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白川日銀総裁記者会見の一問一答
2009年5月22日 / 09:39 / 8年前

白川日銀総裁記者会見の一問一答

 [東京 22日 ロイター] 日銀の白川方明総裁は22日、金融政策決定会合後の記者会見で「崖から落ちるとか、あるいはフリーフォールと、そういった状態はとりあえず過ぎ去りつつある」としたうえで、4─6月期GDPについても大幅改善を予想した。しかし、景気の先行き見通しについては、在庫調整が終了した後の最終需要の強さに不確実性が高いと指摘し、引き続き下振れリスクに注意を促した。今回の景気表現の変化については、上方修正と言い切ることには疑問を呈した。

 会見の詳細は以下の通り。 

 ──今回の決定に至った経緯を説明してほしい。景気判断も上方修正したようだが。 

 (「当面の金融政策運営について」を読み上げ)「(今回の景気の表現について質問者が)上方修正したと言っていたが、上方修正という言葉の定義によると思うが、色々な表現があるが、崖から落ちるとか、あるいはフリーフォールと、そういった状態はとりあえず過ぎ去りつつあると思っている。展望リポートでは、わが国経済は悪化テンポが徐々に和らいで、次第に下げ止りに向かうとみられるという表現をしている。ほぼ、そうした予想通りに足元の状況が変化をしているということだ。そういう意味で、上方ではあるが、これを修正と言うのかどうか、われわれの予想通り展開しているので、上方修正という言葉になじむのかなという感じはするが、とりあえず、今日の決定会合での決定の内容は以上の通り」

 ──1─3月期GDPの大幅下落で景気は底を打ったとの見方あるが。

 「景気が底を打ったという言葉自体が文学的表現なので、文学の定義をしないと中々難しい。確かに1─3月GDPは、内外需の不振から前期比年率でマイナス15.2%と過去最大の減少率となった。4月末に公表した展望リポートにおいては、こうした厳しい姿については予想しており、その数字自体は概ね予想に沿った結果だったと受け止めている。足元では、内外の在庫調整の進捗を背景に輸出や生産は下げ止まりつつあり、先行きは経済全体としても、悪化テンポが徐々に和らぎ、次第に下げ止まっていく可能性が高いと判断している。したがって実質GDP成長率という数字についてみると、4─6月期は1─3月期に比べて大幅に改善するとみられる。もっとも景気の先行き見通しについては、在庫調整が終了した後の最終需要の強さがポイントになってくると思う。この点については不確実性が高いということで、私どもとしては下振れのリスクに注意しながら、状況を見ていく必要があると考えている。底入れ、底打ちということについては、今の回答で答えにかえたい」

 ──米当局の大手行に対するストレステスト(健全性審査)の評価と日本のメガバンクの増資に対する見方は。

 「日本の経験を踏まえると、不良債権問題の解決に向けて、金融機関の資産評価を厳格に行うとともに、不良資産を迅速に処理し、バランスシートの不確実性を除いていくことが必要。その過程で自己資本が毀損(きそん)した場合には、速やかに回復し、十分な自己資本基盤を維持していくことが重要。そうした意味で、米当局によって行われたストレステストは、先行き2年間の共通のより悲観的な景気シナリオを前提に、2010年末までを見通して現時点で必要な自己資本の額を示したもの。これは日本の経験に照らしても必要なステップであり、米国の金融システムが安定化に向かうことを期待している。こうした結果を受けて米国の金融機関は自己資本の調達を行っている。自己資本の充実を行うこと、あるいはその中で、中核的なコアとなる自己資本を充実させていくことは望ましい」

 「日本の金融機関についての評価だが、円滑な金融仲介機能を発揮する上で、自己資本基盤の強化を図ることが重要。この点は、昨今の厳しい経済・金融環境の下であらためて認識が高まっている。その意味で、大手金融機関を中心に打ち出されている増資などによる自己資本基盤の強化策が実現していくと、日本の金融システムの一層の安定確保を図る上で、重要なステップになると思っている」

 ──これまでの金融危機対策では期限を設けていたのに、外国債の適格担保化で期限を設けなったのは、市場が利上げの時期を探るときなどに悪影響がでることに配慮したためか。

 「近年、国際金融市場の混乱や機能不全を契機にして、金融安定化理事会においてクロスボーダー担保の受け入れによる流動性供給の実現が各国中央銀行の検討課題とされてきた。こうした中で、主要国の中央銀行では外国国債を適格担保化について検討を進めてきたということがある。昨年9月の決定会合後の会見でもこうした質問を受けており、ずっとクロスボーダー担保の検討を進めてきて、ようやく今日ここまで至ったということ」

 「国内外の金融市場は改善の方向にはあるが、なお不安定であることを踏まえて外国国債を臨時に適格担保とすることにした。今回の措置は金融市場の情勢に応じて適格担保を拡大することにより、金融調節の一層の円滑化をはかり、これを通じて金融市場の安定確保に資することを狙いとしている。今回適格担保とする外国国債は日本銀行の決済に伴う与信、日中当座貸し越しなど、調節以外の担保としても利用できるようにすることから、資金決済の円滑さの確保として金融市場の安定にも貢献すると考えている」

 「この担保がどの程度使われるのかということもみていきながら、実務的なこともふまえながら、考えていきたい。今回の措置は臨時のものといったが、先ほどのご質問のような配慮で期限を定めていないということはまったくない」

 「諸外国をみてみると、FRBが恒常措置として主要国の国債を受け入れているが、イングランド銀行は臨時の措置として受け入れており、対応はまちまち。いずれにしても主要国の中央銀行はクロスボーダーの国債担保を受け入れる方向で検討しているか、あるいは必要な措置をとってきている」

 ──国際金融市場の不安要因についてどうみているか。 

 「ポイントは金融システムと実体経済の負の相乗作用をどういうふうに評価するか、あるいは経済全体に残っている不均衡の調整がどの程度進んでいくのかということ。現在金融市場は少しずつ安定化しているが、これは昨年秋以降のリーマン破たん以降の極端な信任の崩壊や信用収縮が徐々に収まってきて少しずつ安定してきているということ。が、先ほど申し上げたような不均衡の調整というのは時間のかかるプロセスだと思う。金融と実体経済は双方に影響を及ぼしあうわけだが、昨年秋以降は特に金融から実体面に大きく影響を与えたと思う」

 「とりあえず金融システムが少しずつ安定してくると、今度は実体経済が金融機関の資産内容にどのように影響を与えてくるのかがポイントになってくると思う。不安材料をあげると、たとえば商業用不動産の価格がまだ下がっている、これが資産内容にどういうふうに影響を与えていくかということが言われているが、先行きいろいろなシナリオが考えられるが、実体経済の動きを注意深くみながら金融機関の状況をみていくということだろうと思う」

 ──日本のメガバンクの増資について資本効率が落ちているとの指摘もあるが。

 「特定の金融機関の増資の計画についてコメントすることは控えたい。一般論として、どの国の企業あるいは金融機関であっても、普通株を発行し、増資が成功するかどうかは、将来、どの程度、収益を稼ぐ能力があるかということに関する市場の評価にかかっている。静態的な利益を前提として株数が増えることだけを考えると、株価収益率、株価は下がっていくが、金融機関のバランスシートに残る不確実性を小さくし、その上で将来のビジネスモデルを提示できれば、普通株増資はできる」

 ──金融機関の貸し出し態度の現状と先行きをどう見ているか。

 「金融機関の貸し出しは昨年末以降、伸び率が高まり、現行統計開始以来、最も高い領域で推移している。一方、景気が悪化して信用コストが高まってきていることや、少し前までの株価下落で自己資本の基盤が圧迫されるかも知れないという懸念が、金融機関の貸し出し姿勢の積極度をその分、押し下げる要因としてはある。しかし、現実には、金融機関はかなり貸し出しを増やしていった。その背後には、政府の緊急保証制度があり、日銀を含めた政策当局による各種の支援措置があると思う。景気の動きが信用コストの動きを規定する、金融市場の動きが株価の動きを規定する。今後は、こうしたものによって金融機関の貸し出し姿勢が影響を受けると感じている」

 ──総裁の金融政策についての考え方だが、FRBビューよりBISビューに近くなっていると思える。 

 「便宜的に私自身もFRBビューとか、BISビューとかの言葉を使ったが、明確にBIS自身が、これがわれわれのビューだ──と言っているわけではない。ただ私の気持ちとしては、当時も今もあまり変っていないという気がする。いろいろな国際会議に出て感じるのは、この一年間で随分と政策当局者あるいは学会の議論は変ったなという感じがする。問題は、どのようにして対応すべきかということで、一言で言うとマクロプルーデンスというような言葉で金融政策の面でも、金融システム政策の面でも、いろいろな議論が進みつつあるが、まだ議論を行っている段階だ。問題の所在は指摘できるが、どう具体的に改善を図っていくのかということが、これから数年間の最も大きな課題だと思う。ご質問の点については、私は中間で変っていないということだ」

 ──クロスボーダー担保の決定は、米国債の格下げ懸念など国際的な債券市場の動向が影響したのか。

 「最近の海外の国債の格下げが、今回の決定の要因としてあったのかとのお尋ねだが、それは全くない。ずっと検討してきた。検討が済み次第、早く実行したいとの気持ちを持っている。それが、たまたまこのタイミングであったということだけだ。大きな流れとして、金融市場のグローバル化が進んでいるということがある。それから、特にここ1─2年、国際金融市場が動揺しており、その中で中央銀行が流動性を円滑に供給できる体制をつくっておいた方がいい、という大きな流れの中で出てきたということに尽きる」

 「国際的な債券市場の動きが、日本銀行の政策判断に影響を与えているのか、ということだが、債券市場の範囲にもよるが、社債市場や証券化商品市場などの動きについては、一昨年のサブプライムローン問題が起きてから、問題の核心だった。そういう意味で、政策判断をかたちづくる一つの金融市場の大きな要素だったと思う。お尋ねの趣旨が主要国の国債金利自体が対象なのか、ということであれば、それだけを除くことはないが、それが主たる要素であったわけではない」

 「この数カ月間の欧米の長期国債金利の動きを見ると、若干、上がってきており、景気について大幅な落ち込みが終わってきて、少しずつ明るい材料が出てきている結果、先行きの経済の見通しが少しずつ明るくなってきていることを反映していると思う。この間、FRB、イングランド銀行の長期国債の買い入れがあったが、少し期間を均して考えると、長期国債金利は、経済成長率やインフレ率の先行きに対する市場参加者の見方が決めるとあらためて物語っていると思う。一般的な話として、長期金利が語っているシグナルを受け止めていく姿勢が大事だと思っている」 

 ──4月の決定会合で、一部の委員がCPの金利が国債金利を下回っている点を指摘しており、さらにトリプルBの社債発行も再開される見通しだが、(CP・社債)買い入れの基本的な考え方で定められている著しい市場機能の低下とは合わなくなってきているようにみえる。 

 「CP・社債市場で二極化と言うべき現象が起きているように思う。上位格付けについては、条件も良くなって、発行量も増えている。下位格付けについては、まだ発行が基本的にはできない状況だろうと思う。われわれとしては、例えば社債について、今トリプルB格の話があったが、発行の裾野が広がっていくことを期待している。ただ現状、トリプルBの社債発行についても、確かにトリプルBが出ることはプラスだが、業種という面で広がりがあるわけではない。そういう意味で、かつてのような状況に社債市場が戻っているとは判断していない」

 ──今回の景気判断は、リスク要因として不確実性があると指摘している。4月の展望リポートで指摘した程度の不確実性が続いてるのか。 

 「私自身の受け止め方としては、不確実性の度合いがこの20日間で変わっているとはみていない。従来と同じように不確実性が大きいということ」

 「この1カ月弱の間に主要中央銀行が出した見通しをみると驚くほど似ている。数字が似ているということではなく、先行きの成長率の経路とか、そもそも成長率というような特定の数字に焦点をあてずに全体のメカニズムを言うときに不確実性がこれほど大きいということなど似ている。全体として不確実性が大きいと今受け止めて見通しを語ることが適切だと思う」

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