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特集リスクオフ市場:ドル不足「非常警報」、年末控え不安広がる
2011年11月22日 / 08:23 / 6年前

特集リスクオフ市場:ドル不足「非常警報」、年末控え不安広がる

 11月22日、世界の金融マーケットに「安全」志向が広がりつつある。1月撮影(2011年 ロイター/Kacper Pempel)

 [東京 22日 ロイター] 世界の金融マーケットに「安全」志向が広がりつつある。リスク資産から安全資産へのシフトが静かに進み、日本株は年初来安値水準に下落、日本国債10年金利は1年ぶりの低レベルに下落した。

 欧州ソブリン危機がイタリアやフランスなど中核国にまで拡大するなか、金融機関はお互いの「安全性」に不信を強め、資金市場ではドル不足が深刻化している。このまま市場はリスクオフのスパイラルに落ち込むのか、要因や見通しを探った。

 日米欧金融当局による積極的なドル供給にもかかわらず、市場ではドル不足の非常事態を告げるシグナルがともっている。欧州危機の深刻化でドル資金調達コストはリーマン・ショック以来の水準まで高騰し、過去最大のスプレッドを上乗せしなければ長期のドル流動性を確保できない事態になった。年末を控え、バランスシートに問題を抱える金融機関が必要十分なドル資金を調達できるのか、不安感が広がっている。 

  <リーマンショック以来のドル調達難>

 「圧倒的にドルが足りない状況が続いている。調達コストがどんどん高くなって、環境が悪化している」(外資系金融機関マネー・トレーダー)。こうした悲鳴がいま市場のあちこちから聞こえてくる。為替スワップ市場では、欧州銀等のユーロ資金の保有者が為替スワップを通じてドル資金を調達しているが、その際のコストが、2008年のリーマンショック以来、3年ぶりの高水準に高騰している。 

 その背景にあるのは、欧州債務危機がもたらしたクレディビリティ(信用)の喪失だ。無担保の資金のやり取りは成立しなくなっているとされ、「いくら高い金利を受け取っても、デフォルトで元本が消えてしまったのでは補えない」と前出のマネー・トレーダー)は指摘する。 

 為替スワップ取引は短期のドル資金を調達するもっとも重要なツール。フォワード・スプレッドで価格を調整して、円とドル、ユーロとドルなどを、一定期間、元本ごと交換する一種の有担保取引で、通常は流動性が高い。しかし、そのスワップ市場でも、年末を控えてドル資金の供給力が次第に低下してきた。  

 ユーロ/ドルの3カ月物フォワード・スプレッドは、EURIBOR3カ月物とドルLIBOR3カ月物の金利差に比べて、137.21ベーシスポイント(bp)もの格差が生じ、2008年11月末以来最大の乖離幅となっている。これは、市場でユーロが余る一方で、ドルが大幅に不足し、ドル調達コストが上昇している事実を鮮明に物語っている。 

 為替スワップと裁定関係にあるユーロ/ドルのベーシススワップが139.25(中心値)の気配を示しているのも、ドル調達圧力が強まっている表れだ。市場では、「欧州銀に対してスワップラインを一段と絞る金融機関も出ていて、ドル調達コストの上昇圧力は低下しない。各行がバランスシートを閉める年末にかけて心配が残る」(外為アナリスト)との声も聞かれる。  

  <長期ドル資金確保に走る金融機関> 

 短期市場でのドル不足を受けて、金融機関の間では長めの資金を確保する動きが広がっている。だが、カウンターパーティリスクや流動性リスクの高まりを受けて、長期のドル資金確保も容易ではない。

 「短期資金の調達には問題はない。ただ、長期資金をどのように確保できるのか、大きな疑問がある」。ドイツ銀行(DBKGn.DE)のアッカーマン最高経営責任者(CEO)は18日、投資家の間で長期投資に対する消極姿勢が高まっているため、欧州の銀行による長期資金の調達が一段と困難になっていることを認めた。 

 実際に、ドル/円の5年物ベーシススワップは21日、過去最高の100bpまでディスカウントが拡大した。ほんの数週間前の11月初旬の水準は75bp付近。急激な上昇は、円資金を持つ市場参加者が円との交換でドル資金を調達するコストが大幅に跳ね上がったことを示している。 

 具体的な動きとして、「普段はドル資金の出し手だった米銀が急に取り手にまわり話題になった」(邦銀)、短期のドル資金を調達し米国債などのドル資産に投資している邦銀が「ドル資金調達を長期化させた可能性がある」(外銀)などの声が市場から聞こえてくる。 

 一方、起債市場では、長期のドル流動性確保を目的とする非居住者の円建て外債(サムライ債)の起債が目立っている。円建て外債の発行者は、円での用途が無い場合には、調達した円資金をベーシススワップ等でドル資金に転換する。 

 米ゼネラル・エレクトリック(GE)(GE.N)の金融子会社GEキャピタル・コーポレーション(GECC) は17日、期間3年・5年の固定利付債・5年の変動利付債の3本建てサムライ債 (円建て外債)の発行条件を決定、総額681億円の調達をめざす。 オランダのラボバンク[RABO.UL] は、発行総額は895億円にのぼる期間3年・5年の固定利付・変動利付の4本建てサムライ債(円建て外債)の発行条件を8日に決定した。

  <中央銀行はドル不足を緩和できるか> 

 こうした市場のドル調達難を緩和するため、欧州中央銀行(ECB)は無制限のドル供給オペを実施している。米連邦準備理事会(FRB)は通貨スワップ協定に基づき、11月16日までの1週間に外国中央銀行に対して8億9600万ドルを供給した。このうち8億9500万ドルがECB向けだった。 

 だが、市場では焼け石に水との指摘も聞かれ、ドル不足解消には目立った効果を上げていない。一方、金融機関は増資等による自己資本の拡充を急いでいるが、「自己資本をいくら膨らませても、市場で調達しなければならないドルの規模が大き過ぎ、オフセット(埋め合わせ)出来ない」(金融機関)との指摘が出ている。

 急速に市場を覆いつつあるドル調達難の背景には、欧州ソブリン危機という構造問題に十分に対応できない政策当局への不信がある。今後、政策当局はどういう対応を迫られるのか。

 東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏は「FRBもECBも日銀も財政の肩代わりをして量的緩和を推し進め、流動性を供給し続けるしかないだろう」と見る。ただし、それは「各国の国民が生活を切り詰めずに、紙幣増刷がもたらすインフレで財政赤字を減らす試み」。金融緩和は本質的な問題解決になりえない、と同氏は断言する。

 市場の不安心理が収まらずドル不足が続けば、金融機関の破たんなどに結びつきかねず、さらには中小企業の倒産などの事態にもつながる。一方、今後は独国債や英国債も利回りが上昇し、米国債の格下げリスクも再浮上する懸念がある。斎藤氏は「国債の問題は国債を大量に抱える金融機関の問題でもあり、各国国債の利回りが上昇すれば、邦銀を含め金融機関は大きな損失を被るだろう」と予想、ソブリン格下げやドル調達難が続いて金融が委縮、実体経済にも悪影響を及ぼす事態を憂慮している。 

 (ロイターニュース 森佳子 編集:北松克朗)

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