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快走スズキに金融不安の大波、インドやGMも波乱要因
2008年10月1日 / 10:43 / 9年前

快走スズキに金融不安の大波、インドやGMも波乱要因

 10月1日、快走を続けてきたスズキが、米金融不安を発火点とした世界的な景気減速の大きな波に飲み込まれようとしている。写真は鈴木修会長。2006年8月撮影(2008年 ロイター/Michael Caronna)

 久保 信博記者 

 [東京 1日 ロイター] インドでの好調を背景に快走を続けてきたスズキが、米金融不安を発火点とした世界的な景気減速の大波に飲み込まれようとしている。急成長を遂げてきたインドでの販売に急ブレーキがかかっただけでなく、原油高で北米での大型車投入計画にも狂いが生じている。

 提携先のGM(GM.N)にも金融不安の影響が押し寄せ、スズキの成長シナリオを揺るがせており、今後の世界的な自動車業界の情勢次第では、再編の嵐に巻き込まれる可能性もある。

 <世界生産40カ月ぶり前年割れ>

 「インドが良かったのは昨日の話。これだけ世界的に不況になるとすべてに影響が出てくる。例外はない」──。リーマン・ブラザーズの破たんで金融不安が高まる9月中旬、スズキの鈴木修会長はロイターの取材でこう語った。

 北米への依存度が高いトヨタ自動車(7203.T)やホンダ(7267.T)が苦戦する中、総販売台数の3割弱をインドで売るスズキは独り好調を維持してきた。しかし、金融市場の混乱や原油高を背景に、インド経済にも変化が表れ、インフレを懸念する政府が今年6月、7月と計3回の利上げに踏み切り、活況だった消費に水を差した。6月の新車需要は前年比横ばいと急減速し、7月と8月は2カ月連続で前年実績を下回った。現地子会社マルチ・スズキ(MRTI.BO)の販売台数も8月はマイナスに転じた。スズキが強いパキスタンも政情不安から販売が落ち込み、8月のスズキの世界生産台数は40カ月ぶりに前年を割り込んだ。

 タイミングが悪いことに、スズキは10月からインドの生産能力を増強する。燃費効率の良い小型の新モデルを製造し、欧州にも輸出をするが、西欧市場も低迷しており、アナリストからは在庫の増加を懸念する声が聞かれる。鈴木会長は「ここまで来たら止められないが、(フル稼働に引き上げるペースは)売れ行きを見ながら調整する必要があるだろう。当初の計画通りというわけにはいかない」と語る。

 もともとスズキは2009年3月期に9期ぶりの営業減益を見込んでいた。だが、期初に想定していたマイナス要因は原材料高と円高で、インドをはじめとした新興国の減速は予想外の展開と言える。鈴木会長は、競合他社も苦戦していることを引き合いに出した上で、今年度の計画達成について「当社もご多分に漏れない。スズキだけが特別に良いということはない」と述べ、厳しく見ていることをうかがわせた。

 <大型車戦略は慎重に対応>

 世界経済の変調は、フルラインメーカーへの脱皮を図るスズキの新たな戦略にも影を落としつつある。同社は軽自動車や小型乗用車を得意としてきたが、利益率を高めるために中・大型車を取りそろえることが課題となっていた。そこで2年前、従来よりも大型の世界戦略車の開発プロジェクトに着手。第1弾として2010年に北米に投入する計画を立て、各国の自動車ショーに「キザシ」の名前で試作車を出展。スズキが変化する「兆し」を印象付けようとしていた。

 ところが原油の高騰で、自動車需要は燃費効率の良い小型車へ一気にシフト。ビッグスリーやトヨタ、日産自動車(7201.T)は北米で大型車の減産に追い込まれている。鈴木会長は「各社が減産に入っているのに大きい車を作るのはばかげたこと。危険だというのに飛び込むやつはいない」と発言。「研究開発というのはゴルフのスイングと同じで途中では止められないので、ドライバーだけは一度打っておいて、セカンドショットをどうするか考える」と述べ、当初の計画よりも慎重に進める方針を明らかにした。

 <嫁ぎ先が決まっていないスズキと三菱>

 提携先のGMの動向も、スズキにとって波乱要因だ。スズキはGMとの緩やかな提携を維持することで、経営の独立を保つとともに、環境技術の開発負担を抑えてきた。GMは2006年にスズキ株17%を放出したが、今も3%を保有し、業務提携を継続している。しかし、原油高による大型車不振に加え、今回の金融不安が追い打ちをかけ、GMの先行きは予断を許さない状態だ。GMは大型車「ハマー」ブランドや工場の売却、連邦政府からの低利融資などを大きな構成要素として資金調達を計画しているものの、金融市場の流動性低下は深刻で、日系メーカーのある関係者は「(GMの)成り行きを注視している」と言う。

 鈴木会長によると、GMのフリッツ・ヘンダーソン社長は「スズキ株は、資金繰りが必要でも手放さない」と話しているという。一方で鈴木会長は「スズキが生きていく最善の策ならば、あらゆる選択肢を検討する」と語り、GM以外と資本提携する可能性も否定しない。

 自動車業界は環境規制がますます厳しくなり、欧州各国は二酸化炭素(CO2)排出量に応じた環境税を続々と導入しつつある。トヨタやホンダはハイブリッド戦略を加速して乗り切ろうとしているが、スズキは今も明確な環境対策技術を打ち出せていない。環境技術開発へのばく大な投資をスズキ1社でまかなうのは現実的ではなく、日系メーカーの別の関係者は「日本のメーカーで嫁ぎ先が決まっていないのは三菱自動車(7211.T)とスズキの2社。どう動くかが注目される」と指摘している。

(ロイターニュース 久保 信博記者;編集 田巻 一彦)

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