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〔焦点〕盛夏の円、当面高止まりか 通貨安「冷戦」で後手に回った日本
2016年8月4日 / 04:03 / 1年前

〔焦点〕盛夏の円、当面高止まりか 通貨安「冷戦」で後手に回った日本

[東京 4日 ロイター] -

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主要国間に広がる「通貨安競争」で日本の出遅れを指摘する声が出ている。日銀が追加緩和を小規模にとどめたことで、他国の事実上の通貨押し下げ策に見劣りし、円は当面高止まりが続きかねないとの見方だ。政府は大規模な経済対策を打ち出したが、金融政策に比べて為替相場への波及経路は限られる。従来のような円安/株高メカニズムは起動しづらい情勢に追い込まれている。

<通貨安競争の思惑仕掛け人、米は次期大統領もドル高を警戒>

公にその事実関係を認める当局者はいないが、市場では現在、主要国間で事実上の通貨安競争が行われているとの理解が浸透しつつある。最近顕著だったのは英国で、国民投票で欧州連合(EU)離脱を決めた6月以降にポンドが暴落して31年ぶり安値を更新。中国人民元も英国発の混乱を避けるように同時期から突然急落し始め、6年ぶり安値圏へ水準を切り下げた。

もともと、「通貨安冷戦」とも呼べる思惑が市場で広がる状況を作り出したのは米国で、その端緒は2月までさかのぼる。上海で行われた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の後に突然ドルが調整色を強めたことで、当時の市場では「ドル高是正で秘密合意か」との憶測が一気に膨らんだ。

今日でも合意の存在は闇の中だが、米政府や連邦準備理事会(FRB)が「中期的なファンダメンタルズから大きくかい離」(国際通貨基金=IMF)したドル高に強い懸念を抱いていることは自明。第2・四半期の国内総生産(GDP)速報値が前期比年率1.2%増と大幅に下振れたことで「大統領選で民主・共和どちらの候補が勝利しても、苦戦を強いられそうな年後半の景気を支えるため、ドル高を嫌がる構図は変わらない」(外銀幹部)との声も上がる。

2月以降のドルの「低め誘導」でもドル高圧力が収まりきらなかったのは、世界のマネーが米へ一極集中し続けている事情がある。みずほ総合研究所によると、世界の国債・社債のうちプラス金利を維持している債券の発行残高は7月段階で62兆ドル。その3割超が米国に集中しており、中国の11%、英国の5%、日本の4%を大きく突き放す。「世界の運用担当者が(プラス金利という)浮き輪に殺到した結果が、米長期金利の低下やドルの上昇につながっている」(チーフエコノミストの高田創氏)という。

<英は背水の通貨切り下げ、伊「ゾンビ銀指数」高止まり>

英ではポンド急落こそ収まったものの、切り返す気配は感じられない。リスク分析が本業の大手格付け機関の幹部ですら「離脱決定はディシジョン・ツリーの最初の分岐。今後数年で事態がどう展開していくか予見できず、影響はわからない」のが本音だ。政治が混乱する環境下、追加緩和の可能性を強く示唆するイングランド銀行(中央銀行)の危機対応策は、市場参加者の目に、事実上の通貨切り下げによる背水の景気下支え策と映る。

大陸欧州の目下の懸念は銀行問題の再燃。ゴールドマン・サックスによると、不良債権残高を資本などで除したイタリアの「ゾンビ銀行指数(テキサス・レシオ)」は117%と、危機的とされる100%を上回った水準で高止まりしたまま。市場では「モンテ・パスキはベア・スターンズか」(外銀関係者)と、健全性審査(ストレステスト)で最下位となった大手伊銀に対し、金融危機の引き金となった米銀と似た道を歩む可能性を警戒する声すら上がる。

欧州の追加緩和予想は次回会合の9月。日銀に先んじたマイナス金利など一連の積極緩和の狙いは、銀行や周辺国をめぐる懸念を和らげるための通貨高是正との見方が一般的だ。経済学者の野口悠紀雄氏はさらに、英離脱後の新リスクとして「欧州中銀(ECB)やEUの支援が不必要なオランダなど強国が離脱を選ぶ可能性」にも留意が必要だと警告する。

<人民元「覆面切り下げ」で一時緊迫、アジア各国へ通貨安波及>

中国人民元は市場の小康とともに足元で持ち直しているが、英離脱決定後の急落ぶりは、覆面介入ならぬ「覆面通貨切り下げ」(ソシエテ・ジェネラル)の様相と話題を集めた。

経済指標など直接的な手がかりがない中で突然始まった急落の背景は、輸出ドライブを狙った当局の意図的な通貨安誘導か、防ぎきれていない資本流出か──。市場のみならず、当局者の間でも一時緊迫ムードが広がった。

アジアでは通貨が人民元に幅広く連れ安する「逆オランダ病」もリスクのひとつ。輸出増による通貨高で競争力を失う「オランダ病」に対し、構造改革を推進する中国の需要減で周辺国の輸出が伸び悩み、貿易赤字の拡大とともに通貨に下落圧力がかかり、景気が減速するとのシナリオだ。

日本でも次回9月の日銀会合で行われる「総括的検証」で追加緩和と期待をつなぐ声もある。しかし先々を見通すオプション市場の動きは、そうした思惑に現在のところ無反応だ。

基太村真司 編集 橋本浩

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