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再送-〔焦点〕新成長戦略にIT化遅れの危機感、生産性上げや産業再編に期待
2015年6月11日 / 09:24 / 2年前

再送-〔焦点〕新成長戦略にIT化遅れの危機感、生産性上げや産業再編に期待

(この記事は11日午後6時26分に配信しました)

[東京 11日 ロイター] - 安倍晋三政権が打ち出した2015年度「日本再興戦略」は、先進国で進むデジタル化の波に遅れをとった日本経済への危機感で満ちている。モノのインターネット化(IoT)や情報化(ICT)によって、企業の生産性向上や医療のムダ排除、所得・資産に応じた公的負担見直しを図り、産業再編や財政再建につなげることを目指す。ただ、サイバー攻撃が相次ぎ、データ共有への企業や国民の理解は、かなりの困難を伴うとの指摘もある。

<世界的に進むIT時代、深刻な欧米との格差>

今年の成長戦略策定に向け、政府の産業競争力会議では、人口減少時代を念頭において成長力強化に向けた幅広い分野におけるIT化、働き方の改革、人材強化などを議論してきた。今回、その結果を骨子に盛り込んだ。

さらに高齢化時代を迎えて、マイナンバー制度を活用した医療や介護の情報化による医療費削減、人手不足対応でのロボット導入についても、取り組みを強化する。

今回の成長戦略と昨年の内容を比べると際立つのが、ITの活用分野だ。これまで日本が官民ともに、米国やドイツに比べ、取り組みが大きく遅れてきた分野でもある。

伊藤元重・東大大学院教授は「日本企業は、大きな構造変化に対応できていなかったということが言われている。構造変化の大きなものは、IoTであり、グローバル化であり、少子高齢化だ。その中のICTの遅れが深刻だが、逆に言えば差を埋めれば、相当なチャンスがあるということ」だと指摘する。

<医療データ化と企業のIoT取組は急務>

今回の成長戦略で特に政府が力を入れているのが、医療分野のデータ化。すでにドイツでは、03年以降「電子的保険カード」により国民ひとりひとりの医療保険資格や医療情報がわかる制度が始まっている。

  産業競争力会議では、来年1月から導入されるマイナンバー制度を活用し、2017年度をめどに検診データの連携や予防接種履歴の共有などを始めることが議論されてきた。

また、医療保険の効率化は、オンラインによる資格確認などで推進。2018年以降に医療機関や介護事業者等の連携、医療研究にも役立てることを目標としている。

医療介護情報が民間に提供されれれば、ヘルスケア産業も活性化し、民間経済の成長にもつながるとみられている。

  さらにロボット活用やIoTへの取り組みは、米国のGE やグーグル 、アマゾン といったIoT先行企業を手本に、あらゆるモノをインターネットでつなぎ、個別顧客に対応した事業展開が期待されている。

すでに日本企業でも、従来以上にインターネットによる大量の情報のやり取りが予想されるため、少ない通信量で管理できる技術が開発されている。

また、企業間で情報を共有するプラットホームにより生産の効率化を図る動きも出てきている。

小売業では、ユニクロを展開するファーストリテイリング が、個別の顧客の需要に対応すべく大規模な流通倉庫を東京・有明地区に建設する計画だ。

9日に閣議決定された「ものづくり白書」も、データ収集、解析、処理というサイクルの中で新たな付加価値が生み出されあらゆる分野で競争領域が変化しているにもかかわらず、日本の製造業におけるIT利活用は諸外国に比べ遅れていると指摘した。

経済産業省が中心となって、IoT取り組みに必要な規制緩和やセキュリティ強化に力を入れていく。

<マイナンバー活用の課題、個人情報保護や特区活用で>

政府によるIoT取り組みの目玉として、マイナンバー制度の導入が盛り込まれた。年金制度への活用から始まり、将来的には医療や介護、公的負担などにも活用分野を広げていくことが考えられる。

  今回、成長戦略でこうしたIoTの取り込みに関する政府の役割について、アクセンチュアの立花良範マネジング・ディレクターは、3つの注目点を挙げている。1つは「セキュリティ対策。個人情報の活用を緩和すべきところは緩和しつつ、個人が知られたくない情報はしっかり保護されるように、行政が対応する必要がある」と話す。

2つ目は「特区の活用だ。全国区ですぐに実施が難しい施策は、先駆的に法制上の融通をきかせやすい特区の活用が有効だ」という。

3つ目は「行政データの公開。マイナンバー制度も導入されるが、民間企業が行政データをさらに有効に活用できれば、新しい価値の創造を促進することができる」と指摘する。

立花氏が指摘する個人情報の保護に関しては、日本年金機構による個人情報の流出問題もあり、国民の目が厳しくなっている。2015年版の「再興戦略」においても、IT利活用の徹底を最重要課題としながらも「サイバーセキュリティに十分配慮した上で」と前提をつけざるを得なかったことも、取り組みの難しさを物語っている。

伊藤教授は「マイナンバーの難しさは、医療制度への活用」だと指摘。さらに政府は、将来的には銀行預金への適用も視野に入れ、資産を対象とした課税や公的負担などにより、財政再建の歳入増加策とする方向性を打ち出している。

同時に伊藤教授は「金融資産をマイナンバーで把握するということになれば、政治的にハードルがかなり高い。時間はかかりそうだが、議論を重ねることになる」とみている。

中川泉 編集:田巻一彦

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