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金融サミット:識者はこうみる
2008年11月16日 / 05:55 / 9年前

金融サミット:識者はこうみる

 11月16日、金融サミットは15日、世界金融システムの改革達成へ協力することなどを盛り込んだ首脳宣言を採択して終了。15日、ブッシュ米大統領(2008年 ロイター/Jonathan Ernst)

 [東京 16日 ロイター] ワシントンで開催されていた緊急首脳会合(金融サミット)は15日、世界経済の成長回復、世界金融システムの改革を達成するため協力することなどを盛り込んだ首脳宣言を採択して終了した。市場関係者のコメントは以下の通り。

●景気刺激策にもう一段の踏み込み必要

<野村証券 シニアストラテジスト 冨永敦生氏> 

 新興国、途上国に対する支援や全体的な政治的理解、国際通貨基金(IMF)へのコミットメントなど、議論の方向性としてはよいもので、株安を防ぐ内容というイメージだ。今後はこうした課題がどう具体化されていくかが焦点となるだろう。ただ、財政政策など景気刺激策は各国に任せるということにとどまってしまったので、もう一段踏み込んだ対策を打ち出してほしかった。

 週明け以降のマーケットへの影響としては、景気に対する強い対策が出るなど踏み込んだ内容にならなかった分、債券市場の底堅さを覆す材料ではない。特に円債については超過準備への付利が始まる影響もあり、中短金利を中心に金利は低下しやすい。

 声明の中で目を引いたのは、閣僚および専門家への指示の中の「規制政策における景気循環増幅効果の緩和」という部分。金融安定化フォーラム(FSF)でも取り上げられた問題だが、景気が良いときも悪いときをも考慮した規制となれば、場合によっては時価の否定ということにもなる。そうなれば、マーケットにとっては短期的には安定する要因だが、長期的に見れば市場の収縮につながることになる。時価と会計とのからみで、今後は重い問題になってくるだろう。

●即効性ないが、ドル安定すれば株価にプラス

<SMBCフレンド証券投資情報部部長 中西文行氏>

 金融サミットでは12月期決算をにらんだ即効性のある対策が打ち出されなかったという印象を受ける。しかし、首脳宣言などを通じて基軸通貨としてのドル擁護の姿勢は感じられる。ドル安による世界経済の混乱が回避されれば、日本にも国益になる。週明けの株式市場は為替次第だが、ドルが落ち着けば株価にはプラスだろう。

 首脳宣言では状況に応じた財政政策の活用が盛り込まれた。これは米国に向けたメッセージと考えられる。財政政策では保護主義に走りがちだが、自由貿易を堅持する姿勢を示したことは評価できる。総じて言えば、今回の金融サミットが株式市場に与える影響はニュートラルだが、G20が危機克服に向けて協調行動を取ることが確認された点は前進だったとみている。

●各国の対策見極めへ、株安続けば円高リスク

<バンク・オブ・アメリカ 日本チーフエコノミスト兼ストラテジスト 藤井知子氏>

 金融サミットで即効力のある政策は出なかった。危機を押さえようとする努力は認められるが事態が改善するまでには踏み込めず、景気回復の出口がまったく見えない状況は変わらない。市場の事前期待が小さかったため特段の失望感はないが、サミットはポジティブサプライズも作れなかったといえる。問題は継続協議となった印象が強く、結局は各国が対策を打ち出さないと厳しいとの評価にならざるを得ない。

 景気刺激策を各国が策定するお墨付きは与えられた形で、例えば英国では月内に大規模な財政出動があるだろうし、米でも新政権が何かしらの対策を打ち出すだろうが、それはサミットがなければやらなかったということでもない。国によって打ち出せる対策には温度差があり、政策が手詰まりとなって金融政策に頼らざるを得ない国もあるだろう。世界的に厳しい株価展開が続く可能性がある。通常ならその通貨売りの反応となるが、今回はリスク回避が円高につながる。株安を通じた円高リスクは残っている。

 多くの国が規制の「方向」で合意できたことは評価できる。日本の市場関係者が関心を見せるかはわからないが、新興国の発言力が増したこと、先進国がそれを認める形となったのは、ひとつ前進だろう。今後、為替や経済見通しを考える上で変化が生じることだと思っている。

●危機感背景のドル需要で90円台前半サポート

<みずほ総研 シニアエコノミスト 山本淳氏>

 規制のあり方をめぐり米欧間の主張に食い違いがあるとみられていたが、規制強化を主張していた欧州にやや近いとの印象を受ける。米国にとっても、エンロン問題以降は規制強化の機運もあり、金融危機によって、そうした機運が再び高まってきたと言えるのではないか。財政施策については、金融収縮を防ぐためには金融政策だけでは難しく、大きな借り手が必要になってくるので、処方せんとしては正しいと評価する。

 金融市場はサミットというイベントを終え、これから実体経済にテーマが移るだろう。実体経済が悪化していくと、結局は金融システムに跳ね返ってくることになるので、経済指標を丁寧に点検していくことが重要だ。ただ、米国はITバブルの傷を住宅バブルで治したが、今度はその住宅バブルがはじけた。日本のバブルよりも規模が大きいことを考えると、米経済が立ち直るにはかなり時間がかかるとみている。米政府は対策を講じるのが早いので、日本の「失われた10年」まではかからないかもしれないが、それでも数年単位で考えなければならないだろう。

 そうした点を踏まえ、外為市場は円が買われやすい地合いが続くと予想している。年末までは経済指標を点検していく過程で、リスク回避からドルと円が買われる展開となるだろう。マーケットなので、勢いがつけば一時的に90円割れの可能性もある。しかし、危機感が強まると、理屈には合わないがドルの需要も高まるので、結局は90円台前半でサポートされるとみている。一方で、欧州では米国からやや遅れて実体経済の悪さが顕在化してきた。利下げ余地のある欧州通貨の影響をみておく必要もある。

●総花的な理想論、参加国多く具体論に踏み込めず

<JPモルガン・チェース銀行 チーフFXストラテジスト 佐々木融氏>

 サミットでうたわれた透明性および説明責任の強化や健全な規制の拡大、公正性の促進などは、先行きに向けた理想論だ。今回発生した金融システム危機の原因究明と対策が今後の議論の方向性として示され、行動計画が示す議論のあり方もわかるが、現在の問題は「今をどうするか」だ。その観点から言えば、サミットは何もなかったに等しい。

 時間軸を設定して先行きの方向性を打ち出した点、「状況に応じて即効的な内需刺激の財政施策を活用」としたことなどは評価できる。しかしサミット宣言は総花的だ。多くのことが網羅はしてあるが、目先の経済に即効性のあることは何もない。やはり多くの国が集まると、具体論は出ないのかという印象を受けている。多くの国を交えて議論することはもちろん必要だが、タイミングは今ではない。それはもっと平時に実施するべきだ。

 為替市場ではサミットへの事前の期待感があまりなかったのでネガティブサプライズはないが、気になるのは株価動向だ。前週末のNY市場の引けにかけて米株が大きく下落したのは、サミット参加国の見解に相違があるとの報道が一因となったようだ。仮に株式市場がサミットにかすかな望みを持っていたとして、ITバブル崩壊後の安値に接近している米株が失望から下げに転じれば、為替市場ではドルと円が同時に強含む流れが再来する。今後1―2週間くらいのうちに各国が相次ぎサプライズな景気刺激策を打ち出してくるようなら状況は違うが、それも考えづらい。米国の不良資産救済プログラム(TARP)の使い道が不透明になってきたことも懸念材料だ。

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