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ドル不足が深刻化、欧州財政危機が金融危機に転化する兆候
2010年5月7日 / 09:08 / 7年前

ドル不足が深刻化、欧州財政危機が金融危機に転化する兆候

 森佳子記者

 5月7日、ドル資金市場でドル不足が顕著に。欧州財政危機が金融危機に転化する兆候が表れている。写真は4日、ソウルの銀行で撮影した米ドル札(2010年 ロイター/Truth Leem)

 [東京 7日 ロイター] ギリシャの財政問題に端を発した欧州圏でのソブリンリスクの高まりと株価急落を受け、ドル資金市場では、ドル不足が顕著になってきた。金融危機時に特徴的なドル流動性確保の動きを映したもので、欧州財政危機が金融危機に転化する兆候が表れている。

 ガイトナー米財務長官は7日、主要7カ国(G7)財務相と電話協議する予定で、ギリシャ支援での欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)の合意内容について確認することになるとみられる。しかし市場では、個別国の支援もさることながら、G7の流動性支援が再び必要な事態を迎えようとしている。

 「ギリシャに端を発した財政危機が、金融危機に転化しつつある。これがエクイティ市場の調整のきっかけとなった。流動性問題に対処するため各国は万全の態勢を敷く必要がある」と東海東京証券・チーフエコノミストの斎藤満氏は指摘する。

 G7協議に先立って、日銀は7日午前、2兆円の即日資金供給オペを5カ月ぶりに実施した。「潤沢な資金供給をすることで市場の安心感を高めるのが狙い」(金融市場局)とされ、国内市場の問題ではないとした。実際、当該オペの結果は札割れとなり、円資金は十分に足りていることが証明された。

 他方、ドル資金市場では、危機時に特有のドル不足が深刻化している。

 <危機でドル不足が深刻化> 

 短期金融市場では、ドルの調達コストが次第に上昇してきた。

 ドル/円フォワード取引の1カ月物は7日、マイナス6/4.5銭となり、前日の3.7/3.5銭から急拡大。ディスカウント幅は4月半ばから5月初めまで2銭台を推移していたが、ドル需要の強さを反映して、拡大圧力が強まっている。 

 フォワード・レートから換算したドル金利は、1カ月物で0.6%付近と前日の0.5%から上昇。LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)に約30ベーシスポイント(bp)程度上乗せした水準にある。

 LIBOR1カ月物は6日、0.29706%まで上昇し、2009年7月初旬以来の高水準となった。同金利は4月末に0.28000%、3月中旬には0.2300%だった。市場実勢は、LIBORより高水準で、フォワード・レートから換算した金利に近いとの指摘がある。

 ドル短期金利の上昇は、一度は終息したと思われた金融危機の再燃との見方があると同時に、リーマンショック後の金融危機が実際には終息していなかったとの見方も広がっている。最近のドル短期金利の上昇は「不良資産償却の遅延など何らかの理由でドルが足りない金融機関が存在する証」(欧州銀)との意見も聞かれる。

 ドル短期金利の上昇に伴い、円を調達してドルで運用する円キャリー・トレードは巻き戻されている。

 外為市場では6日、ユーロ/ドルが1.2510ドルと1年2カ月ぶり、ドル/円が87.95円と5カ月ぶり、ユーロ/円が110.49円と約8年ぶりの水準まで急落した。しかし、7日の東京時間にはユーロ、ドルともに急反発となった。

 ただ、「外為市場で起きていることはあくまで結果であって、原因ではない」(外国銀行)との声も聞かれる。

 短期のインターバンク市場ではドルの供給が極端に細っており、ドルの資金調達コストは今後さらに上昇する見通しだ。「為替市場ではユーロに照準が当たっているが、資金市場でパニックが起きているのはドル」(前出の外国銀行)だという。「危機時は手元にドル・キャッシュを厚めに確保する動きがでる。キャッシュを確保していれば、決済困難に陥る事態を回避できる。現状はリーマンショックの巨大版とも言えるかもしれない」と岡三証券外国債券グループ・グループ長の相馬勉氏は言う。

 また、「株価が下がると、ヘッジファンドなど株を担保に資金を借りていた短期筋がファンディング・クライシスに陥り、ポジションをクローズする方向に一斉に動く」(ファンドマネージャー)とされ、「米国株価もさることながら、金融引き締め下の上海株の動向など、今後さらに流動性が引き揚げられるリスクがある」(同)という。

 6日の米株式市場では、ダウ工業株30種が取引時間中として過去最大の下げ幅を記録し、終値は347.80ドル(3.20%)安の1万0520.32ドルとなった。

 <FRBの出口戦略の行方>

 市場が流動性リスクを認識するなか、米国の出口戦略のかじ取りがどのように変化するかも注目される。

 米連邦準備理事会(FRB)は先月30日、金融市場から余剰資金を吸収するためのターム・デポジット・ファシリティー(TDF)の新設を決定した。全米12地区の連邦準備銀行が金融機関から入札を通じて期限付きで預金を受け入れる。

 FRBはTDFについて「政策担当者が緩和度合いを低下させ始めることが適切と判断した場合に、FRBが流動性を吸収するために採用しうる手段の一つとなる」としたうえで、「短期的な金融政策の実施には関係ない」とした。

  TDFと並んで出口政策の一環として注目されるモーゲージ担保証券(MBS)の売却について、米セントルイス地区連銀のブラード総裁は4日、米紙とのインタビューで、FRBが金融危機対策として買い入れたMBS(1兆1000億ドル)の一部売却を年内に始める可能性があると述べた。

 米リッチモンド地区連銀のラッカー総裁は6日、現在のところ金融市場でバブルの兆候は見られていないと指摘した上で、金融政策を引き締めるまでに時間がかかり過ぎないよう注意する方針を示した。

「米国が今回の流動性リスクを斟酌(しんしゃく)せずに出口戦略を進めるとすれば、ある種の目的意識があるのだろう」(エコノミスト)との声も聞かれる。

 富国生命投資顧問の櫻井祐記社長は7日、ロイターとのインタビューで「今回の問題はリーマンショック後の問題が片付いておらず、個々の金融機関から国の財政問題に飛び火した感じだ。金融システムは薄氷の上を歩いている印象だ」とし、世界の主要国が足並みをそろえて、慎重に対応する必要があると指摘している。

 リーマンショックから1年8カ月、未だ処理が進んでいない欧米金融機関の不良債権問題。慎重な対応と対極にあるショック療法を米国が出口戦略を通じて実施するか、注目される。

 (ロイター 取材協力 伊藤武文記者;編集 石田仁志)

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