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〔焦点〕日ロ領土問題に打開の機運、交渉の条件整う
2016年9月28日 / 22:01 / 1年前

〔焦点〕日ロ領土問題に打開の機運、交渉の条件整う

[東京 29日 ロイター] - 解決への期待が膨らんではしぼむ日本とロシアの領土問題に、再び前進の機運が高まっている。中国の台頭による地政学の変化、ロシア経済の低迷、首脳同士の緊密な関係など、日本側は両国が接近する条件がそろったと判断。北方4島の帰属を解決後、平和条約を締結するという従来の方針を転換する可能性が浮上している。

<2島先行、残る2島は協議継続>

「領土問題を解決し、戦後71年を経ても平和条約がない異常な状態に終止符を打つ。首脳同士のリーダーシップで交渉を前進させる」──。安倍晋三首相は9月26日、臨時国会の所信表明演説で意気込んだ。第1次内閣のときからプーチン大統領と14回の会談を重ねた安倍首相は、12月15日に地元・山口県へ大統領を招く。11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)でも会談する予定だ。

日ロ間の領土問題は、旧ソ連が第2次世界大戦で対日参戦し、択捉、国後、色丹、歯舞の4島を占領したことに始まる。自国の固有の領土と主張する日本は、4島の帰属問題の解決なしに経済協力も平和条約の締結もないとの方針に固執してきた。過去に歩み寄りがみられることもあったが、歯舞と色丹の2島引き渡しで最終決着とするロシアと、折り合いをつけることはできなかった。

安倍首相が今回打ち出している「新しいアプローチ」が、何を意味するのかは明らかではない。しかし、日本では4島の帰属問題が先決との従来の交渉手法を変える可能性が浮上している。

まずは歯舞と色丹の返還に片をつけ、同時に経済協力を推進。残る択捉と国後の帰属は継続協議とし、平和条約締結に道筋をつけるというシナリオで、かつて日ロ交渉に携わり、現在も安倍首相に対ロ外交を助言する鈴木宗男元衆院議員の提言と似ている。

日本側の複数の関係者は、2島先行論が浮上していることを認める。「2島返還を先行させる前提ですべてが動いている」と、関係者の1人は言う。「合意にたどりつけるよう、相当前からロシアに対する経済協力を詰めている」と、同関係者は語る。

12月の山口県での会談は形式的なものでは終わらず、安倍首相とプーチン大統領の間で一定の合意形成をして、平和条約締結に道筋をつける可能性があるという。

「安倍首相は(山口県の会談で)大ききな成果を必要としている」と、日本の政府関係者は言う。「平和条約の締結に向けたこう着状態を打開しようとしている」と、同関係者は話す。

従来の方針を転換することに、日本の保守層からは強い反発が予想される。しかし、現時点で自民党内から目立った反論は聞かれない。「4島返還にこだわるやり方は、限界に来ているのではないかという流れになってきている」と、同党の阿達雅志外交部会長は言う。「4島にこだわるあまり何も進まないよりは、仮に2島先行で動いていくのであれば、それは1つの進め方だ」と話す。

一方のロシアは、1956年の日ソ共同宣言に基づき、歯舞と色丹の2島引き渡しで決着したいとの立場を取っている。択捉と国後の帰属を継続協議とするのは、国内世論が認めない可能性がある。「日本側は、プーチン大統領が何でも決められると考えるきらいがある」と、モスクワ国際関係大学のドミトリー・ストレリツォフ教授は言う。「大統領の力を過大評価している」と、同教授は指摘する。

<安倍首相が狙う政治遺産>

それでも、過去に日ロ交渉に携わった両国の関係者は、今回は違う匂いをかぎ取っている。「また無駄に終わると考える理由はいくつも思いつくだろうが、この先2年以内に何かが起きると思えるそれなりの理由もある」と、元外交官の東郷和彦氏は話す。

1つは、中国の台頭によるアジア太平洋地域の力の変化だ。東シナ海で中国と対峙する日本は、ロシアを味方に引き込みたい。

一方、ロシアも長い国境線を有する中国が強大過ぎるのは望ましくないと考えている。専門家は、日本が抱く危機感をプーチン大統領は共有するとみている。

クリミア問題を受けた主要7カ国(G7)による制裁と、エネルギー価格の下落でロシア経済が低迷していることも、日ロの接近を後押ししている。日本が用意している8項目の経済協力は、今のロシアにとって魅力的だ。

アレキサンダー・パノフ元駐日ロシア大使は「安倍首相とプーチン大統領が在任中にこの問題を解決する可能性はある」と言う。「それ以降では無理だろう」と、同氏は語る。

安倍首相の父で外相を務めた晋太郎氏は、旧ソ連との外交に力を注いできた。91年にゴルバチョフ大統領が訪日した際には、病床から抜け出して面会した。「ロシアとの関係正常化という父親の夢を実現することは、安倍首相が歴史に残したい遺産の1つだろう」と、東郷氏は話す。 (久保信博、Linda Sieg、Denis Dyomkin 編集:田巻一彦)

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