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〔焦点〕黒田ショック、日銀は円安けん制否定 米経済配慮の見方も
2015年6月11日 / 06:13 / 2年後

〔焦点〕黒田ショック、日銀は円安けん制否定 米経済配慮の見方も

[東京 11日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁の為替に関する発言に対し、日銀関係者は円安けん制の意図はないと説明する。だが、円安進展テンポに加速感がみられていた相場を一時的に冷やすことには成功したともいえる。国際金融筋は、発言の裏側に世界経済をけん引する米経済への配慮もあるとの見方を示している。

黒田総裁は10日の衆院財務金融委員会で、最近の円安進行に関連して「実質実効為替レートでは、かなり円安の水準になっている」とし、「ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れるということは、普通に考えればありそうにない」などと発言した。

外為市場は発言が伝わると敏感に反応し、ドル/円 は一時2円程度の急落となった。

この黒田総裁の発言について、日銀は、従来からのスタンスを変更するものではなく、市場に影響を与える意図はなかったと説明している。

また、甘利明経済再生担当相は、黒田総裁の発言について「趣旨が若干、曲解されて市場に伝わってしまった」と述べ、市場変動が一段と大きくならないよう火消しに回った印象だ。

<市場に根強いスピード調整の声>

それでも市場では、通貨政策の陣頭指揮を執る財務官も務めた黒田総裁が「円安進行で発言内容が注目されている中、為替市場がどう反応するかを考えずに、軽率な発言をするはずがない」(国内金融機関)と勘繰る向きが多い。

これまで黒田総裁は、円安について輸出企業の収益拡大などのプラス面や中小企業や家計のコスト増などのマイナス面というバランスに配慮したうえで「為替相場は経済のファンダメンタルズを反映して、安定的に推移することが望ましい」との一般論を繰り返してきた。

10日の国会でも同様の見解を示しながら、最近の円安の背景に日米の金融政策の違いがあることは「間違いない」と断言。年内利上げ観測が強まっている米国と量的・質的金融緩和(QQE)を推進中の日本の金融政策の違いに触れ、米利上げが市場に織り込まれているのであれば、「それ以上のサプライズがなければ、これ以上のドル高になる必要もない」などと踏み込んだ。

<G7でドル高懸念共有した可能性>

ある国際金融筋は、黒田総裁発言の背景には米経済への配慮があるとみる。世界経済の回復が緩慢な中で、現状は好調な米経済がけん引役を担っているのが実情。さらなるドル高が続けば米経済が失速し、世界経済全体が腰折れしてしまうことを懸念しているのではないか、との見方だ。

さらに利上げ自体が不可能となれば、逆に円高が進行し、日本経済のデフレからの脱却が遠のく可能性も否定できない、との見通しを示した。

黒田総裁は5月末にドイツで開かれたG7(7カ国財務相・中央銀行総裁会議)に出席したばかり。10日の国会で総裁は、G7で為替に関する議論は「全くなかったと言ってもいい」と述べたが、市場関係者の間では「直後の麻生太郎財務相による『為替は荒い動き』との発言は、円安けん制度合いが強かった」と着目されている。

伏線はあった。甘利経済再生相が5月29日の衆院内閣委員会に出席し、為替について「(1ドル)80円は過度な円高だが、現状は過度な円安とは言えない」と述べたうえで、「円は強い方が価値がある」、「円が強くても経済が回っていくのが理想だが、今、ドル80円で日本経済はやっていけない」、「経済の強さと円の強さの両立が望ましい」と言及。アベノミクスイコール円安・株高との市場の見方に、微妙な修正を図りたい気配が感じられた。

G7について、別の国際金融筋は「水面下で(為替の)話が出た可能性はある。もしくは議論の中で、政治的な面を含めて一方的なドル高への警戒感を(黒田総裁が)抱いたのかもしれない」と推察する。

市場関係者の間でも「ドル/円が125円を抜けて円安が進むと、130円まで急伸しかねず、節目でブレーキをかけた可能性がある」(邦銀関係者)との見方が出ている。

伊藤純夫 竹本能文 編集:田巻一彦

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