COLUMN-〔インサイト〕金融危機とイスラム金融、負の連鎖広がらなかった構造の秘密=国際協力銀 吉田氏

2009年 05月 15日 13:30 JST
 

 「未曾有の金融危機の下で、イスラム金融はどうなっているんだ」という質問をよく受ける。米国発の金融不安が各国の金融システムや実体経済にかつてない規模で悪影響を与えている中、国際金融における新たな潮流として多くの人の知るところとなったイスラム金融は、金融危機の波に飲み込まれてしまったのか、それとも逆風下でも生き残っているのか、あるいは増勢をさらに強めて成長しているのか。

 端的に言えば、イスラム金融は金融危機の影響を大きく受けたと評価してよい。一方、過剰な融資や証券化商品の値崩れなどの影響を受けなかった面もあり、そのためイスラム金融への期待が高まっているのも事実である。本稿では、こうした双方の見方を紹介することで、イスラム金融の最近の実情への接近を試みる。

 概して、実務家やメディアなどは金融危機の影響による取引量の減少等を、クールにあるいはやや過大に受け止める傾向があるように見受けられる。目前のビジネスの需要が著しく減少したり、パフォーマンスの絶対水準が下がったりしていれば、やはり厳しい評価とならざるを得ないだろう。データをみても、2008年イスラム債の発行量は前年比56%超の減少、イスラム株価指数(ダウジョーンズ世界イスラム指数)のパフォーマンスは08年の1年間で39%下落した。

 筆者自身も、金融危機のイスラム金融への影響を実感することがある。筆者はこの2年で20回ほど海外での講演に招聘(しょうへい)されているが、昨年11月にドバイで行われたセミナーは、過去にはあり得なかったほどひっそりとしたものだった。その3カ月くらい前に来た招待状には、いくつかの外資系金融機関と3つの大手イスラム銀行がスポンサーとして紹介されており、スピーカー陣にもそれらの機関の著名バンカーやその他の業界有力者など15人ほどが名を連ねていた。

 ところが、セミナー当日に会場を訪れてみると、すべての金融機関がスポンサーから撤退し、残っているのは公的機関と格付会社の2つのみ。スピーカー陣も、来るはずの海外著名人がほとんど来ず、地元関係者が大半。こうした中で、高い費用を払って聴講する参加者の数も限られ、弁護士や公的機関職員が数名いた程度であった。要するに、スピーカー、スポンサー、聴衆の3者が、いずれも金融危機の影響による経費削減姿勢を主因にセミナー参加に消極的になっているのである。

 こうした消極姿勢の影響はイベント主催者自体にも及んでいる。今年4月にニューヨークでのイスラム金融シンポジウムがあるということで年明けに主催者より講演依頼を受けていたが、その後、スポンサーや聴衆が集まらないため中止するとの連絡があった。同様にマレーシア投資銀行協会やマレーシア・イスラム金融研究所から講演依頼のあったセミナーも、1度延期された後、開催が見送られた。  続く...

 
 

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