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厳しさ増す東電の信用力評価、原発事故で巨大な補償コストに警戒感
2011年3月28日 / 11:04 / 6年前

厳しさ増す東電の信用力評価、原発事故で巨大な補償コストに警戒感

 3月28日、国内最大の社債発行企業である東京電力に対する信用力評価が厳しさを増している。写真は27日、都内の同社本社前で反原発を訴える人たち(2011年 ロイター/Toru Hanai)

 星 裕康、片山 直幸 

 [東京 28日 ロイター] 国内最大の社債発行企業である東京電力(9501.T)に対する信用力評価が厳しさを増している。かつては最上格を誇り日本国債よりも信用力が高かった同社の社債は、いまや原発事故の補償コストで経営が危機に瀕するのではないかと懸念の眼差しを向けられるほどになった。

 金融システムを揺るがしかねない社債のデフォルト(債務不履行)が警戒される一方で、国有化であれば債券の再編を行わないのが通常であり、社債権者には有利との声もある。

 <原発事故で膨らむ補償コスト、資本基盤のき損リスク>

 予想される巨大な補償コストを踏まえると、中長期的に株主資本を毀(き)損して債務超過になる可能性さえ否定できない──年金運用を行うある投資顧問の債券運用担当者は、日を追うごとに厳しさが増す東電のクレジット評価についてこう指摘する。福島第一原発2号機のたまり水から高濃度の放射線量が測定されたことを受けて、原子炉冷却システムの復旧がさらに難航することが予想されるなど、原発事故処理が長期化する様相を呈している。「将来的な被害拡大を含めた原発問題に絡む補償額がどの程度膨らむのか、まったく見当がつかない」(同担当者)ことが不安心理を増幅させている。

 東電の長期格付けについては、ムーディーズ・ジャパンが18日、Aa2からA1へに2段階引き下げを決定。スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)も同日、AA─からA+に1段階引き下げた。国内投資家が重要視する日系の格付投資情報センター(R&I)は25日、AA+からAA─に2段階の格下げを発表。いずれの格付会社も原発事故の行方が不透明として、引き下げ方向での格付け見直しを継続中だ。

 <社債残高は国内最大の5兆円超、冷静を漂う市場>

 東電の社債残高は5兆1747億円(2010年12月末現在、連結ベース)と国内最大。その規模と流動性に加え、電力の独占供給をになう同社の信用力は一時は国債以上に高かったことから、その社債保有者は銀行、生保、年金、公的機関など多岐にわたるとみられている。「社債の発行残高が大きいだけに、ポートフォリオから外すとなると1銘柄だけでは済まされず、判断が非常に難しい」(国内金融機関)として、流通市場で東電債にまとまった売りが出ていない。

 一見、冷静を装う市場だが、運用規約上の制限などで保有できなくなった投資家から小口の売りが出ているとの観測もくすぶる。複数の市場筋によると、買い手の気配(ビッド)は、国債スプレッドで100ベーシスポイント(bp)を超えているもよう。「スプレッドだけをみると、BBB格への格下げを織り込むような水準」(別の国内金融機関)として、スプレッドは拡大傾向。28日のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場でも、同社のユーロ建て債に売りが出たのをきっかけに、東京電力のプレミアムが前週末比100ベーシスポイント(bp)高い450bpとワイド化に拍車が掛った。

 <原賠法の例外規定に慎重発言、費用負担のバッファー3兆円超>

 ワイド化の背景には、事故の収束にメドが立たないなか、巨大な賠償コストが東電の経営を揺るがしかねないとの警戒感が強まっていることにある。枝野幸男官房長官は25日午後の会見で、福島第1原子力発電所事故に関し、原子力損害賠償法(原賠法)に基づいて、東京電力が免責となる可能性について、個人的な見解としながらも「安易に免責などの措置がとられることは、この経緯と社会状況からはあり得ない」と否定。原賠法には「異常に巨大な天災地変」などによって事故が発生した場合には、原子力事業者の賠償責任が免除される例外規定の適用に慎重な姿勢を示した。

 東電の株主資本は連結で約3兆円。想定される費用負担等に対するバッファーに関して、広義のキャッシュフロー指標であるEDITDAなどを勘案すると「フローとストック合算でおおよそ3兆円超とイメージされる」(大和証券キャピタル・マーケッツのクレジットアナリストの松坂貴生氏)という。

 みずほコーポレート銀行など3メガ銀行グループや住友信託銀行8403.Tなど大手信託銀行は、東京電力に対して最大2兆円の緊急融資を実行する方向で最終調整に入ったが、十分かどうかは原発事故がどのように収束するか次第であり、不透明だ。

 <東電株ストップ安、国有化の思惑で株主責任も>

 果たして費用負担がバッファーの中で収まるのか。28日の株式市場では、東京電力株が700円を割り込みストップ安で引けた。破たんに追い込まれた場合、電力事業の公益性を踏まえると何らかの形で国の資本が入るのではないかとの思惑が浮上。「株主責任を問われる可能性が大きい」(国内証券)として見切り売りが相次いだ。

 5兆円規模の社債をデフォルトに追い込めば、社債市場だけでなく金融システムに悪影響を与えることは必至であり、慎重論も多い。

 ただ一方で、国有化というシナリオはデットのリストラクチャリングは通常伴わないため、社債権者にはプラスとの思惑もくすぶる。「社債は国から信用補完されるとの期待が強い。一般担保であるため、他の債権者に対して先取特権を有していることも社債の安心材料」(国内金融機関)という。

(ロイターニュース 編集:伊賀大記)

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