月17日 / 02:31 / 2年後

コラム:南極圏の氷、「4年ぶり拡大停止」の意味

 1月11日、メディアが注目するのはいつも北極圏の氷床だが、南極圏では注目すべき動きが生じつつある。南極圏の氷床の拡大は4年ぶりにストップした。そして実際のところ、氷域は平均的な水準を下回ってしまったのだ。写真は南極大陸のデニソン岬。2009年10月撮影(2016年 ロイター/Pauline Askin)

[11日 ロイター] - メディアが注目するのはいつも北極圏の氷床だが、南極圏では注目すべき動きが生じつつある。南極圏の氷床の拡大は4年ぶりにストップした。そして実際のところ、氷域は平均的な水準を下回ってしまったのだ。

南極圏の氷床には、地球上の淡水の約61%が保持されている。北極圏の氷床が2000年代に大幅に縮小する一方で、南極圏の氷床は同じ時期に数次にわたって成長してきた。

2015年が始まった時点で、南極圏の氷床の広がりは1979年の観測開始以降で最大の水準にあり、長期的な平均値よりも極端に広がっていた。7月までは海氷が異常に多い状況が続いたが、その後、急速な縮小が始まった。

2015年8月には月間の海氷域が2011年11月以来初めて平均水準を下回った。2015年を通じて、海氷域は平均水準の近傍で推移した。

1月6日の時点で、海氷域はこの日までの30年間の平均をわずかに下回るだけだが、相対的には過去10年間で最低の水準が観測されている。

2015年には地球全体の気温が過去最高を記録したが、これが氷床縮小の直接的な原因であるかどうかは不確実だ。南極圏の海氷の今後の動向については、なおさら予想できない。

<直感を裏切る傾向>

海洋はグローバルな気候にとっての主要要因の一つであり、南半球の海水温は昨年5月から12月にかけて記録的な高さとなったため、海氷の急速な減少は明らかにその帰結であると思われるかもしれない。だが、それほど単純な話ではないかもしれない。

1979年から2014年にかけて、年間の海水温の異常と南極圏における年間の海氷域の異常のあいだには、弱いとはいえ正の相関が見られる。言い換えれば、理屈では正反対になりそうなものだが、南半球の海水温が高くなると、海氷域も増大する傾向が見られるのだ。

こうした相関が見られる一方で、昨年までの時点で海水温がそれぞれ過去2番目、3番目に高かった2013年、2014年に、どのようにして南半球の海氷が過去最高の水準を維持できたのか、その仕組みを理解することはなお困難である。

地球温暖化にもかかわらず南極圏の海氷がここ数年間持ちこたえてきた理由には、オゾンホールの影響や氷の融解によるフィードバックループなど、いくつか有力な理論がある。だがこれらの理論は、昨年半ばに急激な変化が起きた理由を説明するには十分ではない。

 1月11日、メディアが注目するのはいつも北極圏の氷床だが、南極圏では注目すべき動きが生じつつある。南極圏の氷床の拡大は4年ぶりにストップした。そして実際のところ、氷域は平均的な水準を下回ってしまったのだ。写真は南極大陸のデニソン岬を歩くアデリーペンギン。2009年10月撮影(2016年 ロイター/Pauline Askin)

また、南極圏における陸上の気温を考えても、2015年には相対的に見て大量の海氷が消滅したのに、それに先立つ2年間には持ちこたえた理由を説明できない。2015年の気温は過去3年間で最も冷涼であり、昨年、海氷が急激な変動傾向を示した謎はいっそう深まるばかりだ。

<予想できぬ未来>

正の相関の理論が正しいとすると、もし海水温が昨年観測された過去最高の値に遠く及ばない場合、2016年中も南極圏の海氷域は縮小を続けるかもしれない。

現在のエルニーニョ現象は、今年半ばには急速にラニーニャ現象へと転換していくのではないかと広く考えられている。そうなれば、太平洋の広い範囲で劇的に水温が下がるだろう。だが、グローバルな海水温の年間変動のうちエルニーニョ南方振動(ENSO)現象を理由とするのは20%以下にすぎない。

グローバルな海水温変動の約75%は前年比で見た水温傾向で説明される。グローバルな海水温がかなり確実な上昇傾向を見せていることを考えると、2016年に海水温が大幅に下がる方に賭けることはあまり得策ではないようである。

こうして見ていくと、2016年及びそれ以降に生じる状況については、大きな不確実性が残る。南極圏における最近の動向は、本当に海氷パターンの変化を示しているのか。恐らく、それもまだ分からないままだ。

南極圏の海氷と周辺の大気、人類の日々の生活に与える影響との相関関係は、北極圏の場合に比べてはるかに理解が進んでいない。だが一つ分かっているのは、南極圏の氷床が融解すれば確実に海水面の上昇につながるだろうということだ。

南極圏の氷床がすべて融解すれば、海水面は約190フィート(58メートル)上昇する。世界の主要都市は完全に消滅し、小国のいくつかも同じ運命をたどるだろう。

もっとも、近い将来においては、これほどの規模の融解が生じる心配はまったくない。過去20年間の海水面の上昇は、平均で年0.3センチ程度だからだ。とはいえ、世界の淡水のうちこれほど多くが南極圏の氷床に閉じ込められている以上、比較的少量が融解しただけでも大きな影響が出る可能性がある。

*筆者はロイターのマーケットアナリストです。本コラムは個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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