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〔焦点〕東京外為市場は「開店休業」、自主性のある市場への道のりは遠い
2008年5月30日 / 07:59 / 9年前

〔焦点〕東京外為市場は「開店休業」、自主性のある市場への道のりは遠い

吉池 威記者

 [東京 30日 ロイター] 海外の主要な市場が休場になると東京の外為取引が閑散とするケースが目立ち、東京外為市場の存在感の乏しさが一段と鮮明になっている。金融庁は日本の金融市場の魅力向上を目指して「金融・資本市場競争力強化プラン」を進めているが、東京市場の地盤沈下を食い止めるには、利便性の向上のみならず、相場形成に積極的に参加できる人材の育成が必要とみられている。

 <東京外為市場はテールエンド>

 「東京はいつも休みみたいなものだから」。ある邦銀関係者は自嘲気味にこう話す。米メモリアルデー、英バンクホリデーで米英市場が休場となった26日、ドル/円の日中高安は27銭にとどまり、翌27日午前には20銭を下回った。しかし、欧州勢が連休明けで取引に復帰してきた日本時間の27日夕方近くになると、ユーロが対ドルEUR=で1カ月ぶり高値から急落し、ドル買い/円売りに波及した。手掛かりは、6月独消費者信頼感指数が市場予想に反して低下したことだった。

 外為取引は世界の中心であるロンドンを起点とすると、東京は欧州、米国の後に開く市場であり、時差の関係で取引が細ると指摘される。国際決済銀行(BIS)が昨年9月に発表した調査によると、世界の外為市場の取引高は、首位が英国(34.1%)、2位は米国(16.6%)、3位にはスイス(6.1%)が続いた。2004年には8.3%だった日本は6.0%に低下、3位から4位に転落した。5位のシンガポール(5.8%)に肉薄されている。

 世界的に見るとエマージング諸国の成長を背景に南アランドやブラジルレアルなど高金利通貨の取引も活発になった。日本も個人投資家による外為証拠金取引などが増加しているものの、世界全体の取引規模が拡大したことで、東京市場の地位は相対的に低下した。

 ロンドンのカリヨン証券シニア通貨ストラテジスト、ダラ・マー氏は、ロンドン市場は文字通り世界の中心で、他市場への影響も大きいと指摘。そのうえで東京市場に関し「NYの地合いを引き継ぐことが多く、特にNYの株価がアジアにどう引き継がれるかとの思惑が東京時間の外為相場を左右する」と、テールエンド(末端)に過ぎない述べている。つまり、円相場は日本の経済ファンダメンタルズよりも株価のリスクに応じた値動きになるとし、東京市場では主体的に為替相場が決まりにくいとの見方を強調する。

 こうした地理的条件だけではなく、もともと日本の市場関係者はリスクを好まない、といった指摘もある。ある銀行系シンクタンクの研究員は、「経常黒字で貯蓄が余っているのにもかかわらず、外国人投資家主導で相場が形成されるのはおかしい」という。

 そのうえで「外為相場のほか株価や金利まで米国に決めてもらい、そのなかで取引をしているに過ぎない。日本の投資家には相場の流れを切り開いていこうとの気概が感じられない」と批判する。

 実際、海外ヘッジファンドのマネージャーは「東京市場がなくてもよい存在になったのは、参加者がポジションをとらなくなったからだ。彼らはドルが100円になろうと1000円になろうと、ポジションがないので、一向に構わないはずだ」とし、「日本人自身が円の価値を決める意志がないのなら、外国人に決めてもらうしかないだろう」と付け加えた。

 こうした批判に対し、外為ディーラーからの反論もある。ある信託銀関係者は「相場が動いていないように見えてもフローが出合っていることはあるので、相場が動かないのは東京市場だから、ということにはならないのではないか」とし、東京市場は実需を消化する場として機能しているとの見方を示した。

 <あせる当局者にボタンの掛け違えも>

 金融庁は昨年12月、日本の金融市場の魅力を高めようと「金融・資本市場競争力強化プラン」をまとめた。取引所における取り扱い商品の多様化などが柱。三菱東京UFJ銀行チーフアナリストの高島修氏は、このプランの重要性を強調すると同時に「すべて実現しても、東京市場のグローバル化にはまだ不十分だ」との見方だ。金融庁は、何年後にどのぐらいの取引量に高めるといった目標などは特に設定していない。

 同プランでは、金融・資本市場のひとつとして商品先物市場の機能強化について「経済産業省、農林水産省では、市場の利便性の向上、幅広い品揃えの実現、市場参加者の多様化など競争力強化のための取り組みを進めることにしており、引き続き適切な連携を図る」としている。

 強化プランに盛り込まれた金融専門人材の育成に関しては、「市場の発展を担う人材の確保・育成が急務で、また市場参加者や当局における共通のコンプライアンス感覚を有する人材の確保は、より良い規制環境の実現に資すると考えられる」としている。しかし、霞が関では市場の理解が深まっているとは言えない。

 経済産業省の北畑隆生事務次官はある講演会で、インターネットなどで株売買を短期間に繰り返す個人投資家について「最も堕落した株主」「バカで浮気で無責任」などと発言していたことが報じられた。経済産業省のホームページによると、北畑次官はこの後の定例記者会見で「デイトレーダーの方に対して失礼な表現をしたことは事実」としたうえで「誠に申し訳ないことだと思う」と陳謝した。

 ある一般投資家は「市場のことが理解できない役人が、この国には多すぎる」とした。そのうえで「日本の市場のグローバル化は(こうしたプランを取りまとめることによる)官主導よりも、国際感覚を身につけた世代が出てこないと実現できない。当局者と市場参加者双方のレベルアップが必要」と強調する。

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 (ロイター日本語ニュース 吉池 威、取材協力:田実 直美 編集 橋本 浩)

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