Reuters logo
日銀展望リポート、基本シナリオ維持も下振れリスク増大に言及へ
2007年10月17日 / 10:06 / 10年前

日銀展望リポート、基本シナリオ維持も下振れリスク増大に言及へ

 10月17日、日銀が10月末に発表する展望リポートでは、基本シナリオは維持されるものの下振れリスク増大が言及される見通しに。写真は福井総裁。11日撮影(2007年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 [東京 17日 ロイター] 日銀が10月末に発表する展望リポートでは、日本経済について潜在成長率をやや上回るペースで息長い成長を続けるという基本シナリオは維持されるものの、下振れリスクの強まりが織り込まれる可能性が高い。

 米国経済を含めた世界経済の減速リスクの増大や、賃金の上がり方が予想より鈍く、家計部門の弱さが続く可能性があるためだ。ただ、経済・物価の改善度合いに応じた金利調整を実施するとの方針に変わりはなく、追加利上げのタイミングは、米経済を中心にした世界経済の動向や金融市場の安定性回復の状況をにらみながら判断することになりそうだ。

 <海外経済と賃金動向、下振れリスクが顕現化>

 「上振れリスクより下振れリスクの方が強まっているのは事実」 。日銀内では、展望リポートに向けてリスクを整理しつつある多くの幹部がこう指摘している。

 基本的には、世界経済の好調に支えられた輸出を起点として「生産・所得・支出の好循環の下で、息の長い成長が続く」という基本シナリオを変える必要はない、というコンセンサスだ。しかし、4月の展望リポートで挙げられた海外経済と賃金動向の2つの下振れリスクがこの半年間で顕在化している。

 福井俊彦総裁は、11日の記者会見で「米住宅投資の調整が最終的に価格の面でどの程度強く出るか、最大の不確定要因を残している」と述べた。

 4月の展望リポートで指摘していた米国住宅市場の悪化から景気が一段と減速するリスクは現実のものとなり、シナリオは悪い方向に転んだ。しかもその影響の深さはまだ見えていない。住宅の在庫はすでに高水準だが、販売の落ち込みが続いるため一層の積み上がりから住宅価格の下落はこれから出てくると見られているためだ。福井総裁は住宅価格の下落による米個人消費への影響がどの程度まで広がるのか、いつ収束するのかにより、世界経済、ひいては日本経済にこれまで以上に大きな影響が出ることを警戒感を示した。

 一方、国内面では、4月のリポートで指摘した賃金上昇テンポが高まらず物価への下押し圧力となるとの見方が現実化している。労働需給はタイト化しているにもかかわらず、一人当たり賃金はなかなか上昇しない。福井総裁も「賃金を通じた家計部門への還元は想定よりもいくばくか弱まりつつ推移している」と認めているように、個人消費の弱さの一因となっている。コスト上昇を価格転嫁できない中小企業の収益が圧迫され、賃金が上がらないという面が影響している可能性がある。

 <07年度GDPとCPI、下方修正の可能性>

 こうした下振れリスクの強まりは、成長率や物価の見通しにも影響を与えそうだ。米経済の減速は「全く影響がないというわけにはいかない」と多くの幹部が指摘しているように、4月時点での政策委員見通しの中央値である07年度2.1%成長が多少なりとも下方修正される可能性が高い。さらに15日の支店長会議において、ほとんどの地域で地価の上昇や改正建築基準法に伴う住宅投資の減速が報告され、こうした影響もテクニカルな要因があるとはいえ、成長率を押し下げると見られる。

 物価見通しは、賃金が上昇しない一方で原油価格や食料品価格が上昇し、これを相殺して予想に近い動きとなるとの見方もあるが、幹部の中には「CPI(消費者物価指数)は予想を下ぶれる可能性がある」との声も出ている。今までのところ日銀ではCPIについて「より長い目でみるとプラス幅が次第に拡大すると見られる」との判断を示しているが、それがいつになるかで物価の見通しも変わってくる。

 <政策委員会内で利上げ姿勢に食い違い>

 米経済向け輸出が減速しているにもかかわらず、輸出全体をみると新興国を中心に力強い伸びを維持していることを背景に、日銀では息の長い成長シナリオを維持できると見ている。このため金融政策のスタンスとしては、長期的に「金融政策面からの刺激効果が一段と強まる可能性があり、徐々に金利調整を行う」との方針は維持されることになる。

 しかし、次の利上げのタイミングについては、政策委員の間でも考え方に違いがある。水野温氏委員は一貫してサブプライムローン問題と日本経済とは関係がないとの立場で利上げを提案し続けているほか、須田美矢子委員は津市での講演で、将来の過熱リスクに備える姿勢を鮮明に打ち出した。現行の金融政策の緩和効果が強すぎて、副作用が顕在化してから利上げを実施したのでは「遅すぎる」との見解も日銀内では根強い。

 一方で岩田副総裁は「上方・下方リスクのバランスがどのように変化しているのか」を重視したいと指摘し、下方リスクの強まりを意識している。物価が上がりにくい状況となっているため、利上げを急ぐ必要はないという幹部もいる。

 米経済を中心にした世界経済の動向、サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン )の影響を払しょくしきれない金融市場の行方などにも目を配りつつ、利上げの判断をいつするのか、日銀はきわめて高度な政策判断を迫られている。

(ロイター日本語ニュース 中川 泉)

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below