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〔アングル〕米債利回りの急上昇、インフレ懸念が原因ではない
2007年6月13日 / 06:05 / 10年前

〔アングル〕米債利回りの急上昇、インフレ懸念が原因ではない

 [ニューヨーク 12日 ロイター] 米債利回りの急上昇はインフレ懸念の高まりを示しているかもしれないが、つぶさに見てみればそれが原因ではないことに気がつくだろう。

 米国の市場参加者は、これまで多くの投資家が予想していたよりも長期にわたって中央銀行が世界中で利上げを継続するとの結論に達し、債券売りを加速させている。こうした動きの中でインフレが役割を果たしているのは確かだが、それは主として米連邦準備理事会(FRB)が物価上昇圧力を抑制し続けるために金融引き締め政策をとると市場がみているからであって、インフレが既に抑え切れなくなっていることを意味するものではない。

 違いは微妙だが重要だ。投資家は資本コストの上昇を懸念しているのであって、インフレの高騰を懸念しているわけではない。

 米債市場では少し前まで、多くの市場参加者が年内の米利下げに備えたポジションを建て、5.25%のフェデラルファンド(FF)金利を下回る水準に米債利回りを押し下げていたため、利下げ観測がひとたび覆されればその水準の維持はできない相談だった。

 米債利回りの上昇を受けてモーゲージ担保証券(MBS)など、他の固定利付き債市場でも調整の動きが強まり、米国債の売りを呼ぶ悪循環になっている。

 BNPパリバの上級債券市場ストラテジスト、ベルント・ビューベン氏は「実際に大きなインフレ圧力が見られているわけではない。世界的な金利上昇への懸念が米国の金利を押し上げる要因になっている。債券市場からのシフトが世界的な流れになっている」と指摘した。

 

 <テクニカル要因による債券売り>

 米労働省が5月15日に発表した4月の米消費者物価指数(CPI)は、全品目の上昇率がエコノミスト予想を下回り、食品とエネルギーを除いたコア指数の前年比上昇率は2.3%と、1年ぶりの低水準になった。しかしこの水準はFRBが心地良い範囲としている1─2%をなお上回っており、政策担当者らがなぜ中心的なメッセージとしてインフレ警戒を掲げ続けているかを説明している。

 しかしFRBのレトリックだけでは、10年債利回りUS10YT=RRを5月初めに比べて0.50%押し上げ、債券市場に激震が走った理由の説明はつかない。FRBはここ数カ月間、今回の急落のような波紋を広げることなくインフレがリスクだと警告し続けている。

 ウィリアムズ・キャピタル・グループの債券営業・トレーディング責任者、デービッド・コード氏は「先週、かなりの人々が利下げ予想を放棄し、リングにタオルを投げ入れた。しかし中には、インフレが問題だと言い立てて何が起きたかを正当化しようとする人々もいる。わたしが何か見落としていない限り、インフレのトレンドはこれまでのところ良好だと思う」と語った。

 失われた環(ミッシングリンク)の1つはMBS市場だ。米債利回り上昇に大きな打撃を受けた同市場の参加者は、米国債売りによるポートフォリオのデュレーション短期化を余儀なくされた。

 メトロポリタン・ウエスト・アセット・マネジメントの米債ポートフォリオマネジャー、ブレット・バーカー氏は「わたしはインフレ・ストーリーの信奉者ではない。いつもなら理由をテクニカルに求めるのは嫌うところだが、今回は長いデュレーションが大量に解消されたとしか言いようがない」と指摘した。

 

 <金利上昇がFRBに代わってインフレを抑制>

 しかしこれは、物価上昇圧力を完全に無視していいということにはつながらない。インフレ指数連動債(TIPS)はまちまちのシグナルを送っている。ここ数日、TIPSの動向はインフレ期待がある程度高まったことを示しているが、それも過去数カ月の大幅な後退があってのことだ。

 さらに、一部のインフレ指標はFRBの許容範囲の上限近くに下がってきているものの、商務省が15日に発表する5月のCPIは、コア指数の前年比上昇率が2.3%前後にとどまり、許容範囲を上回り続けると予想されている。

 先週発表された第1・四半期の米非農業部門労働生産性統計で、生産性伸び率が下方修正される一方、単位労働コストの伸び率が大幅上方修正され、生産性伸び率の鈍化傾向が鮮明になっただけに、CPI統計の発表は一段と重要な意味を持つことになる。

 ただ、こうしたインフレに対する不安感も最終的には米債利回りの上昇自体によって収束していく可能性がある。米債利回りは経済全般で与信の際の指針として用いられ、従って消費支出を抑制し、経済成長の勢いを弱めさせることも可能だからだ。

 住宅セクターの急速な鈍化が足を引っ張る要因となり、第1・四半期の米国内総生産(GDP)伸び率はわずか0.6%と、ほぼ4年ぶりの低成長を記録した。多くのアナリストは伸び率の回復を予想しているが、金利の上昇が回復を抑える可能性もある。そうなれば今度はインフレの沈静化につながり、金利上昇がFRBの代わりに仕事をしてくれるだろう。

 UBSの米金利戦略・調査責任者、ウィリアム・オドネル氏は「第1・四半期のGDP伸び率を押し下げた問題は消えていない。どちらかと言えば、最近の債券市場の状況によって悪化している」と指摘した。

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