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再送:COLUMN-〔インサイト〕中国の金融引き締め策の波紋、世界経済の抱える新しい問題=信州大 真壁氏
2010年1月20日 / 04:37 / 8年前

再送:COLUMN-〔インサイト〕中国の金融引き締め策の波紋、世界経済の抱える新しい問題=信州大 真壁氏

*末尾から3段落目の脱字を修正して再送しました。

 1月12日、中国人民銀行は、市中銀行に適用する預金準備率を0.5%引き上げると発表した。この背景には、金融機関の貸し出し余力を抑えることによって、株式や不動産の市場で発生しているバブル的な価格上昇を抑える目的がある。

 今後、中国の政策当局は、段階的に金融政策を引き締め気味に運用するとみられる。最近、世界経済の中で重要性を増している中国の金融政策には、世界の経済や金融市場の動向に大きな影響を与えることだろう。これからの政策運営には、十分な注意が必要だ。

 中国の金融政策変更について、もう1つ逃してはならないポイントがある。それは、今回の政策変更が、世界の経済や金融市場が抱えるいくつかの問題点を鮮明化したことだ。

 <世界の経済・金融市場の「まだら模様」>

 現在、世界の経済・金融市場が抱える最も大きな問題は、景気低迷から抜け出せない主要先進国と、既に経済が立ち直り、景気拡大局面に入っている中国やインド、ブラジルなどの新興国との「まだら模様」が鮮明化していることだ。

 従来、1つの国が経済の明確な単位=国民経済として確立していた時代、こうした「まだら模様」はそれほど大きな問題ではなかった。ところが、現在のように人、モノ、カネ、情報などの経営資源が、瞬時に国境をまたいで移動する時代になると、この「まだら模様」は無視することができない重要なファクターになる。

 わが国や欧米諸国は、景気回復のために大規模な財政政策を発動している。また、金融政策は超緩和で、金利はかなり低く、潤沢な資金が供給されている。一方、新興国では景気の回復に伴って株式や不動産の市場に流動性が流れ込んでおり、一部ではバブルの発生が懸念されている。そのためオーストラリアなどの国では既に、金融政策は引き締め気味に転換している。今回、中国が金融政策変更の姿勢を示したことは、バブル発生を抑える一連の動きの1つと考えられる。

 <先進国から新興国へ流れる投資資金>

 1つの注目点は、先進国の中央銀行が供給している潤沢な資金の一部が、期待収益率の高い新興国へと流れていることだ。先進国の低金利政策によって、当該国の資金が、高い収益を期待できる新興国へ流れるのは当然なのだが、そこに無視できない問題が発生する。 

 先進国の中央銀行が景気回復のために供給している資金の一部が、結果的に新興国の株式や不動産などの市場に流れ込み、それらの資産価格を急上昇させてしまうことが考えられる。

 2009年春先以降の世界の金融市場の動向を見ると、そうした傾向は顕著だ。そのため先進国では、資金漏出によって金融政策の効果が弱まり、景気を回復させるパワーが低下することが懸念される。

 一方、新興国では、政策当局の手に負えないような大きなバブルができることが懸念される。既に高金利のブラジルなどでは、投資資金の流入に一定の制限が設けられているようだが、その効果は限定的との見方もあるようだ。

 今後、欧米諸国などの先進国の経済が立ち直り、回復に向かって明確な歩みを踏み出せればよいだが、それが難しくなると、先進国の回復遅れが、新興国の輸出減少という格好でマイナスの影響を与えることも懸念される。それが現実味を帯びてくるようだと、世界経済全体が再び、下落傾向に落ち込むことも想定される。その場合には、株式や為替などの市場は混乱することは免れないだろう。

 <もう1つの問題・国債金利の上昇可能性>

 もう1つの問題は、国が資金を調達する場合の金利水準=国債の発行利回りが上昇することだ。主に2つの経路がある。1つは、新興国の経済拡大によって資源や穀物などの価格が上昇し、世界的にインフレ懸念が本格化することだ。世界的に期待インフレ率が上昇すると、景気低迷化が脱出できない先進国にも影響が及ぶ。

 穀物価格などの上昇で期待インフレ率が上がると、国債の発行利回りの上昇は避けられないからだ。そうなると、多額の財政資金を国債発行に依存する主要先進国の財政状況は、急速に悪化する。主要国の中には、大規模な財政出動を継続できない国が出てくるかもしれない。

 もう1つのパスは、国の信用力が低下することだ。既に、PIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)などの諸国に対する、金融市場の中での信用低下の懸念がささやかれているようだ。

 問題は、これからの諸国に続いて、他の主要国にも信用力低下懸念が広がることだ。それが現実のものになると、短期的な景気低迷という範疇(はんちゅう)ではなくなる。当該国の経済運営の余地は、大きく制限されることになるはずだ。

 こうして考えると、現在、世界の経済・金融市場は無視できない問題を抱えていることは間違いない。そうした問題を放置すると、いずれ金融市場が暴力的に問題解決に動き可能性がある。それは、時間をかけて、ゆっくりと起きればよいのだが、急激に起きる場合には、世界の株式や為替の市場が、一時的に機能不全に落ち込むような混乱も考えられる。そのリスクは、頭のどこかに入れておくべきだろう。

 

 真壁昭夫 信州大学・経済学部教授

 

 (20日 東京)

 

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