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復興財源で政府内から「増税やむなし」の声、民間は時限的な増税提案
2011年3月29日 / 11:57 / 7年前

復興財源で政府内から「増税やむなし」の声、民間は時限的な増税提案

 3月29日、未曾有の大災害となった東日本大震災の復興財源確保で、政府内からも増税やむなしとの声が広がりつつある。写真は被災した岩手県陸前高田市(2011年 ロイター/Damir Sagolj)

 [東京 29日 ロイター] 未曾有の大災害となった東日本大震災の復興財源確保で、政府内からも増税やむなしとの声が広がりつつある。

 復旧・復興対策で大規模な財政支出が見込まれるなか、財源を国債発行だけに依存できないとの見方が背景にあるほか、財政膨張に対する金利上昇リスクを警戒する政府の財政運営に対するメッセージも必要なためだ。 

  <復興財源であらゆる可能性を議論─菅首相> 

 11年度予算の成立が確実となった29日、菅直人首相は復興財源について「あらゆる可能性について議論をする必要がある」と述べ、増税も排除しない考えを示した。具体的な税目として、11年度税制改正法案に盛り込まれている証券優遇税制の13年末までの延長措置について「検討対象になる」と明言。自身の政治決断として11年度改正に盛り込んだ法人実効税率下げについても「あらゆる選択肢の中に入っている」と述べ見直しに柔軟な考えを示した。 

 五十嵐文彦財務副大臣も28日の会見で、個人的見解としたうえで「法人税も将来の引き下げは確定しておくが、税率は当分の間維持する方法も実は考えられる」と述べ、復興のメドがつくまでは現行の税率水準を維持する「暫定税率」案に言及。11年度予算成立を受けて会見した野田佳彦財務相は「歳出面だけでなく、歳入面についてもいろいろな見直し、議論が出てくる」と税制面からの財源確保に含みを残した。 

 もっとも慎重論がないわけではない。証券優遇税制の延長に最後までこだわった自見庄三郎金融・郵政改革担当相は29日、復興のためにも金融市場の活性化が重要であり、証券優遇税制は延長が適当だとの主張を展開。

 被災者への税制支援措置を検討している民主党の税制改正PT(プロジェクトチーム)では、被災地域からの企業の海外移転に歯止めをかけるためにも、被災地域では法人税減税は必要と主張している。 

  <被害総額膨張、非常に大きな補正予算必要に> 

 大震災の日本経済への影響が懸念されるなかで、あえて増税にも踏み込まざるを得ないとの見方が出てくる背景には、被害総額が阪神淡路大震災の比ではなく、復旧・復興支援として編成が予定される11年度補正予算だけでも「非常に大きな予算が必要になる」(岡田克也・民主党幹事長)と見込まれることがある。 

 内閣府はストック面の被害額を16─25兆円程度と発表したが、同試算には事態収束の兆しが見えない原発事故や計画停電による影響は加味されておらず、被害総額がさらに増大すると見込まれている。 

 「震災前と後では状況が一変した」(野田佳彦財務相)として、政府・民主党は予算の組み替えにも着手。国会議員の歳費を4月から半年間約3割削減することで自民・公明の合意も取り付けた。しかし、財源を確保するには、こうした取り組みでは追いつかず、多額の国債発行が展望されるなかで、震災復興の新たな財源を国債だけに依存することも困難として増税論が浮上している。 

  <民間は時限的な消費増税を提言> 

 野田財務相は政府の財政規律に対する信認が揺らぎ金利が上昇するリスクにも配慮。補正予算編成では「財政健全化の道筋を日本がどうするのか、内外・市場ともしっかりみている。その意識は忘れてはならない」と繰り返してきた。 

 その知恵のひとつが大和総研が提案した「復興基金」創設と「復興連帯税」。武藤敏郎・大和総研理事長(元大蔵次官・前日銀副総裁)は、ロイターのインタビューで、復興支援の財源には不要不急な歳出の抑制を前提に、新規国債の追加発行もやむを得ないとする一方、長期的な対応では、復興計画を実施に移すための包括的な特別立法が不可欠とし、財源には、日本の財政規律に疑念を持たれないためにも、国民負担を求めるべきと税制措置などの必要性に言及した。

 具体的には、政府保証を付した復興基金債を市場で発行して資金を調達。使途は震災目的に限定することで「国民や市場へのアカウンタビリティや透明性の高さを確保できる」としている。償還財源として、「国民全体が連帯した格好で負担する『復興連帯税』を臨時に創設する」ことを提案。復興期間の3─5年間について消費税を1%上げることが考えられるとしている。被災者には事後的に還付し負担を求めない仕組みを盛り込む。このほか、法人税や所得税、電力やガソリンに対する付加税の上乗せも選択肢になると提案している。 

 BNPパリバ証券のチーフエコノミスト、河野龍太郎氏は、場合によっては政府負担が4年間で合計15兆円─20兆円に及ぶ可能性をあげ、財源確保では、将来世代への付け回しは回避すべきとの立場から、歳出見直しのほか、時限的な消費税増税(復興消費税)の創設を提言している。 

  <第1次補正では国債発行回避の方向、増税容認多数との世論調査> 

 民間シンクタンクからの増税提案の広がりをうけ、政府内でも水面下で検討がスタートしたもよう。民主党筋は、逆進性の高い消費税はなじまないとし、まずは、所得税や法人税が検討対象になると指摘。別の関係者は、法人税・所得税の基幹税のほか、証券優遇税制、酒税・たばこ税などあらゆる税目が議論の対象になるとした。 

 政府筋によると、当面の復旧対策に重点を置いた第1次補正予算案は、新規国債発行を回避する方向で検討が進められる。財政支出規模は2兆円─3兆円程度を軸に調整される見通しで、1兆1600億円の予備費の一部活用や既存歳出の見直しが主な財源と見込まれている。 

 共同通信が26、27日に行った世論調査では、復興財源を確保するための臨時増税について、「賛成」が20%、「どちらかといえば賛成」が47.4%と、増税容認派が67%を超える結果となった。こうした情勢の中で、今後の復興予算の財源として消費税が対象となるかは、復興支援対策の規模と政治の覚悟次第といえそうだ。 

(ロイターニュース 吉川 裕子;編集 石田仁志)

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