COLUMN-〔インサイト〕サブプライム問題と内向きニッポン=野村資本市場研・大崎氏
サブプライムローン(信用力の低い貸し手向けの住宅ローン)を裏付けとする証券化商品の格下げと価格下落により、アレンジャーであった投資銀行や証券化商品を組み入れたSIVの運営やABCP(資産担保コマーシャルペーパー)へのバックアップライン供与を行ってきた金融機関が巨額の損失を被った。
最近では、関連商品に保証を与えるモノライン保険会社の損失発生や格下げも報じられている。破たんする債務者の増加と金融収縮が実体経済に与える悪影響への懸念も高まっている。
<米株下落が日本株に飛び火、一部に恨み節>
9日に開かれる7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、金融機関のリスク管理や情報開示の強化など、中長期的な市場の安定化へ向けた方策が議論される見通しだが、世界の金融・資本市場の動揺は、容易に収まる気配をみせない。
もっとも、この問題の日本への直接的な影響は小さいはずである。金融庁の資料によれば、日本の金融機関の昨年9月末時点でのサブプライム関連商品をめぐる評価損と実現損の合計は2760億円にとどまる。保有額全部が損失となるという、ほぼあり得ない想定をしたとしても1.4兆円程度。昨年3月期の実質業務純益6.7兆円、Tier1自己資本49.4兆円という数字からみれば、問題なく吸収可能な範囲である。
それだけに好調な企業業績を尻目に、ニューヨーク市場と連動するように株価が下落する現象は理解しにくい。「市場が外国人投資家に牛じられているからだ」と嘆く市場関係者は少なくない。「対岸の火事」が日本市場に影響を及ぼしているという恨み節だ。 米国中心の経済システムへの不信感が、ドットコム・バブル崩壊、同時テロ、エンロン・ワールドコム事件が生じた2000年から2002年にかけての時期以来、再び台頭している。
グローバルな市場の動向に巻き込まれたくないという日本の経済社会の気分は、サブプライム問題への反応以外にもうかがわれる。昨年の米国の投資ファンドに対する買収防衛策発動に続き、再度、同じファンドに対する対抗策発動の可能性が高まっている。空港会社をめぐって外資規制の導入が提案されようとしている。東証では、議決権を制限する種類株式の上場制度創設が検討されている。
<内向き志向強めるなら、マネー流入先細りか>
米国の大手金融機関は、中東やシンガポール、中国の政府系投資ファンド(SWF)から巨額の資本を調達した。土壇場で背に腹は代えられなかったのだと揶揄(やゆ)する向きもあるが、なぜSWF等の投資家は出資に応じたのか。彼らは慈善団体では決してない。米国の金融機関の底力がそれだけ高く評価されていることの証明にほかならない。しかも、米国の政府・社会は、自国を代表する金融機関の外資導入に何ら抵抗を示さなかった。
これに対して、日本の金融機関はバーゼル をいち早く全面施行するなどリスク管理を強化していたので被害が小さかったというのはその通りだが、仮に深手を負ったとしたら、果たして円滑にオイルマネーが注入されるだろうか。ただでさえ収益力が高くない上に、内向き志向を強める日本では、世論の反発も予想される。冷徹なSWFは、そんな計算尽くで、日本の金融機関を見限るのではなかろうか。
サブプライム問題で多少のダメージを受けても、オープンな米国経済は必ず立ち直る。なにしろ移民の子で、実の祖母がケニアの村に今も住むという人が、次期大統領の有力候補という国である。
米国に競争を挑む欧州各国も、新興諸国も、市場と資本の論理には忠実だ。そんな世界で、グローバルな資本の論理への嫌悪感を隠そうとせず、予定調和への回帰を求める内向き志向の日本は、本当に大丈夫なのだろうか。
大崎貞和 野村資本市場研究所 研究主幹
(東京 8日)
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