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オリンパス「内視鏡神話」に揺らぎ、医師から不祥事に反発の声
2011年11月25日 / 13:28 / 6年後

オリンパス「内視鏡神話」に揺らぎ、医師から不祥事に反発の声

 11月25日、オリンパスによる損失隠ぺいの実態が次々と明らかになる中、同社の主力ビジネスに対し、ユーザーからの反発が広がっている。写真は都内で4日撮影(2011年 ロイター/Yuriko Nakao)

 [東京 25日 ロイター] オリンパス(7733.T)による損失隠ぺいの実態が次々と明らかになる中、同社の主力ビジネスに対し、ユーザーからの反発が広がっている。同社は消化器の検査などに使う軟性内視鏡で世界シェアが7割という圧倒的な市場支配力を持つ。

 しかし、今回のスキャンダルを知り、不正を犯した企業との関係継続を潔しとしない医療機関も出始めた。同社の内視鏡ビジネスを支えてきたユーザーからの強い信頼にほころびが生じつつある。 

 「事件の真相がしっかり解明され、経営陣が一新されなければ、代替がきく製品は同業他社のものに乗り換える」。岡山大学病院の河原祥朗・内視鏡医(46)はロイターの取材に対し、こう断言した。内視鏡は性能や慣れなどが優先されるため、医師は一度使うとなかなかメーカーを変えにくい。同氏も大学、研修医時代から今日に至るまで20年以上オリンパス製を使い続けてきた。 

 だが、オリンパスの損失隠ぺいとそれをさらに隠し続けた旧経営陣の対応を目の当たりにし、苦渋の決断をした。「医療機関が機器を購入する費用の元をたどれば、すべて患者さんの負担、健康保険、税金。そのお金が結果的に不正な買収費用として使われていたと思うと許せない。裏切られた気持ちだ」。 

 <医療関係者などから同調の声> 

 河原氏がオリンパス批判を公にしたのは今月8日付の医療ガバナンス学会のメールマガジン上だ。同氏は「オリンパス問題について内視鏡医はもっと怒りの声を上げるべきだ」と主張。「内視鏡医療に関わる関係者たちはオリンパスに対して真相解明の声をあげる権利があるし、そうすべき責任があるのではないか」と全国の内視鏡医に呼びかけた。この呼びかけに対して現在、医療関連業界から約100件に上る賛同の声が寄せられており、使い捨ての処置具などでオリンパス製品をやめる医師も出始めているという。 

 このメルマガの編集長で東京大学医科学研究所の上昌広・客員准教授(43)によると、読者は医療関係者を中心に政治家、スポーツ選手など多分野にわたり、約5万人に配信。作家の村上龍氏などもリンクを張っており、多いときには100万人に読まれているという。「医療現場に携わる方々が抱える問題や意見を多くの人に知ってもらうのが目的」で、上氏も「今後、オリンパス製を使わなくなる病院は増えていくだろう」とみている。 

 河原氏は20日付のメルマガでもオリンパス問題について言及。「医療機器を製造販売するからには通常のメーカー以上の倫理観、コンプライアンス遵守が求められる。しかもこれほどの寡占状態であればなおさらだ」と指摘した。「医療機関が一度ブラック企業のイメージがついた会社のものを今後も患者さんのために購入し続けるとは思えない」、「シェアが少なく非力であった同業他社のものにシフトしていく医療機関も増えていくだろう」などと述べ、オリンパスへの反発がさらに広がるとの見方を示した。 

 <内視鏡で治療すればするほど病院は赤字> 

 オリンパスは内視鏡本体だけでなく、内視鏡の消毒洗浄機や検査用の各種デバイス、カルテ用画像ファイリングシステムなどほぼすべての関連製品を提供している。これらの供給が止まれば、消化器診療はできなくなる。河原氏は、オリンパスは独占状態ゆえに「値引きはほとんどしない」といい、「内視鏡で治療すればするほどオリンパスは儲かり、病院は赤字が増える」と厳しい現状を吐露する。 

 オリンパスにとって、内視鏡などの医療事業は、営業利益率で20%程度を稼ぎ出す屋台骨だ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券(6月時点)では、オリンパスの軟性内視鏡ビジネスについて、すでにシェアが高い先進国は年率3-4%、新興国では同20%以上の売り上げ拡大がありうると想定。軟性内視鏡の処置具でも世界の市場規模は10%程度の成長と予想し、オリンパスは最低でも10%以上の販売増が可能との見方を示している。 

 外科で使われる硬性内視鏡は参入が遅れたこともあり、同社のシェアは25%と比較的低い。オリンパスにとって同分野の開拓は今後の経営課題で、電気メスメーカーの英ジャイラスを買収したのもこの市場拡大が目的だったという。だが、今回の不祥事により「オリンパスの士気が下がっている感じがあり、積極的な営業もかけにくくなっているようだ」(都内の某大学病院医師)との声も聞かれる。

  <社員の鼓舞に必死> 

 高山修一社長は8日の損失隠しを認めた記者会見で、「このような事態になってもオリンパスの事業の価値はまったく毀損(きそん)していない」と強調した。だが、あるオリンパス社員は「圧倒的に顧客からは批判の声が多い。会社側は営業部隊に対して、客から応援メッセージを取って来いとはっぱをかけていた」と打ち明ける。 

 高山社長は社長就任以降、たびたび社員に向け士気高揚のメッセージを発信している。ロイターが入手した17日付のメッセージで、同社長は不祥事を受けてオリンパス製品の導入が見送られた事例があったことを報告。また、「病院を訪問すると、『何をしに来た!』『今回は多大な迷惑を社会にかけている』と一喝されました」といったエピソードなどを紹介し、最後は「全社一丸となってこの危機を乗り切っていきましょう」と呼びかけた。 

 <自らシェア落とす可能性も> 

 医師らによると、内視鏡関連製品は買い替えサイクルが短いもので3年、システム一式では6-7年と長いことに加え、高額なこともあって、すぐ買い替えられるものではない。このため、オリンパスの内視鏡ビジネスの優位性が一気に崩れる可能性は少ないといえる。 

 残るシェアの15%ずつを分けるHOYA(7741.T)傘下のペンタックス、富士フイルム(4901.T)とのシェア格差は大きく、2社がオリンパスにすぐに追いつくのは難しい。ただペンタックスは地道に売り上げを伸ばしている。4-9月期は内視鏡最大の欧州市場で増収、成長が見込まれる南米を含めた米州市場での売上高は前年同期比40%増と好調だ。「足元も引き続き堅調で、マーケティング分野などでHOYAと一緒になった成果が表れ始めている」(同社広報)という。 

 オリンパスは自ら成長機会を逃し、「中長期的にじわじわと牙城が崩れていくことも否定できない」(証券アナリスト)。オリンパス側は、医療機関を中心とするユーザーの反発について、「医療事業は従来通り機能している。お取引先にご迷惑をかおかけすることなく、全社一丸となって取り組んでいく」(広報)と話している。 

(ロイターニュース 白木真紀;編集 北松克朗)

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