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COLUMN-〔インサイト〕日本はどこを目指すべきか、米国教授たちの視点=経済広報センター 川口氏
2010年7月21日 / 04:31 / 7年前

COLUMN-〔インサイト〕日本はどこを目指すべきか、米国教授たちの視点=経済広報センター 川口氏

 財団法人 経済広報センターは毎年、海外のオピニオンリーダー向けに、日本と日本経済、日本企業への理解を深めてもらうための短期プログラムを実施している。日本企業が世界各地でスムーズに受け入れられ、また、活発に経済活動ができるようになることが狙いだ。

 先月、当センターは米国の一流大学院の教授たちのグループを迎えた。

 訪れた教授陣はランド公共政策大学院のチャールズ・ウルフ教授(ランド研究所上級顧問)、UCロサンゼルス校アンダーソン・ビジネススクールのマーク・ガーメイズ准教授、UCバークレー校ハース・ビジネススクールのローラ・クレイ准教授、ペパーダイン大学グラジオディオ・ビジネススクールのマーク・チャン准教授、コロンビア大学ビジネススクールのマイケル・モリス教授の5人である。

 

  <悲観論への疑問>

 

 彼らの共通の疑問は、「なぜ、日本のガバメントセクターやエコノミストはここまで自信がないのか」という点だった。プログラム中は多くの場面で、人口動態問題(少子高齢化、人口減)、政治の混迷、新興国の追い上げ等々、日本の将来への悲観論が語られたが、実際に体感できたのは、ソフィスティケートされ秩序に満ちた社会であり、さまざまな場面で行われている投資、健全なリスクテイクを実践する企業の実態だったからである。

 

  <キーワードはマインドセット>

 

 プログラムの最終日、参加教授陣によるシンポジウムでは、「悲観論」と「体感した実態」のギャップについて多くの議論がなされた。

 参加メンバーのひとり、クレイ氏は、メンタリティーが企業のイノベーションや成長に大きな影響を与えるとした上で、2種類の異なるモノの考え方、すなわち、能力やリーダーシップは生来のものであるとする「硬直的なマインドセット」と、能力は伸ばすことができると考える「成長志向のマインドセット」について言及した。

 この2種類のマインドセットは企業の社風や方針に反映され、前者のタイプの企業は業績を上げるために優秀な人材を集めることに注力し、後者のタイプの企業は社員の教育・育成に力点を置くという。

 一方で、日本にまん延する「悲観論」は「硬直的なマインドセット」の罠(わな)ではないかとさりげなく指摘しているようでもあった。

 

  <成長志向のマインドセット>

 

 クレイ氏の研究では、成長志向のマインドセットは硬直的なマインドセットを上回る成果をあげられるとのことであった。

 ここで興味深いのは、企業内の評価システムにおいてプロセスと努力を強調するようにすれば、組織を成長志向のマインドセットに移行させられるとクレイ氏が助言したことである。

 プロセス重視の評価軸は従来、多くの日本企業が得意としていたものだったはず。90年代後半から盛んになった「成果主義評価」の生半な導入が企業を硬直化させた可能性があることを考慮すべきかもしれない。

 

  <総合力とチームワーク>

 

 さて、今回教授たちからもっとも多くフィードバックのあった会社のひとつが某エンジニアリング会社である。

 企業プレゼンテーションの中で示された「設計・調達からリスクの把握まで、社内の各部門のノウハウを結集することでプロジェクトの一括入札を可能にしている」との経営陣のコメントは、教授たちに強い印象を与えたようである。

 なかでも、モリス氏は、企業内の各部署が各々の専門性を発揮し、それらをコーディネートすることでビジネスに臨む、このような総合力であたろうとするやり方を、きわめて日本的、かつ伝統的な組織運営だと見て取ったそうだ。

 世界各地の人材を日本の本社で教育した上で積極的に活用しているということも彼らの興味を引いたようだ。チームワークの発揮に細心の注意を払う企業姿勢が垣間見られたからだろう。

 

  <日本人が忘れている日本の強み>

 

 米国のビジネススクールの教授たちの反応は率直だった。日本独特の経営を体現したこの企業こそが魅力的だと筆者にささやいたのは決してひとりではない。

 ウルフ氏は、日本企業の強みのひとつは、知識の共有やコーディネーションを通じたインテグレーション力にあると述べている。

 日本はバブル崩壊以降、硬直的なマインドセットに陥り、コングロマリット・ディスカウントということばの陰でシナジーを軽視し、努力やプロセスを尊ぶカルチャーを培うことを怠ってきたのかもしれない。

 しかし、米国人教授たちの目には、日本企業の強みは、総合力とそれを裏付けるチームワークであると間違いなく映っている。

 そういえば、ワールドカップ南アフリカ大会での日本代表の善戦は、全員でひとつの方向にまとまってコトに当たるチームワークこそが日本の強さであることを思い出させてくれたではないか。

 

 *本レポートの内容は担当者個人の見解に基づいており、財団法人 経済広報センターの見解を示すものではありません。

 財団法人経済広報センター 国際広報部主任研究員 川口 惠

 

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 <略歴>川口 惠(かわぐち・めぐみ)1988年上智大学文学部卒業。同年日商岩井株式会社(現・双日)入社。2005年早稲田大学大学院公共経営研究科修了。情報産業本部を経て、国際部・経営企画部などで海外拠点や関係会社の管理や分析、企画立案、渉外等を担当。2003年株式会社日商岩井総合研究所(現・双日総合研究所)出向、国際政治経済、貿易等の分析に従事。2010年財団法人経済広報センター出向、現職。

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