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焦点:シャラポワ薬物違反、「疑わしきは罰」姿勢強める企業
2016年3月9日 / 09:08 / 2年後

焦点:シャラポワ薬物違反、「疑わしきは罰」姿勢強める企業

[8日 ロイター] - 女子テニスの元世界ランク1位、マリア・シャラポワ(ロシア)が、薬物検査で陽性反応を示したことを告白した翌日の8日、ナイキ、ポルシェ、タグホイヤーなどのスポンサーは直ちに契約を見合わせる方針を示した。

ソーシャルメディアが即座の対応を求めるようになる前は、スポンサーは「疑わしきは罰せず」という姿勢で、スポーツ選手に数週間あるいは数カ月の猶予を与えることが多かった。

スポンサーシップの分析などを行うIEGの推定によれば、世界全体で投資額が600億ドル(約6兆7500億円)にも上るスポンサー事業において、企業はスキャンダルという汚点を回避することに躍起になっている。今年の夏季五輪でドーピング違反が判明した選手に対しても、同様に実入りの良い契約の即時打ち切りが予想される。

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「ほぼあらゆるスポーツにおいて運動能力を向上させる薬物の使用がこの数年で注目を集めていることを考えると、スポンサーはできるだけ早く打ち切ろうとするだろう」と、弁護士事務所ローブ・アンド・ローブのブライアン・ソコロウ氏は指摘。

「彼らはランス・アームストロングのような選手のスポンサーになることは避けたいと考えている」と、同氏は述べた。アームストロング氏は、ツール・ド・フランスで7回優勝したが、ドーピングでタイトルを全てはく奪され、自転車ロードレースから永久追放処分を受けた。アームストロング氏は後にテレビ番組のインタビューで、運動能力向上薬の使用を告白している。

アームストロング氏の場合は、薬物使用疑惑を当初否定していたこともあり、収束するのに数年を要したが、シャラポワは直ちに記者会見を開き、1月の全豪オープンの薬物検査で陽性反応を示していたことを明らかにした。

4大大会をこれまで5度制覇しているシャラポワは、糖尿病とマグネシウム欠乏症の治療のため、メルドニウムという薬物を使用していたと説明。この薬物は今年から世界反ドーピング機関(WADA)により禁止薬物に指定されていた。過失が認められない場合や故意でないとみなされれば軽減されるものの、4年の出場停止処分を科される可能性がある。

スポーツウエア大手のナイキ、ドイツ高級車のポルシェはスポンサー契約を一時停止。一方、スイスの高級時計メーカー、タグ・ホイヤーは、シャラポワの会見を受けて12月に切れた契約を更新するための話し合いを打ち切ると発表した。

スポンサーが個人の選手やチームと関係を続けるかどうかの判断はカネ次第だと、業界関係者は話す。事業がそれでもうまくいくと思えば、企業は選手やスポーツ団体の側に立ち続ける。多くの企業が、スキャンダルを経験した国際サッカー連盟(FIFA)や国際オリンピック委員会(IOC)と関係を維持している。

<第二のチャンス>

業界幹部は、シャラポワがすぐに謝罪会見を開いたことは賢い選択だったと認めている。その結果、シャラポワは世間とスポンサーから第二のチャンスを得られる可能性が高まったという。

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 3月8日、女子テニスのマリア・シャラポワ(写真)が、薬物検査で陽性反応を示したことを告白した翌日、ナイキ、ポルシェ、タグホイヤーなどのスポンサーは直ちに契約を見合わせる方針を示した。米ロサンゼルスで行われた記者会見で7日撮影(2016年 ロイター/Jayne Kamin-Oncea-USA TODAY Sports)

シャラポワの記者会見(英語、ナレーションなし)

とはいえ、試合への長期間の出場停止は実質的にシャラポワの現役生活に終止符を打ち、最も高額な本業外所得を稼ぐ女性アスリートの一人としての地位を損なう恐れがある。米経済誌フォーブスの試算では、シャラポワのコート外収入は通算2億ドル以上となっている。

「多くの点で、彼女はブランドにとって理想の広告塔だ。とても魅力的だし、大成功をおさめ、競争力が非常に高い」と、サンディエゴ州立大学のマーケティング学教授、ジョージ・ベルチ氏は指摘する。

また、女性アスリートに対してダブルスタンダードが存在するとの批判が上がる一方、複数の業界関係者は、かつてのタイガー・ウッズの性的スキャンダルやコービー・ブライアントのレイプ疑惑が、現在のソーシャルメディア主導の文化においては異なる展開となるだろうと話す。

以前であれば様子見をしたようなこうした問題に対して、企業は直ちに取り組むことが求められており、五輪が行われる年だけにそのプレッシャーは高まるばかりだと一部の人はみている。

シャラポワと契約している消費者製品メーカーであれば、なおさら悪いニュースから距離を置くためにより迅速な行動に出るべき理由が他にもあると、業界関係者は指摘する。

「ライフスタイルのブランドを築くには多大な時間とカネが必要だ」と、スポンサー契約で企業側の代理人を長年務めるマッカーター・アンド・イングリッシュの弁護士、ゲーリー・フェクター氏は語る。

同氏によれば、シャラポワに払い過ぎていたと感じていたかもしれないスポンサーにとって、彼女の告白は「裏口から出ろ」と言わせるようなものだという。

シャラポワに近い人物によると、彼女のチームは、ナイキとポルシェが契約の完全解消ではなく、一時停止をしたことに安堵しているという。今後の契約再開への扉を完全に閉めてはいないことを意味するからだ。

だが短期的には、シャラポワの立場が打撃を受けるのは必至だ。

有名人の影響力をはかるマーケティング・アームの「信頼度」指数で、シャラポワの数値は大きく低下するだろうと、同社マネジングディレクターのマット・デルゼル氏は話す。

企業のためにスポーツ選手をランク付けする米オムニコム・グループ傘下の同社によれば、シャラポワは、元米大リーグのスター選手デレク・ジーターや女優で歌手のデミ・ロバートなどと並んで、現在3番目のグループに位置している。

(Ben Klayman記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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